飯島望未、日本から旅立ちスイスへ
チューリッヒ・バレエ団での新たなる挑戦
夢を追い求める女性をサポートする「コアントロー・クリエイティブ・クルー」として、「コアントロー」が支援する日本人女性クリエイターのひとり、バレエダンサーの飯島望未が活動の場を日本からスイスへ。チューリッヒ・バレエ団での活動と生活を追った。
6歳でバレエと出合い、10年後にはヒューストン・バレエ団と契約。23歳でソリストに昇格した後、クラシックバレエ以外のジャンルやヨーロッパのバレエの在り方に興味を持つようになった彼女はアメリカでの生活にピリオドを打ち、一時帰国。日本を拠点にフリーランスのダンサーとしての活動を経て2016年秋、再び海外へと旅立った。行き先はスイス。チューリッヒ・バレエ団に入団し、念願だったコンテンポラリーダンスやネオクラシックというジャンルに一歩ずつ近づいている。単身で向かったスイスでの生活と、バレエへの想いを改めて聞いた。
──スイス、チューリッヒでの生活は慣れましたか?
生活には慣れましたが、髪の色にまだ慣れていません(笑)。スイスのバレエ団に入って、東京にいた頃はシルバーに染めていたヘアカラーを黒に戻したのですが、黒髪には物足りなさは感じますね。今のカンパニーは、地毛からかけ離れた色に染めるのはNG。カットするにも事前の申請が必要で、許可がおりない場合もあります。ヘアスタイルも作品の一部ということですね。髪型についてのルールはバレエ団によって異なっていて、ちなみにヒューストン・バレエ団にいた頃は、ディレクターの許可さえとれれば自己責任でした。本番のヘアセットとメイクも全部自分でやっていたので、地毛が何色だろうと金髪でも大丈夫だったし、私はショートカットでした。その頃の感覚が染み付いているのと私なりの美学もあるので、ヘアは叶わずともメイクは今も自分でやっています。中にはセルフメイクNGのカンパニーもあるので、私はそういうところではやっていけないかも(笑)。小さい頃からずっとセルフで、自分が舞台上できれいに写るためのメイクは自分が一番わかっているから。
──スイスに着いて休む間もなく、稽古がはじまったそうですね。
最初の舞台は9月でした。作品は出来上がっていて配役も決まっていたので、そこまでの一カ月はそう難しいものではなかったのですが、その次が大変でした! 12月にワールドプレミアだった新しい監督の「レクイエム」という振り付けもオリジナルの作品で私は、パ・ド・ドゥ(男女2名でステップを揃えたダンス)がある役でした。コンテンポラリーとクラシックが融合した、ネオ・クラシックというジャンルの公演。クリスティアン・シュプックという監督のスタイルはコンテンポラリーがベースなのですが、私のパートはクラシックに近い動きが主だったので、これまでの経験が活かされました。日本でも2017年3月にNHKで放送されたそうです。こういう活動が日本に届くのは嬉しいですね。
──チューリッヒ・バレエ団が公演を行う場所は、どんな舞台なのでしょうか?
チューリッヒ・バレエ団はオペラハウス(歌劇場)を持っています。「レクイエム」はオペラとの共同舞台で、シンガーとダンサーが一緒の舞台に立つ珍しい演目でした。チューリッヒ・オペラハウスの歌手たちが歌って、私たちが踊るコラボレーションは客席の反応がよく、劇場全体が盛り上がっていましたね。レビューを見るとオペラ派の方が多い印象でしたが、既存の枠を越えていくのはある種、私の目標でもあるので勉強になりました。
──「レクイエム」ではどんな衣装で踊られたのでしょうか?
スパンコールが敷き詰められたドレスを裏返して着たみたいな、特製の生地が美しいグレーのドレスでした。スパンコールが裏面に施されているので、キラキラしすぎず上品に、マットに煌めいていて。「レクイエム」はみんなの衣装がモノトーンでまとめられていて、シックでかっこよかった。監督が手がける衣装デザインや演出のセンスは素晴らしいので、尊敬しています。
グラデーションのチュチュが誕生した理由は?
Photos:Nozomi Iijima
Interview:Yukiko Shinmura