ライアン・マッギンレー「ありのままの体に対して賞賛を表現したい」 | Numero TOKYO - Part 2
Interview / Post

ライアン・マッギンレー
「ありのままの体に対して賞賛を表現したい」

初期作品から最新作まで自ら約50点を厳選した「ライアン・マッギンレー BODY LOUD!」開催。4度目の来日を果たした写真家、ライアン・マッギンレーにインタビュー。

核として表現したいことは、真の人間性 ──ヌードの作品を撮り始めるようになったきっかけを教えてください。 「写真を撮り始める前は絵画の勉強をしていたから、ヌードモデルを囲むデッサンのクラスを受けたりしていたんだ。その頃から身体美にとても惹かれていたよ。ルネッサンスアートや宗教画なども好きだった。ジーザスも肉体を露わにして十字架にかかっているよね。 それに、モデルが裸でポーズをするということは、フォトグラファーに対して信頼していないとできることじゃない。僕がいい作品を撮ると信頼し、作品に参加したいという意志があることで、作品自体にパーソナルな意味合いも生まれるんだ。特別で神聖なことだと感じているよ」 ──モデルの選定基準とは? また、モデルとはどう信頼関係を築くのですか? 「最初は友達を撮ることから始めたんだ。それから僕のためにヌードになってくれるカップルや、当時のボーイフレンドなど…。初期に撮影していたのは、NYダウンタウンのクリエイティブなコミュニティの人々がほとんどだった。現在は、キャスティングディレクターが『イヤーブック』のモデルになってくれる若いアーティストを探してきてくれる。ダンサー、彫刻家、ライターなどジャンルは様々だよ。なにかに打ち込んでいるアーティストたちは、似通った繊細さを持ち合わせていると思う。それにヌードモデルってある種反抗的な行動だよね。きっと彼らの両親はそれを望まないだろうし(笑)。でも、エナジーがあって反抗的なスピリットを持ち合わせている人が好きなんだ。それがモデルにとっては、大切かな。いつも裸の姿で初対面し、僕のスタジオで1時間話したりしてから撮影に入るんだよ。このポートレート撮影は本当に楽しいんだ! アーティストたちを撮影することはとてもおもしろいよ。ずっと『イヤーブック』プロジェクトを続けていたいと思うくらい。 『ロードトリップ』や『ウィンター』シリーズなど、大掛かりな撮影の時には、長年の付き合いで強い信頼関係のあるモデルとともにするんだ」 ──ヌードを被写体にしながらも、エロティックには見えませんが、ご自身ではどうお考えですか? 「自分の作品がエロティックだとは、全く思わないよ。うーん、エロティックな写真にはもっと、靴下とベッドとランプが必要なんじゃない(笑)? つまり、人よりも事情にフォーカスしていると思う。僕の写真はそうじゃない。人のありのままの体に対しての賞賛なんだ。見る人が、エロティックだと思うことはもちろんあるだろうけどね。核として表現したいことは、真の人間性。見た人が心を打たれるような、エモーショナルな部分や、欲望みたいなものも織り込みたいと思っているけれど。ただ単に、性別や体型の違いなど、千差万別な人々の体に興味があるし、その全て賞賛したいんだ。だから細い人だけでなく、大柄な女性も撮影する。英語で、『BBW』と呼ばれるようなね。意味は、『Big & Beautiful Woman』もしくは『Big Body Woman』だよ」

Photos:Munehiro Hoashi Interview & Text:Yukino Takakura
All Works:©Ryan McGinley Courtesy the artist and Team Gallery,
New York / Tomio Koyama Gallery, Tokyo

Profile

ライアン・マッギンレー(Ryan McGinley)写真家。1977年アメリカ・ニュージャージー州生まれ。2000年にパーソンズ・スクール・オブ・デザインを卒業。NYダウンタウンの若者たちをリアルに切り撮る『The Kids Are Alright』がアート界、ファッション業界で注目を浴び、03年にホイットニー美術館で25歳という最年少で個展を開催。写真家としてのキャリアをスタート。ヌードを被写体として展開されるポートレートや、田園風景写真など、新機軸を生み出し「アメリカで最も重要な写真家」と高い評価を受ける。

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