幸せを学ぼう! 科学編
ハッピーになるためのキーワードを解説
幸せの形が多様化するなか、どうやったら最大限ハッピーを享受できるのか? 科学、経済、言語、女性学…各分野の豪華講師陣がハッピーになるためのキーワードを伝授。(「ヌメロ・トウキョウ」2017年3月号掲載)
Class I : Science
Happyを科学する
予防医学の観点で、笑いを科学的に分析したり、クールを数値化するなど、ジャンルにとらわれず幅広い研究を進める石川善樹が、科学的に幸せとは何かを説く。
Section 1
“幸せ“の3つの形
幸せについて最初に考えたのがアリストテレスです。それ以来、人類にとって幸せとは、Pleasure(=喜び)とMeaning(=意味)という2つでした。Pleasure(喜び)は、脳科学的にLikeとWantに分かれて、Likeは時間が経つと気持ちが減ります。ひと夏の恋もまさにこれ。一方、Wantという気持ちはだんだん過剰化していきます。欲しい、欲しい、欲しいと。ファッションで言えば、欲しいという欲情が過剰になって、中毒になっていく状態です。
LikeとWantは時間で推移する
アレッサンドロ・ミケーレによる「GUCCI」2017SSコレクションより。狂気的、圧倒的な世界観を見せることで、ファッショニスタに「欲しい!欲しい!」(=Want)という感情を湧かせる。©GUCCI
Meaning(意味)はStory(物語)といってもいいかもしれません。日本人は意味が好きです。ストーリーを求めているのです。よく流通業界でいう「モノからコトへ」とは、例えば職人がどう作ったとか、その商品が作られる背景を語り、そこに価値を見いだしています。モノが売れない時代に意味がとても重要とされています。さらに20世紀に第三の形態が指摘されました。Flow(=マインドフルネス)という概念です。
幸せの3つの概念のうち、何が自分にとって大事なのかを把握するのが重要となる。
今この瞬間に夢中になるということで、アメリカ人はFlowに幸せを感じやすいと言われています。行為に没頭することで幸せの感情を得るのです。例えば、仕切られたオフィスをアメリカ人は好みますが、これは、1人で没頭できるための設計で、こうした環境下では幸せに生産性も高く仕事ができるようです。あるいは、女性がひたすらキルトを作るという行為。これもFlowですね。また最近の研究によれば、3つの幸せのうちどれが自分にとって幸せの源泉になるのか、人によってバランスが違うということ。このような個人差があることを理解しておかないと、自分自身や他人にとっての幸せを見誤ることがあります。
Illustration:Walnut
Interview & Edit:Sayumi Gunji
Text & Edit:Etsuko Soeda