パン野ゆりのぶらりパン歩き アムステルダムで愛され続ける老舗「Hartog’s」 | Numero TOKYO
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パン野ゆりのぶらりパン歩き アムステルダムで愛され続ける老舗「Hartog’s」

美味しいパンを求めて世界中どこまでも! パン愛にあふれたモデル山野ゆり改め“パン野ゆり”が、話題の新店から知る人ぞ知る逸品まで、津々浦々めくるめくパンの世界を独自の視点でお届け。今回は、オランダのアムステルダムで訪れた100年以上続く老舗の味をレポート!

こんにちは! パン野ゆりです。今回はオランダ・アムステルダムへパン旅に行った際においしかったパンをレポートします♡ オランダのグルメといえば……クロケットやパンネクーク(パンケーキ)にストローワッフル……ニシンの酢漬けにフレンチフライ!などなど……さまざまなバリエーションのグルメが楽しめる場所ですよね。 とはいえ! パン野ゆりが今回お届けするのはもちろん、パン屋さんのパン!♡

ハルトーグ

こちらのお店Hartog’sは「すべてのパンを全粒粉で作る」というこだわりが強いお店で、アムステルダムでも珍しいのではないでしょうか?

こだわりが強い=万人に受けるのは難しいと私は捉えがちなのですが、ハルトーグのパンはこだわり抜いた手法が人々に愛され、100年以上も続いているというから驚き&素敵!

エコバッグ可愛い

そんな愛されパン屋・ハルトーグのエコバッグを軒下で発見♡ かなり薄め、ペラペラなので3枚くらい買っておこう(お値段は1€しませんでした)。

中に入るとショーケースの中と壁際にズラリとパンが並んでいます。全粒粉しか使わないというパンたち、みんな茶色の色味が若干濃い目ですね。そして、店内に入った瞬間から全粒粉を使ったパンの少し強めな香ばしい香りがたまりません……!

早く食べたい……!!

パンを選んでいると気になるパン、発見!
オランダに来てずっと食べてみたかった「ダッチブレッド」♡♡

中央のヒビ割れたパンがダッチブレッド♡

このダッチブレッド、パン表面の虎模様! から「タイガーブレッド」とも呼ばれているオランダ発祥のパン。
なのですが、パン屋さんであまり見かけない……!

なんでも、オランダ人は普段ダッチブレッドをあまり食べないらしく、パン屋さんで見かけることの方が少ないそうです。
実際、この日にパン屋さんに数件回ってダッチブレッドがあったのはここ、ハルトーグとスーパーのパン売り場のみでした。

驚き! “発祥”とか“元祖”とか、そういうのって大事にするのが普通なんだと思っていました(笑)。

これはなんだろう?

ふと棚に目をやると、沖縄のサーターアンダギーのようなドイツのクラプフェンのようなフォルムのまぁるいパン?

「OLIEBOL」と書いてある……気になるので買ってみよう♡ 実はオランダ語が全然読めず、パンのフォルムでどんなパンか推測しながら買ってみる(次回からはその土地の言語のパンの呼び名をある程度は頭に入れてパン屋さんへ行こうと決めました。反省)。

次から次へとお客さんがひっきりなしに訪れるハルトーグ。さすが、100年以上愛されているお店だなぁ……。

お会計を済ませて、外に出て早速食べてみよう♡

まずは謎のサーターアンダギーから食べてみよう♡ 手に持ったときに指に脂がつく感じや、クラストの感触としてもかなり近い!
ドイツのクラプフェンはクラストが薄くてヤワヤワとしていますが、こちらのオリボールはしっかりと固め。

一口食べてみると、サーターアンダギーのようにジューシー! その中にレーズンのみずみずしさが活き活きとしています。オイリーでむっちりとふっくりとしているパン生地だけ食べても甘味があってとっても美味しい♡

「この美味しいオリボールって一体……?」

調べてみたところ、オリボールとは年末年始のオランダの風物詩! 年末にしか食べられない期間限定の食べ物だそう。
年越し蕎麦を食べる感覚でオランダ人はこのオリボールを食べるそうで、ドーナツの原型とも言われているとか。

えー! 知らなかった!
でも、なんかラッキー♡♡♡♡

今しか食べられないと言われると得をした気持ちになるなぁ♡(この日から毎日オリボールを見かけては食べていたとは言うまでもない)。

続いてのバナナマフィン

こちらはスペルト小麦のバナナマフィン。
一見何の変哲もないマフィンですが、一口食べると……あら、驚き♡!

ボソボソとパサつきがちな一般的なマフィンとは違い、スペルト小麦特有な水分が多めなムチムチとした食感。……新しい!

香りも良く、目に見えるバナナの果肉が口内で粒々と広がり、バナナの味と甘味がしっかり感じられます。

これ……初めて食べるマフィン! そしてすっごく好み!♡♡

クロワッサン

見るからに……なんてしっかりとしたクロワッサン!
普通のクロワッサンよりもチーズの歯応えがプラスされて「ガリっ!!」とした食感がとても新鮮。日本のサクサクパラパラとしたエアリーなものとはまったくの別物。

そして何より……すんごく香ばしい!
チーズの塊が口内を駆け巡り、鼻に抜けていくチーズ…チーズ…チーズ…♡!
香りの余韻が長いのもとても印象的。

全粒粉のクロワッサンは日本でも一度だけ食べたことがありますが、生地のまとまりが若干クッキーのような固形っぽくなっていたのを覚えています。ハルトーグのクロワッサンも同じく、パン生地自体も歯応えがしっかり。

オランダはチーズが美味しい国としても有名ですし、その国の名産を楽しめるのも嬉しいですね。

タイガーブレッド

最後に紹介するのがこちら! オランダ本場のタイガーブレッド!

「発祥」とか「元祖」とかのキーワードって何故だか若干緊張しませんか?
私はするんです(笑)。
(なんだか姿勢を良くして食べないと、古くから伝わる伝統や起源を作った職人さんに失礼な気がするのです。)

ガブリ。ガリガリ。ガリガリ。

かなり厚めなクラストが良い音を奏でます。口の中怪我しちゃいそうなくらい……! 深みがある味。リーンで実直な食事パン。

上がハルトーグのタイガーブレッド
下が近所のスーパーのタイガーブレッド

ハルトーグのパンは全粒粉で作られているので、近所のスーパーで見つけたプレーンな小麦粉のタイガーブレッドと比べてみました。

やっぱり目で見てすぐに色の違いを感じますね。
持った時の軽さなどは似たような感じでしたが、味わいや風味が全く違う!!

スーパーのパンはめちゃくちゃ軽い! 風味もほぼなし。ギュッと詰まった旨味は感じない分、食事の付け合わせとしては抜群。

ハルトーグのパンは熟成した職人技を感じるような、素朴なのに重厚なパン………!こんなにも違うのか!!と驚きを隠せない食べ比べになりました(笑)。
旨味や風味を格段に感じるし、ハードな食感もスーパーのそれとは比べものにならない……! 100年以上続くレシピに伝統を感じる……!!

オランダに行く際には間違いなくオススメしたいハルトーグ。
100年以上続くパン作りをぜひ味わってみてください!

Hartog’s Volkoren
住所/Wibautstraat 77, 1091 GK Amsterdam
TEL/+31 20 220 0044
営業時間/月〜金 7:00〜18:00 土 7:00〜17:00
定休日/日
http://volkorenbrood.nl/

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Photos & Text: Yuri Panno Edit: Yukiko Shinto

Profile

パン野ゆりYuri Panno パンコーディネーター/パンシェルジュ。日本全国、訪れたベーカリーは数えきれないほど。年に数回は海外へも足を運び、パンを独自の視点で分析。最近では、トークショーや「世田谷パン祭り」でワークショップを開催するなど、活躍の場を広げている。モデル山野ゆりとしては、雑誌や広告、CMなど幅広く活躍中。モデルという職業を活かし、太らないパンとの付き合い方も考案中。Instagram: @yuri.yamano

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