パン野ゆりのぶらりパン歩き 噂の食パン専門店「考えた人すごいわ」大行列に潜入!
美味しいパンを求めて世界中どこまでも! パン愛にあふれた“パン野ゆり”ことモデル山野ゆりの新連載がスタート! 話題の新店から、知る人ぞ知る逸品まで、津々浦々めくるめくパンの世界を独自の視点でお届け。記念すべき第一回は、2018年6月清瀬にオープンし早くも話題の食パン専門店「考えた人すごいわ」をレポート!
一度見たら強烈なイメージで頭から離れない!「考えた人すごいわ」。口コミから始まり、今やテレビやSNSでも多数取り上げられる大人気の食パン専門店です。
私が伺ったのは8月の終わり。西武池袋線の清瀬駅から北口を出たらすぐ。大きな看板が目印で、というか、駅ホームからも簡単に見つけられます。別角度には“秘伝”の文字が。
「考えた人すごいわ」では、食パン2種のみの販売という潔さ。1つは「魂仕込(コンジコミ)」というベーシックな食パン。そしてもう1つは夕方18時から販売というレーズンパンの「宝石箱」の2種類です。
36℃という炎天下の中にも関わらず、開店前の行列は行列はずらりと100名程!しかも、並んだからといって買えるわけではなく、まずは整理券を手に入れなければならないのです。先着順ですぐ買える方もいれば、購入時間を決めて戻ってくる方も。幸いにも私は開店時引換券をゲットできたので、一巡目に。
店先には冷たいお水と日傘の貸し出しのサービスも。なんて素敵なお気遣いなんだろう、と心が温かくなりました。
10時オープンと同時に、開店時引換券を持つ人から順番にパンを受け取ります。この時間は魂仕込一本のみ、お客様達が次々とレジへ流れていきます。ついに目の前に目の前に念願のパンが!
パンを受け取った後、店長の木村さんがお忙しいなか、少しだけお時間をくださいました。「パンをすべてお客様に渡し終えたら、少し時間が空くので、良ければ厨房も覗いて行ってください。」手際よくパンを袋に詰めながら、にこやかな木村さん。そんなタイミング2度とない!と、お言葉に甘えてしまいました。
一巡目のお客様にすべてパンを渡し終え、木村さんが厨房を案内してくれました。
入ってすぐに目についたのが、ずらりと並んだ食パンの型。「すごいわ」では通常サイズが2斤サイズと少し大きめ。
こちらはミキシングが終わったパンの生地。これから一次発酵するそう。1つのまとまりが大きくてビックリ!私がお家で作る量とはもちろん全然違います。
こちらは発酵がすべて終わったパンの生地。きれいに膨らんでいますが、「この高さが数センチ変わるだけでナンセンスなパンになる!」と木村さん。パンの角から角へ真っ直ぐ伸びる“ホワイトライン”と呼ばれる白い線がきれいに出るか出ないかが、この高さで決まるそう。
1度に24個しか焼けないというオーブン。焼ける個数が決まっているので、1人1本までと制限ができてしまうのも納得。
昨今の日本は空前の食パンブーム。ここ数年で食パン専門店が軒並み増加しています。そんな食パン戦国時代における「すごいわ」ならではの食パンとは? 木村さんに伺ってみました。
「ベーシックなものほど素材や製法にこだわりたくて。独自の配合で可能になった“もっちり”と“しっとり”を同時に感じていただけると思います。相反する要素ですが、その2つをいっぺんに引き出しているんです!そこが『すごいわ』ならではですかね」
なるほど。確かにその2つの食感を想像すると、不思議な組み合わせだ。
「どこのパン屋さんでも美味しいパンは本当にたくさんありますし。なので、パン以外に心がけていることがあって、それが接客なんです」
柔らかい笑顔でこう続ける。
「やはり人と人の繋がりが大事だなと思うんです。ついつい忙しさに流されてしまうと、お客様との繋がりを忘れてしまいがち。僕はそうなるのがすごく嫌で。なので出来るだけお客様への接客は心を込めて丁寧に、と心がけています。今日だって炎天下の中、こんなにたくさんのお客様が並んでくれて。ありがたいことです、本当に!」
ふと、店先に並ぶ日傘と飲み物を思い出し、だから日傘や飲み物のサービスがあるんですねと尋ねると、本当は一人一人に直接お配りしたいくらいだと言う。なんとも、木村さんの接客まで魂仕込だ。
最後に、木村さんにお店の名前について伺ってみました。
「このパンを食べた方たちに、こんなに美味しいパンがあるのか!と、驚きを与えたくて。『考えた人すごいわ!』と思ってもらえるパン屋さんになりたくてこの名前になりました」と、作り手の素直な気持ちがありのそのまま店名になっていました。
オープン当時は「ここはなんのお店ですか?」とよく尋ねられたそうですが、今や地元では知らない人がいないほど大人気のパン屋さんに。
帰宅後、高鳴る胸を抑えいよいよ実食。袋から出すとすぐに香ばしい香りが部屋を漂い、至福な瞬間。ずっしりとした重みも印象的。これが今大人気、100人が行列をする魂仕込!
木村さんがこだわっていたホワイトライン! この一筋の線にこだわりを持っているのですね。
断面。きれいなスダチ(気泡の跡)が入っています。ちなみに、店長の木村さんにオススメの食べ方を尋ねたところ「焼かずに、何もつけずに、そのまま食べてみてください。その方がパンの美味しさが際立ちます!」とのこと。
いざ実食。スライスによって味わいが違いそうだなぁ…ということで、まずは2センチのやや厚みのあるものを。手に持つと同時にすぐわかる上質なコットンのようなキメの細かさと香りの良さ!食パンのホワリとした丸みのある香りだけで、美味しさが約束されているかのような錯覚に。
そして口の中に頬張っていると、パンではない新しい感覚。確かにケーキのようなスポンジ感? 耳を含め、こんな食感の食パンは初めてです。しっとりして、モチリとして、繊細で、口溶けが良い。そして、感じる甘み。
この“甘み”は4センチの極厚スライスになるとより一層顕著に。生クリームのようなすっきりとしたクリーミーな甘さを堪能できます。耳とクラムのバランスなども変わるので、味わいにも勿論変化が。厚みがある分、抵抗のない柔らかさが口の中でまとまりながら踊り出します。かと思うとスッと消えてしまうような口溶け。美味しさに酔いしれ、つい目を閉じてしまう“魂仕込”。2斤はペロリと食べ切れてしまいそう。
今後、食パンのバリエーションを増やす可能性もあるそうですが、その際には今あるレーズンパン「宝石箱」の代わりとして販売するかもしれない、と店長の木村さん。今のところラインナップを増やすつもりはなく、あくまで魂仕込をベースにやっていきたいそう。
魂仕込の美味しさにうっとりしながら、早くも今度はレーズンパンが食べてみたい…。今しか食べられないかも?と思うと、再び清瀬に足を運ぶ日も近そうです。
考えた人すごいわ
住所/東京都清瀬市元町1-10-13
営業時間/10:00~20:00
定休日/不定休
TEL/042-497-1510
URL/sugoi-bread.com/
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Photos & Text: Yuri Panno