進化する原宿「ジェンダレス男子」のこれから
編集者、フォトグラファーとして世界中で活躍する米原康正が、東京のガールズカルチャーを読み解く連載企画「tokyo girls ポップな東京文化人類学」。今回は「ジェンダーレス男子」創作者でもある丸本貴司と語り合う、原宿男子たちの未来。
K-POPと原宿カルチャーの違いは?
編集力があるかどうかが鍵
米原「ジェンダーレス男子を定義したときに、K-POPとの線引きってどう考えてた? 若い子たちへのK-POPの影響の強さは無視できなかっただろうと思うけど、丸本くんが扱っている読モは、K-POP系だとしても東京らしく編集してる印象だったから。それってかなり重要な部分。90年代ギャルカルチャーも、編集作業ができる人が抜きん出た。分かりやすいのは109のカリスマ店員とか」
丸本「K-POPとの線引きはかなり考えました。実は、とまんって出会ったときはまさにK-POP直系だったんですよ。それがWEGOと関わることによって、一回編集せざるを得なくなるんですよね。だから変われたんだと思います。たとえばレディースを着るとか、DIYするとかも編集力ですよね」
写真/とまん
『ヌメロ・トウキョウ』2014年11月号にて米原康正が撮影
米原「編集力のある子たちが出てくると、本来は彼らのカスタムに注目すべきなんだけど、メディアがだんだんその人の持ちもの紹介とか、プライベートを紹介しはじめる。そうすると、ブランド品を持っているかとか、全身ハイファッションに身を包むことがステータスになっていく傾向があって、ギャルカルチャーはそれで衰退したと思ってるんだ。その後出てきた裏原カルチャーとかその女の子版『mini』も編集された文化だったけど、大人たちが別の方向に誘導しちゃうんだよね。DIYのままメジャーになるってどういうことなんだろうっていうのは僕の中でもずっと課題で、それがWEGOとか読モBGにはできるんじゃないかって期待している。大人たちで育てているっていう意識はある?」
丸本「育てているというよりは、逆にその、大人たちが作っている枠に入らないようにという意識はあります。K-POPもそうですしね。でもこんどうようぢに関しては完全に天然の産物だったので、本人も意識せずにオリジナルでした。はじめに話したリストバンドもそうなんですが、パンツはスキニーデニムを1本しか持っていないけどいつも黒のスキニーだけだとつまらないって、膝のところで切ったんですよ。膝下があるバージョンとなしバージョンで着られるように、安全ピンでとめて2WAYにカスタマイズ。最初に見つけたのがそういう子だったから、その価値観は尊重したいなって」
米原「それこそクリエイティブだよね。ギャルカルチャーのときはそれがネイルで、個人で上手な人がピックアップされるシステムが面白かったのに大人が商品文化に変えちゃったんだよね。東京は物を作る人がかっこいい都市だったはずなのに、物を買う人がかっこいいってことになりはじめていて」
丸本「いまの子たちの面白いところって、カスタムとかDIYをしたいっていう意志は通り越していて、デザイナーが作った意図を汲まない考え方なんですよね。意図を無視してるから、レディースメンズの意識はない。それがユニセックスとの違いなんですよ。でも面白いのが、WEGOのお客さんは僕が入った当時、比率的に男性客のほうが多かったと思うんですけど、今は女性客のほうが完全に多い」
米原「裏原ブームのときは男子の文化がちゃんとあって、それを女の子がサイズダウンしていたんだけど、今回の文化は着るものがレディースだろうとメンズだろうと気にしない。ところがさ、テレビで取り上げられるようになるほどブームになると今度は拡大解釈されて、いま原宿の男子たちっていうと、派手で変わった子たちみたいになっていない?」
丸本「ジェンダーレス男子として一括りにされがちですが、WEGOの周辺にいる子たちと、WCにいる子たちでもマインドが違いますしね」
写真/フリーマガジン「CHEKI-SHA(チェキ写)」撮影現場にて。
Twitter @yone69harajuku より
米原「例えばAKB48みたいなものがある種、通過点だとすると、読モも似たようなイメージがあるんだけど、読者モデルってその後は何を目指すの?」
丸本「そういう意味で、ちょっと興味深いことがあったんです。2年前までは読モって通過点だったんですよ。読モ活動を踏み台にして、大手芸能事務所とかモデル事務所に入って俳優になるのが王道。俳優になったら、読モの仕事を経つ。僕が親しい中では、町山博彦くんくらいの世代まではそれが主流だったんです。それが今年、大倉士門が事務所に入ったときに『読モ活動は辞めないで続けます』って宣言したんです。肩書きからも読モは消さないって。それをきっかけに、この先も読モが通過点ではなくて、読モでもありテレビの仕事もするし、アーティスト活動をスラッシュしていくようになっていくんじゃないかな」
Intervier&Edit:Yukiko Shinmura