テーマパークっていったい何?[後編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.16 | Numero TOKYO - Part 4
Culture / Post

テーマパークっていったい何?[後編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.16

ナンジャタウン内の「福袋七丁目商店街」 © NAMCO LTD.
日光江戸村 © EDO WONDERLAND
I「この間、台湾に行ったのですが、最近向こうで流行しているのが、時代テーマパークというか、たとえば『ALWAYS三丁目の夕日』で描かれた昭和30年代のような、時代空間を丸ごと作ってしまうことでした」
K「確か、ラーメン博物館の内装もそのくらいの設定ですよね」
──時代空間といえば日光江戸村もありますよね。タイムスリップへの憧れもあるのかもしれませんね。
I「台中では、巨大な体育館のような場所に1940~50年代のものが集められていて、中では食事もでき、賑わっていましたよ。半世紀も日本の植民地だったので、日本のものもたくさん入っているんです。テーマパークの中には、地域だけでなく、時間を組み込んでいくケースもあるということですね。そういえば、ディズニーランドのシンデレラ城のモデルになったのはドイツのノイシュヴァンシュタイン城、19世紀にあって中世に強い憧れを抱いていた“狂気の王”ルードヴィヒ2世の城ですよね。最近ヨーロッパで流行しているのは、新しい視覚技術を駆使して作られた巨大なパノラマ館なんです。ベルリンやドレスデンにできているのですが、大きな円形空間に全天周の120×30メートルくらいのビッグ・ピクチュア、しかもその絵にはバロック時代のドレスデンとか、壁崩壊以前のベルリンが描かれている。まさにタイムスリップです」
K「ディズニーランドは東京ですらアメリカのリ・インストールなので、ジャングルがあり、蒸気船が出てきて、西部開拓史の後にアポロで宇宙まで行くんです。いまは宇宙の部分は『スター・ウォーズ』に更新されていますが、結局、太古から宇宙時代までのアメリカが表現されている。でも、そういうことを気にせずとも楽しめる二段構えにはなっていますけどね」
I「話が逸れますが、ドイツ・デュッセルドルフの郊外にネアンデルタールという駅があって、ここはまさに1856年にネアンデルタール人が発掘された場所なんです。そこにある渓谷がネアンデルタールのテーマパークになっていました。すごくいいミュージアムもあり、周辺は猿と人間のミッシング・リンクをテーマにした作品が展示された広大なアートパークになっていて、面白かったですね。で、そのミュージアムに入ると、背広を着たおっさんが僕のことをずっと見ているんですよ。なんで睨まれるんだろう、と見返したりしていたんですが、近づいていくとネアンデルタール人を精巧に復元した蝋人形で。携帯のようなものを手にしているから何かと思ったら、石器だったんだよね(笑)」
【松本人志監督映画『R100』はテーマパークの日常化を暗示!?】

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