戦前と戦後でエンターテインメントはこんなに違う[後編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.12 | Numero TOKYO - Part 6
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戦前と戦後でエンターテインメントはこんなに違う[後編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.12

活躍する女戦士と、応援する男性陣
 
I「AKB48はちょっと軍隊っぽいですよね」
 
K「彼女たちが歌っているのって、すでに軍歌ですよね。しかも、まるで昭和の政治家のような顔をしている。総選挙とやらで落ちたときの答弁も、その表情も、政治家よりも政治家のようじゃないですか。それも今の政治家の表情ではなくて、昭和の男の政治家の顔。アイドルが一番男臭いんじゃないですか。それこそ、ジェンダー転倒の完全な形」
 
I「オリンピックもそういうイメージでしたね」
 
K「子供を抱いた夫が「胸を張って帰って来てくれ」と堂々と奥さんにエールを送る。ロンドンオリンピックは象徴的でしたね。僕が男の子に持っていて欲しい全てを持っている、なでしこジャパン。先輩が後輩の頭をなでたり、「くよくよすんな」って負けても笑顔で出てきたり」
 
I「女が戦って、男が応援するというのに何の違和感もないんですよね」
 
K「女性崇拝が、女戦士という方向に向いていますよね。今時の男の子は、女の子を好きになったら彼女からグーパン(チ)欲しいですっていうような」
 
I「ジャズの世界はどうなんですか?」
 
K「ジャズ界も女性のプレイヤーがすごく増えています。この間、女性プレイヤーだけを集めて討論会をするというのを番組でやったりもしました。フェニミズムというと、日本の音楽はみんなノージェンダーになっています。例えばサカナクションとかみたいに、バンドに男と女が混在するのが珍しいことではなくなっている。軽音ですよね。ベースが女の子でも驚かない。そんなふうになりましたけど、ジャズだけは全共闘の楔(くさび)が残っていました。女性だけでジャズ喫茶には入りにくいし、「女にはわかるものか」と男が唯一言える最後の砦がジャズ界だったんです。でも今は、吹奏楽部出身で、ジャズ喫茶を経由せず、大学のサークルも経験せずにプレイヤーになるという道が出てきたんです。ブラスバンドから楽器をスタートして、レコード聴いて育っていく。僕たちのように、ジャズ喫茶で座禅を組んで勉強し、ジャズ研で先輩に鍛えられるということをしないでミュージシャンになる人が増えている。ジャズ界はあまりにもプレフェミニズムすぎたので、今やっとスタートに立った感じです。しかもそこに来る女の子たちは、アイドル売りではなくてアスリテスな人たち。しっかり腕も持っているんですよね。プレイヤー側から見たら、彼女たちがどのくらい出来るかっていうのはすぐ分かります。どんなにかわいくて若くても、それだけじゃなくてすごいなって思える人が増えています。しかも、ジャズ喫茶で変な説教を受けてない伸び伸びジャズだから、さらに生き生きしている。すご腕たちなんですね。ただし、取り巻く世界はどうしてもオタク。ファンはグーパン(チ)ください系の男子たちなんです。その温度差というか、彼女たちの意識とファンたちの意識に相違が出てきているのは感じます。彼女たちは犬の様に働き、男のように仕事をして、まさにウーマンリブを実践している様なのに、待っているのはオタクたち」
 
I「あらゆる楽器でそういう現象が起こっているんですか?」
 
▶続きを読む/今って、もしかして戦前!?って感じでしょう

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