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「フィルムに惹かれるのには理由がある」写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.2
K:極限状態になると自分の中に潜んでいる凶器になるものが現在化するというか。腹を減らしながら、がりがりの状態で、写真もいつもそういう状況で撮ったらすごいものが写るかも(笑)。
N:体もたないですね。どうやって体重を落とせるんですかとよく聞かれるんですが、絶対に進めないです。体に悪い。
K:あのときのあの顔、撮りたかったな。テレビで見た時そう思いましたね。次の映画はどんな感じですか?
N:京都の学生さんの映画に友情出演してきます。ゼミの映画なので、総制作費が7万円。だから、旅費のかかる僕なんかが行っちゃいけないんじゃないかと遠慮しようとしたら“それは交渉してやりますんでぜひ!”って。目をきらきらさせてそんなこと言われちゃうと、やるよってなりますよ。すぐに死んじゃう役なんですけどね。学生たちは、僕たちにとって映画界の未来。そういう人達と共に制作ができる機会はあまりないので、貴重な経験です。
K:役者っていいですね。写真家もいいですけど、役者にだけはジェラシーを感じます。なぜかというと、役にのめりこんで、その人間を生きることができるから。先ほどの映画では痩せるという方法でしたが、そうやって形成していって、ある期間、その人間の時間を生きる。そして、期間が終わったらまた人格をもどして、自分に帰って来て、また違う人格に旅する。こんな旅ができるのは役者だけですよね。そんな体験は普通の人生ではできません。それに、監督というのはどこか客観的な目で、役で生きている人間を観察して、いいなってところを探して指示を出す。役者はその瞬間を生きているけど、監督は観察しているだけで一緒に生きる事はできない。そこには凄まじいジェラシーを感じます。自分に戻って行けなくて、少し引きずったりすることもありそうですが。
N:そこが辛いですよね。出て行ってくれないときとか。最近はずいぶん、いけないなと思って意識的に戻せるようになりましたが、若い頃は夢中なのでかなり引きずっていました。役を落とす方が大変で、辛い作業でしたね。今はもう、カットの言葉でにかーっと笑えるようになっています。最近ですよ、戻れるようになったのは。
Photo:IMPOSSIBLE Styling:Yasuhiro Watanabe(FEMME)Interview: Hisako Motoo Edit:Maki Saito Text:Yukiko Ito