「フィルムに惹かれるのには理由がある」写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.2 | Numero TOKYO - Part 3
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「フィルムに惹かれるのには理由がある」写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.2

写真家と役者、ともに感じ合うジェラシー
ーー『ゼラチンシルバーLOVE』の主演に永瀬正敏さんを選ばれたのは、写真への関わりが強い役者さんだったからなのでしょうか?
K:キャスティングにそれは関係ないですね。写真を撮っているからではなくて、永瀬さんという役者さんがイメージに合っていたからです。
N:映画に出演させていただいたとき、始めてだめだしをされた時のことを今でも鮮明に覚えています。役者は、画面に写らないといけないので、小さい作業を大きくみせるくせがついているんですね。その癖で撮影中、シャッターを切るときにすごくオーバーにボタンを押したんです。そしたら監督に“違います。ちゃんと押してください”と言われました。それが今も忘れられない。
K:ふりはだめ。フィルムが入っているカメラと入っていないカメラの重さと、フィルムを巻いてシャッターを切るのと巻かないで押す触覚、全然違うよね。それを空打ちでやると、やっぱり芝居になっちゃう。
N:それ以来、カメラが映画に出てくるシーンを見ると、そこをチェックしちゃいますね。これはフィルム入っていないなとか、オーバーすぎて不自然だなとか(笑)。
K:フィルムのカメラって言葉では“シャッターを押す”と表現するけど、実際に“押す”とぶれます。シャッターにはストロークがあって、シャッターボタンを半分、落ちる瞬間まで押さえて待つ。指が動くのはここまでです。落ちる瞬間というのは指は動いていません。神経が触れるだけ。自分のカメラのシャッターストロークを熟知して、シャッター切る。その瞬間は微動だにせず、緊張だけが走る。ぎりぎりの落ちないところを楽しむのが写真家だから、思いっきり押していると演技になってしまう。
Photo:IMPOSSIBLE Styling:Yasuhiro Watanabe(FEMME)Interview: Hisako Motoo Edit:Maki Saito Text:Yukiko Ito

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