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葛河思潮社 第二回公演 『浮標(ぶい)』!!!

 

はい、突然ですが、いつもと少し温度の違うお話を。舞台の感想の話をしようかと思います。昨日、葛河思潮社 第二回公演 『浮標(ぶい)』を見て参りました。

 

私は女優の松雪泰子さんのお仕事をやらせて頂いているのですが、実は、彼女と初めてお会いしたのは、劇団新感線の舞台、『吉原御免状』の公演を見せて頂いて、その後、楽屋で少しお話しさせて頂いた時でした。

 

もちろん、私自身、大昔から大ファンでしたし、憧れの人に会えて大興奮でしたが、それより何より、先ほどまで舞台上で演じていた妖艶な花魁がそこに居るという!!!強い感覚を受けました。私にはこの時の印象が今でも強く残っていて、雑誌のお仕事等を一緒にさせて頂いていても、彼女がやっている、舞台のお稽古の話等を聞くのがとても大好きで、チケットを取って、最初にお会いしたファンの気分を、客席から見るが最高に至福の時間だったりします。

 

今回も、一ファンの気分で劇場に向かい、正直、来週からのパリコレの衣装(私のね?)もまだ全然仕上がってないので、サクッと見て帰って作業しよう。。。みたいに思っていました。

 

 

が、、、、、、、、、、、

 

 

芝居が始まった途端、全ての私の姑息なスケジューリングは吹っ飛びました。。。。。。

 

原作、脚本の三好十朗は、1902年生まれです。はい、今から100年以上前の人。この脚本、今から70年も前の物なんです。時代は日中戦争へ向かう頃。日本は足早に近代化を急ぐ時代。海外から、さまざまな思想や哲学が入って来て、芸術も文化も新たな動きが生まれます。都市が誕生し、貨幣価値も誕生し、昔のような穏やかで優しい時代から、現代へ移り変わって行こうとする激動の近代の時代。。。。

 

主人公は、才能はあるのに筆を取る事を辞めてしまった画家、久我五郎。彼には結核を煩う妻の美緒が居ます。彼女の闘病の為に千葉の海の側に居を構え、日々彼女の看病に精魂を尽くします。その最愛の妻を失って行く日々の中で、彼が感じ心に描く事、そして彼の家族や友人、戦地に旅立つ親友とその妻等、そういういろんな人々を通して描かれる日常の風景です。

 

 

なんです。切り取った誰かの、その辺の普通の暮らしなんです。。。。。

 

 

なんですが、、、、、、、、、、、、、なん、なんでしょうか?もの凄いです。。。。。。

 

 

オフィシャルのサイトのほうに、ジャーナリストの水谷八也さんが素晴らしいコメントをしています。が、最初にブログやツィッターでは書けないと書いてあります。私もこの舞台に対して、いつもあれだけ流暢にファッションの事をの賜ってますが、、、、、書けませんね。正直。。。。。。

 

物語の中心に主人公五郎と美緒のもの凄く深い愛情が据えてあります。

 

かつてはフラフラする芸術家五郎をしっかりと支えていた妻の美緒は、結核を患い立場が逆転します。日常のちょこちょこした事に左右され、純粋過ぎる五郎は、それでも最愛の人を救おうと翻弄します。とても芯の強い女性だった美緒は、日々、死へ向かって行く自分の日々の中で、それでも強く生きようとする、人間本来の姿を露にします。

 

そのもの凄い愛情の中で、それぞれの立場や状況に左右される人々が登場し、彼らに様々な問題を投げかけます。誰かが登場し、口から現れる言葉は一つ一つが見ている自分達の心に刺さります。その度に長めに設定された暗転の仲、様々な自己懐疑が起こります。

 

私は、18歳の時に九州のど田舎から東京に上京し、もはやこちらでの生活のほうが長くなりました。今迄、沢山悪魔に魂を売って、すっかり汚れて来ましたが(笑)、そんな自分も大好きです。ハイ・ファッションにまみれていろんなコレクションでパパラッチされ、今の自分の居る場所は自分で作って来ましたし、もちろん大満足です。

 

でも、あの頃の最高に自分がピュアだった事もちゃんと覚えています。戻りたいとも思いませんし、こんな苦痛な日々を繰り返す事すら出来ません。でも、この作品はなんかそんな事をふと思い出させてくれました。なんでなんだろう。。。。?年かな?

 

人生は残酷です。決定事項は何も変わりませんし、現実にきちんと目を向け、前に進むしかないのです。神様も天国もそんなものないし、与えられた命を一瞬一秒死へ向かって進むしか無いのです。楽しいばかりでもなく、苦しいばかりでもなく人生は淡々と続き、最終的には自分をどう納得させて行きて行くのか。。。そういう残酷だけど、ありのままの人生を見せてくれる舞台です。そして見終わった最後に、深く重い感動を受け、しばらくすると、何となくちょっと元気になれる舞台です。

 

ほんと見る前は、帰ってサクサク作業しようと思ってたんですよ。。。。駄目でしたね。完全にノック・アウト。

 

演出をされた長塚圭史さんは、留学中のロンドンでこの戯曲に出会ったそうです。日本語に飢えていた彼に、70年前に書かれた三好十朗の言葉は、いばらの棘のようにグサグサと刺さり、心を奪われたそうです。そんな昔に書かれたのに、この心の奥深くまで刺さる、美しい言葉達。出演するキャストの皆さんも、もの凄く丁寧に役作りをしていて、この舞台にかける意気込みが伝わって来ます。

 

少しアバンギャルドな舞台美術は、真ん中に砂を敷いたコンテンポラーな雰囲気です。そこは千葉の海岸になったり、美緒が闘病する部屋になったり、庭の景色へと変わります。大道具、小道具の一つ一つが全てあるべき場所にあって、ちゃんとその理由が解り、伊賀大介さんの衣装も、もの凄いバランスで最高の配慮がされています。何も気にならないし、何も嘘がない舞台です。舞台を沢山ご覧になっている方はこの感じ解りますよね?

 

関わる人間全てが、この脚本を、舞台を愛し、丁寧に作られています。ここまでの舞台は。。。、ひょっとしたら初めて見たかも。。。。。

 

私はファッションの人間ですし、他の事は何も出来ません。これからも皆さんに世界中の美しいをお伝えするのが仕事ですし、いやぁ。。。。このままパリに行って大丈夫かな?なんて思いましたね。。。。関係ないけどねwwww。。。。

 

 

葛河思潮社 第二回公演 『浮標(ぶい)』

出演(戯曲配役順)
田中哲司
松雪泰子
斎藤直子
平 岳大
萩野由里
池谷のぶえ
大和田美帆
木村 了
長塚圭史
高部あい
赤堀雅秋
深貝大輔

 

スタッフ
作/三好十朗
演出/長塚圭史
美術/二村周作
照明/小川幾雄
音響/加藤 温
衣装/伊賀大介
ヘアメイク/川村陽子
演出助手/山田美紀
舞台監督/福沢諭志
プロデユーサー/伊藤達哉

 

東京公演
9/20~9/30 世田谷パブリックシアター

大阪公演
10/6~10/8
梅田芸術芸状 シアター・ドラマシティー

兵庫公演
10/10
兵庫県立芸術文化センター

仙台公演
10/13~10/15
仙台市都城区文化センター シアターホール

新潟公演
10/10 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場

 

葛河思潮社 第二回公演 『浮標(ぶい)』のオフィシャルサイトへはこちらからどうぞ。

 

デートとか合コンの予定ブッチしても是非見て欲しい作品です。少し遠くの所にお住まいの方々も、無理してでも見てください。そして、私はご覧になった方達と、沢山、沢山話がしたいです。
最後にこの作品、『好き』とか『愛してる』とか、最近の安いJ-POPシンガー達が陳腐に使っている言葉がほとんど登場しません。でも、そんな気持に溢れた作品です。沢山の『好き』や『愛してる』が雨のように降り注ぎます。

 

緩~く毎日を行きてる貴方。。。。。美しくなるには、沢山の美しく物を見なければなりません。この作品、心から美しくなれる作品です。是非、お誘い合わせの上、ご来場下さいね。

 

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TOKYO
stylist designer artdirector

雑誌・TV・映画・舞台等、スタイリングからディレクションまで幅広く活躍中。著書『ダイコ★のブランドパスポート』が発売中

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