はい、忙しい展示会ツアーの合間をぬって、展覧会等のエンタメ関係も満喫おりますよ。高校の頃美術部だった経験から、膨大な数の美術展を見て参りましたが、やはり展覧会に行くと気持がフレッシュになり、五感を使い身体中の穴という穴を開いて、様々な美しい素粒子が身体の中に吸収されていく感じが溜まりませんね。
少し前の展覧会やギリギリの公演もありますが、せっかくなんで、後パブを載せようかと思います。まずは、10万人以上を動員した話題になった展覧会、フランシス・ベーコン展から。かなり宣伝も派手にやって、注目されていた展覧会だったので足を運んだ方も多かったんじゃないでしょうか?
フランシス・ベーコンは20世紀を代表する、アイルランドのダブリンを拠点に活躍した画家です。生誕100年を記念した展覧会は、イギリスのテート・ブリテン、アメリカのメトロポリタン美術館等で開催され話題を呼びました。なにせ人気の画家の為、作品が中々揃わず、今回30年振りの日本での開催で、ベーコンの世界を十分に堪能出来る素晴らしい展覧会でした。
モデルの人物をえぐるようなポートレートの描き方や、必要以上にモチーフやテーマに拘り、繰り返し描かれる世界観。ホモ・セクシャルである画家自身の、頽廃的で華麗な世界は、恐怖や衝動とエロティックや甘美な世界を融合させた、独特の世界観を生み出します。絶叫するように大きく口を開けた肖像画や、クリーンな空間に投げ出された肉体はクールで洗練され、画家のベールをかけられ、現実のショッキングなニュースは、美しいアートへと昇華されて行きます。
素晴らしかったですね。。。
憧れだった作品の実物を目の前に、当時理解出来なった気分や感覚が、すんなり理解出来たり、昔の思い出が蘇ったりと、私的にはとても感慨深い展覧会でしたね。
彼の作品を理解する上で、画家がホモセクシャルである事と、アルコール等に溺れていた事は必要不可欠な要素です。酔っぱらった状態で見えた歪んだ世界を、そのまま絵にしたようなフォルムや、気になるパーツのみがクローズアップされる感覚は、ダークサイドを知らない人々には中々理解が出来ない世界のようにも思えます。
持ち前のゲイ的な発想は、残酷なモチーフもエレガントに解釈させ、肉体や死体すらオシャレに描いてしまします。中でもヒトラーの写真とマリリン・モンローのピンナップを同じように大切に扱っている本人のムービーは、まさにゲイ的な感覚。ここが理解出来れば、以外とスムーズにこのアーティストの事を理解出来るような気がします。
ただ、気になったのが、ゲイである事をはっきり記述していない展覧会のキュレターサイドの姿勢。嫌悪感を抱く人も多いでしょうが、『20世紀の巨匠!!』などと大きく唱って、印象派が好きなコンサバティブな美術愛好家まで動員するのは、やり方が汚いですね。
高校時代、ベーコンの画集を抱えて歩いていると、気違い扱いされた事が多々ありましたが、そんなアーティストがパブリックの美術館で真っ昼間から、 男の性器を赤裸裸に描いた絵画を展示し、初老の美術愛好家の方々の不可思議な気分を煽っていたり、情事が終わった相手の裸を描いてる絵のポートレートのポストカードを、嬉しそうに何枚も買っている、女子学生や主婦を見て、あまりにもシュールで溜まりませんでしたね。www
とにかくマニアックで狂った画家です。恐らく彼以外の人間には理解の出来ない世界でしょう。今後ベーコンの作品を見る機会があるようでしたら、そのように覚悟して見ることをおすすめします。理解は無理ですので。。。
この展覧会は、6/8から9/1まで豊田市美術館で開催されています。見逃してしまった方は是非足を運んで下さい。強烈な衝動と甘美なエロッティックな世界を堪能してはいかがでしょうか?
フランシス・ベーコン展のサイトへはこちらからどうぞ。
続いてはグッとコンサバティブに中世ヨーロッパを代表する素晴らしいタペストリーの展覧会に行って来ました。
フランスが誇る至宝、クリュニー中世美術館の門外不出と言われた見事なタペストリー『貴婦人と一角獣』がなんと来日してしまいました。日本人にとって、中々理解がし辛い中世という時代は、キリスト教の力が偉大で、人々の生活は全て『神の御心のままに』コントロールされた暮らしをしていました。厳しい戒律の元、魔女狩り等の不思議な風習も沢山あった時代は、絵画を描く事は禁じられ、残っているのはルール通りに描かれた宗教画しかありません。ですがそんな時代に、タペストリーというアイテムを使い、人々は優しい愛の形を表現しました。
はっきりした情報が解らないこのミステリアスなタペストリーには、美しい豪華な衣装を纏った貴婦人と一角獣が描かれています。一角獣は想像上の動物で、獰猛で人間には絶対慣れないと言われています。螺旋状のその角に飲み物を入れて飲むと、全ての毒素や病気を取り除き、不老不死の力を得られると説話や絵画等に沢山描かれます。ただ、その一角獣、美しい処女だけにはひれ伏すという面白い特徴があるために、騎士や領主など荒々しい男性がもてはやされたこの時代には、愛する人への求婚の際に取り上げられ登場します。
恐らく、こちらもそのプロポーズの際に使われたであろう、6枚の連作による美しい手仕事によるタペストリーは、それぞれ味覚や聴覚など、人間の五感を意味します。もの凄い種類の植物や動物が描かれ、何千人の職人を使って仕上げた究極の仕事には、送った男性の深い愛情や、厳しい暗黒時代を生きた当時の人々の中にも人間らしい優しい感情は伺え、嬉しくなりますね。
他にも中世に関する彫刻や、一角獣のモチーフの彫刻や工芸品もありますので、中世という時代を理解するのはとても素晴らしい展覧会です。大き過ぎる新美術館には作品が足りなくて、オリジナルの映像でスペースを埋めているところが気になりましたが。。。。
7/24まで六本木の新美術館で開催されています。お時間を裂いてでも是非足をお運び下さいね。
貴婦人と一角獣展のサイトへはこちらからどうぞ。
Numero.jpのニュースでの取り上げられていた、フィリップ・ジャンティー・カンパニーの公演を、東京公演ギリギリで先週見て参りました。
フィリップ・ジャンティー・カンパニーはフランスの演出家、フィリップ・ジャンティーが主催する劇団で、何度も日本で公演をしているためとても人気で中々チケットが取れません。ようやくの思いで見て参りましたが、、、、嗚呼、、、素晴らしかったですね。。。。
フランス人のフィリップ・ジャンティーにとって、舞台とはまるで夢のように描かれる世界で、ダンスや歌、演劇やパントマイム等を取入れた独創的な世界観を表現します。自身がかつて文楽を学んだキャリアから、必ず登場する人形も重要な役割を果たし、公演の度にオーディションを行われるキャストには、様々なスキルが要求されるハードルの高い舞台です。
今回の公演、『動かぬ旅人』はフィリップ・ジャンティー共和国の不思議で愉快な住民達が、大海原に旅に出ます。段ボールの筏は見知らぬ未開の土地に彼らを漂着させ、個性的な人々は様々な不思議な体験をします。楽しげに流れていく作品の中に痛烈な社会批判や、エロティックなユーモアを込め、独特のエスプリ満載の舞台はドラマティックに展開します。
描かれた夢の世界は、何の脈絡もないですし、押し付けがましい物語もありません。コラージュのように紡がれたシーン達はどれも印象的で、楽しかったり、悲しかったり、見る側の様々な感動を煽り、その人なりのストリーを描かせます。偶然のような細かいテクニックは綿密に計算され、日常の中にある見慣れたアイテムは効果的な舞台表現として昇華されます。
いやぁ〜、最高でしたね。。。。懐かしさや人生のわびさびまでも取り込み、使われる要素はどれも初めて見る不思議な物ばかり、なのにどこか共感が持ててしまうユーモアに溢れた演出に、にこにこ楽しんでいるとサラりと飲み物に毒を盛られる感じで、落ち着いて見てられません。
まさにフランスのエスプリ。この素敵な世界を上手く文章に出来ない自分が、あまりにも歯がゆいですが、是非一度足を運んでみてもらいたいです。鍛錬された一流のプロの仕事を見る事が出来て、随所に漂うオシャレな感じも素敵です。汗臭い台詞まわしや、人間の尊厳を激しく叫ぶ、うるさいエンターテイメントに飽き飽きの皆様には最高のアイテムとなる事、間違いないですよ。
フィリップ・ジャンティー・カンパニー『動かぬ旅人』のサイトへはこちらからどうぞ。大阪公演などまだいくつか見れるものがありますよ!!!
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