パリコレリポートの最中ですが、先日、素敵な展覧会を見て来ましたので、急遽そちらのリポートをしますね。あまりにも素晴らしかったのと、 4/29(日、祝)で終わってしまいますので、このブログを見て心動かされた方は、是非足を運んでもらいたいなと思いUPさせて頂きますね。
『FENDI UN ART ATURE』とタイトルが付いた展覧会。UN ART ATUREは『もう一つのアート』という意味で、言わずと知れた世界的ブランドFENDIの展覧会になります。私の著書ブランドパスポートでも取り上げさせて頂いた、ゴージャスでラグジュアリーな毛皮で有名なフェンディ、、、一体どんな素晴らしい世界が待ち受けているのやら。。。。
今回上野の東京藝大の美術館で開催されたこの展覧会ですが、FENDIの今迄の歴史を紐解く壮大な展覧会です。
フェンディは、1925年、イタリア、ローマにアデーレとエドワルド夫妻によって、小さな皮小物のブテックと工房としてOPENしました。夫婦にはやがて5人の才能溢れる娘が出来て、成長するにつれ自然と両親のビジネスを担って行きます。
1965年、当時27歳のカール・ラガーフェルドをデザイナーとして主任デザイナーとして迎え入れ、フェンディはめまぐるしく進歩を遂げます。その頃、防寒の為の重衣料という概念しか無かった毛皮を、ファッションに取入れたのです。若いデザイナーは新しい風をアトリエに吹き込み、沢山の素晴らしい技術が開発され、ファーが今のように、ファッションには欠かせないアイテム になったのも、このフェンディのおかげです。
今回は、長い年月の間、世界一の毛皮ブランドとして君臨し、沢山の美しい作品を世界に発表したバックグラウンドにある、伝統を重んじ、革新を恐れないア トリエスタッフ達のプライドと、カール・ラガーフェルドのソフィスティケイトされたデザインの融合を、その気の遠くなるような仕事と、ファッショナブルなアイテムの両側から見る事が出来る充実した展覧会になっています。
それでは会場へ足を踏み入れてみましょう。まず会場へのイントロ室には、両方の壁に配置されたスクリーンで、フェンディの今までのアーカイブスの作品や、手仕事の行程等を映像で楽しむ事が出来ます。既にここでうっとりしちゃいました。時代に合わせてどんな提案をして来たのかが良く理解出来て、実際の作品への見事な導入で、観客をフェンディの世界へ誘います。
メイン会場へ間にはなんと、フェンディーのハイブリッドな仕事を施した、ファーのカーテンが使われています。オーガンジーのリボンを間に挟み、驚く程の 軽さなのに迫力のボリューム感です。これ、触っといて下さいね。この先貴方の人生で二度と直接フェンディのファーに触れないかもしれないから!!!
会場の監修を行ったのはイタリア人美術史家、キュレーターのエマニュエラ・ノビーレ・ミーノ(EMANUELA NOBILE MINO)氏。イタリア人ならでは美意識の高い演出で、ドラマティックでラグジュアリーな空間ですね。とにかく暗め設定された会場が良いですね。日本だと 足元が安定しないからとかで、明るくしちゃってシラけたムードで作品に感動出来ない展覧会が多いですね。美術館は安心して歩く所ではなく、感動しに行く 所。こういうプレゼンテーションは実に素晴らしく、日本の美術館もそうなって行って欲しいですね。
こちらの会場には、周りに飾られた絵画のような生地スワッチと、タイムカプセルのようなモジュラーに入った30点の、このブランドの偉大な仕事を代表す る作品で彩られます。それぞれの作品とスワッチはリンクしていて、この作品にどんなテクニックが使われているかを知る事が出来ます。
その中から気になった作品をいくつかご紹介しますね。こちらは1971-72年に発表された、『マッチ-ミスマッチ・コレクション』の作品です。今回の ポスター等のメインビジュアルにも使われているスワッチです。スカングロー・ミンク、スカングローブラック・ミンクが使われています。
左上半分のヘリンボーンの模様に見えるこの部分ですが、フェンディでは毛皮を細かくカットし、もう一度繋げるこのアイレット加工が使われています。 毛皮 は動物性のマテリアルなので、部位によって毛皮のクオリティや毛の流れ等が違います。一度カットしリボン状にする事で、劣化した分等を取り除き、全体的な フラットな生地のようなマテリアルに仕上げる作業です。にしても、既に服にする前の作業自体が芸術的です。
そして、形になったのが、こちら。アイレット加工によりより画一化されたミンクは、縦と斜めのストライプを表現するのに最適な素材となり、強度も増すた めに安定した仕上がりになります。カール・ラガーフェルデザインによる、グラフィカルでコンテンポラリーな作品で、今見ても新鮮ですね。
でも、これを私が生まれた1971年に既に発表されていたなんて。。。恐るべし、フェンディ、、、そして恐るべしカール・ラガーフェルド。。
1988-89 F+W 『Waves 波』というタイトルの付いたこちらのケープは、サークル加工されたインサーションをチュールにはめ込んだテクニックが使われています。ブラウンのモールは 土台のレザー部分もピンキングに細かくカットされ、モールの重さとチュールの軽さのコントラストがなんとも美しい作品です。
会場の壁面にはこんな感じで生地のスワッチや、 タッチパネル式のモニターも用意されていましたね。モニターでは作品を360度で見れたり、より詳しい説明を楽しむが出来ましたよ。
2000-2001 F+Wに発表された、一見プリントに見えるこちらのコートは『Inlays インレイ(はめ込み模様、象眼細工)』というタイトルが付いています。つまり、これ、全て切り替えにより模様を出しています。マルチカラーのミンクを 1cm程にカットし、間にブラックミンクをはめ込みます。良く見るとボディ部分にも複雑なカッティングが施されていますが、最高のテクニックでまるで一枚 の生地のように仕上げてますね。
かつて、行われていた自社のアーカイブスの中から、現在のアトリエスタッフ達がこのテクニックを研究し、オマージュとして発表されました。同じシーズンにはこのインレイを使ったバゲッド等も登場して可愛かったですね。
こちらも、2000-01 F+Wのコレクションから。同じくインレイのテクニックを使い、こんなジオメトリックでポップアートのようなコートも登場しました。一つ一つ細かく仕事を 見て行くと、かなり小さなパーツで構成され、切り替えれた場所をよりクリアーに見せる為に、敢えてマルチカラーのミンクの毛がカットされていたりと斬新なテクニックが用いられます。
60’sムードを漂わせ、フレアーの入ったAラインが可愛らしいですね。
作品はそれぞれに下に鏡が備え付けてあります。フェンディのファーアイテムは基本的にリバーシブルです。まず、重くなりがちなファーを出来るだけ軽く仕立てる事が出来て、裏地を付ける事による皮革素材と生地のズレも解消します。メンテナンスも行いやすいという効果もありますが、全ては裏側の処理も美しいアトリエの仕事があるからなんですね。会場に行ったら、裏側も是非ご覧下さいね。
2013 S+S、今シーズンのコレクションからも最新のファーアイテムを間近で見る事が出来ます。『Big Bang』と名付けられた今回の作品は、まさにビック・バンをイメージさせる爆発したようなモチーフが登場します。デザインだけではなく、テクニック的に もビッグ・バンを起していて、ファーの技術において、さらに挑戦と革新が見れる秀作揃いです。
一番上のプリントが加工されている部分は、ショートヘアーのカーフにシルクスクリーンのプリントが美しく施され、鮮明です。二つ目のパーツはミンクで、 マルチカラーで作り上げたブレードをさらにパッチワークした気の遠くなるような作業が施されます。しかも、上のカーフ部分と見事に柄を合わせています。
その下のブロックはフォックスで、やはりパッチワークでカラフルなテクスチャーを作り、こんな動物本当にいるの?って不思議なワイルド感を表現しています。
こちらは実物の作品も、そしてより仕事を理解出来るスワッチも会場に用意してありますので、見比べながらそのため息の出るような仕事をご覧下さい。
続いてはファーアトリエというタイトルの展示室です。まさにフェンディの神髄が伺える、緻密で芸術的な技術を理解する事が出来ます。会場にはファーアイ テムを作る上に使われた歴代のスワッチや、パターン、フィッティングに使われたトワル(シーチング)も綺麗に保存され、まるでモダンアートのようです。
トワルやパターンは服作り関わる人間にとってはとても身近なもので、それを見てるだけで、作業した人の性格や印象迄伺えます。ここに展示されているそれらは、とにかく美しかったですね。作業工程の途中からその美意識が溢れ出しているようです。
会場の中央には加工台が用意され、フェンディのアトリエから熟練した職人が来日して、デザインから始まり、縫製を施す前に行われる様々な技術、そして作 品へと繋がって行くさまざまな流れを細かく説明してくれます。私が行ったときは右側に居るイケメン君がレクチャーしてくれました。
かつてフェンディでは、元々アトリエにいる職人の息子や親戚といった、深い関係性のある若者がアトリエに入り、親父の背中を見て仕事を覚えて育って来た そうですが、最近では世界的ファッションブランドとしてデザイナーになりたくてアトリエに入る人が多く、イメージと違ったりして辞める子も多いそうです。 それだけフェンディの仕事は大変で、根気と長い修練が必要なのです。
アトリエで認められる程のテクニックを身につけた職人達に、デザイナー、カール・ラガーフェルドはとてもフランクです。長い年月をかけて彼らの間の関係 はとてもフラットで、カールのデザインを具現化するのはもちろんの事、アトリエから出される様々なアイディアもどんどん取り入れられ、コレクションが作られます。
認めた職人はまるで絵を描くよう作品を制作し、どんどん新しい技術を生み出しその為に努力をします。彼らは成長し、やがて次の世代の若者達に感動を与え、このメゾンは続いて行くんですね。
『カール・ラガーフェルドのような大きなジーニャスですはないけど、アトリエには小さなジーニャスが沢山居ます。毛皮に線を引くだけのジーニャスも入れ ば、カットするだけのジーニャスも居ます。フェンディのアトリエはそんな沢山のジーニャス達が日々クリエイションを行う場です。』と、イケメン君が語って いた言葉が印象的でしたね。あっ、イケメン君、日本語ベラベラなんで安心していろいろ質問してみて下さいね。
さて、そんなゴージャスでラグジュアリーなフェンディの世界を、作品とその仕事から感じ取る事が出来る、まさに芸術的な展覧会でしたね。まずは見て下さい、特にファッションに関わる仕事をしている人や、ファッションを勉強している学生達は必須です。こんな素晴らしい展覧会、今後いつ開催されるか解りませんし、再び見る為にイタリアまで行かないといけなるかもしれませんよ。ほんと来週4/29(日、 祝)で終わってしますので、出来るだけ早く行く事をオススメします。週末になると凄い人だろうし、平日の午前中等に行くのが良いのではないでしょうか?学 校や会社をサボってでもね。。。。www
東京に多すぎるほどある美術館の皆さん。。。ルノワールや、エンブラントの駄作をメインに展覧会企画するんだったら、こんな素晴らしい小さなジーニャス達の芸術的な仕事を紹介するような、有意義な企画をどんどんやって頂きたいものですね。
FENDI – UN ART AUTRE
Another Kind of Art, Creation and Innovation in Craftsmanship
-フェンディ もうひとつのアート、クリエイションとイノベーションの軌跡 –
2013年4月3日(水)~4月29日(月・祝)
東京藝術大学大学美術館 展示室3・4 (〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8)
JR上野駅公園口、東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分
京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より15分
10:00~17:00 (入館は閉館の30分前まで) 月曜日休館 (4月29日は開館)
03–5777-8600(ハローダイヤル)
http://www.fendi.com/jp/furexhibition
さて、上野の美術館に寄ったら、帰りは甘味処の『みはし』へ。これ、私の中ではかなり定番なルートで、時間がなくてここに寄れないと、なんか腑に落ちな いですね。。。週末はここも激込みなんで、平日行かれる事をオススメします。学校や会社をサボってでもね。。。。しつこい?www
頂いた、白玉クリームあんみつ。久しぶりの至福の時間を過ごしました。
私が見た2012-14 F+W COLLECTIONの作品も会場で見る事が出来ます。東京でのプレゼンテーションの模様はこちら からどうぞ。
FENDIのサイトへはこちら からどうぞ。
今回のリポートしたFENDIの素敵なお話も掲載されている私の初の著書、『ブランドパスポート』は、現在絶賛発売中です。バゲッドのお話や、スクリーンモードにおけるフェンディのお話等も楽しめますよ。
アマゾンでのお買い上げはこちらからどうそ。
産業編集センターへはこちら からどうぞ。
facebookにファンページを作りました。
アカウントお持ちの方はこちら からどうぞ。こちらで掲載していない画像等もUPしています。『イイね!』もよろしくお願いします。
ダイコ★ブログへは、こちらからどうぞ。