松尾貴史と下北沢をくねくねしました
東京やその近郊の街を歩きに歩いた松尾貴史が、ホームである下北沢で散歩の極意(!?)と、下北沢のおすすめスポットを教えてくれた。
下北沢におけるシンボリックな存在、本多劇場の前にて
──今日は松尾さんと一緒に下北沢をくねくねします。松尾さんには東京の街歩きエッセイ『東京くねくね』という著書がありますが、どうして“くねくね”なんでしょうか。“ブラブラ”などではなく。
「くねくねというのは、様子全体を客観視したり、俯瞰で見た時に、あ、くねくねしてるねというふうに使いますよね。自分のことをくねくねということはあまりないから、ちょっと一つ視点を移動して、斜めに見てる感じの表現かな。ブラブラというほど優雅じゃないってことなんですよね」
──普段からよく散歩しますか? そこに松尾さん流のルールがあるんでしょうか。
「時間があったらすぐしますね。ルールはなくて、無計画です。特に地方で仕事をする時は、時間を作って行き当たりばったり、できるだけやりたいと思ってます」
──散歩ができない人もいますよね。目的もなく歩くなんて時間の無駄だと思う人。
「利益があるかないかで自分の行動を制限してしまうという…強迫観念なんですよね。自分の感性や情緒、あとはくつろぐことに価値があると気がついてない、すごくかわいそうな人だと思いますね」
──散歩の価値ってなんでしょう。
「いろんな利点があるんでしょうけど、そういうことに何も気づけてない人はかわいそうだなあと思いますね。でも、もともと何も目論んでないから散歩がある。そこに目的があったら散歩じゃなくなるから。楽しくなきゃ楽しめばいいだけのことで」
──とはいえ、散歩している中で、この瞬間が一番充実してるなという瞬間はありますか?
「う〜ん……、お金を拾った時とかではなく?」
──(笑)疲れた後のビールかもしれないですね。
「あ〜、それもいいね。あと、自分好みのペットを連れた人に会うとか」
──どっちが好みなんでしょう?ペットですか?
「ペット、ペット。そうか、人もいいね。そっちもいいけど、動物を自分で飼おうと思うと、手間とか責任とか、不自由があるでしょ。だから散歩するときにそういうのを愛でることができるのは、美味しいところだけいただいて、責任を放棄できる…。自分の好きな雰囲気の犬を連れてる人に会うと、それだけで得ですよね。三軒茶屋あたりだと、ミニホースに会うこともありますよ」
──看板でもサインでも、ちょっと変わったものを見つけるのが上手ですよね。
「書き留める価値のないようなものが好きです。見つけようと思って見つけてるわけじゃないんですけどね」
Photos:Kiichi Fukuda
Interview&Text:Sayaka Ito