片山正通の秘蔵モノ・コレクション公開
書籍からアート作品まで、インテリアデザイナー 片山正通のコレクションを拝見しにオフィス訪問! 収集のきっかけからアートへの思い、ショッピングの心構えまで話を聞いた。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2017年5月号掲載)
初めて作品を購入したコンセプチュアルアートで、親交もあるライアン・ガンダーの作品。<左から>『Memorandum JB CH AG (Brother)-(Alchemy Box #10.1)』『Memorandum JB CH AG (Sister)-(Alchemy Box #10.2)』(ともに2008年)。
──欲しい理由が自分でも謎のまま、購入することもあるのでしょうか。
「もちろん。河原温は生前、あるコレクターに『自分がわからないと思うものを買え。もしわかってしまったら、君はその作品の価値を有してしまっている。でもわからないものは、これからその価値を見つけていくことができるから』と言ったそうですが、同じことは人生に対してもいえますよね。人との会話にしても、言葉は本心と同じとは限らない。そういう世の中の様相を、アートは顕著に見せてくれるんです。ただアートに限らず、ものに対する僕の好みは少し変わっているかもしれない。人によってはヘビーだったりグロテスクだったりするものの中に、美しさを見いだすことがあるように思います。ものを見ていると『買ってくれ』という声が聞こえる気がして『よし、任せておけ!』って買ってしまう。スタッフにはいつも『どこに置くんですか!?』って怒られるんだけど(笑)」
<正面>写真家・松江泰治の映像作品4点を映し出すモニター。左上から時計回りに:『QUI 100520』(2010年)『DXB 112294』『ALPS 112682』『SCANDINAVIA 112477』(3点とも2012年) <その左下>大竹利絵子の木彫作品『なみだ池』(2012年) <右側の書棚>お宝もののアート書籍がずらり…!
2階の踊り場。エイドリアン・ゲーニーのペインティング『THE COLLECTOR 4』(2009年)
──かくもご自身の内面を構成してきたものたちを、今度は外に向けて展示構成する。大変なことです。
「こんな機会は最初で最後だと思うんですが……コレクションがどう見えるのかが自分にもわからない以上、他の人がどう感じるかをぜひ聞いてみたい。そのために自分の中の多重人格と向き合い、膨大なものを複数のカテゴリーに整理して、空間ごとに分けて展示しようと考えています。これが本当に大変な作業で、自分自身のカウンセリングみたいな感じ。そもそも人に見せるつもりも、どこに置くかも考えずに買ってきましたから。買いはしたものの、倉庫に置いたままの作品もたくさんあって、久々にまた会えるのも展示の楽しみの一つですね」
Photos : Yoshimitsu Umekawa
Interview & Text : Keita Fukasawa