大仏とお別れしたら、
少し奥まった道へ。
地図と感覚を頼りに、山道へ向かいます。
霧で濡れた初夏の草は、
湿り気を帯びて生き生きした緑。
深呼吸をすると
緑から生命力を分けてもらえるような気持ちに…。
だけど本番はここではありません。
「ここは今どうなってこうなってんだ!!」というような廃墟気味の建物を見つけても、
めげずに歩き続けてください。
すると現れるのが、
「心経簡林」、通称「ハートスートラ」です。
香港屈指の”スピリチュアルスポット”。
10メートルほどの巨大な木の柱が立ち並ぶ、
それだけでは表現しきれない圧倒的な存在感。
2002年、経済の低迷で弱っていた香港に、
SARSの流行が追い打ちをかけた。
そんなどん底から香港を救うため風水のチカラ全てをかけて作られたハートスートラは
香港の救世主なのです。
柱の並びは無限大(∞)の形になっており、「無限」を意味する。
38本ある柱にはひとつひとつ般若心経の1節が彫られているが
たった1本、何も書かれていない柱がある。
その柱が意味するものは「空」。
見晴らしのよい小高い山の中腹で、
「無限」と「空」をもって悪い気を払うようにと、
人々の希望を背負って建てられた柱たち。
わたしがハートスートラへ一歩足を踏み入れると、
これまで弱々しく降ったりやんだりしていた雨が途端に強くなった。
ぽつぽつと体に雨を浴びながら、
わたしは走りだす。
その柱に刻まれた般若心経を、
いきなり降り出した雨と濃霧のなかでたったひとりで触れる。
とても何か感じずにはいられない。
上から見渡す景色も、
下から見上げる景色も。
雨のなかとは思えない爽快さがあった。
それは、ここに悪い気を弾き飛ばしてくれる
「無限」と「空」があるから…。
わたしのなかにある悪い気も、
どこかへ飛んで行ってしまったのかもしれない。
なんて…
思ってしまいますよ。行ったら。
行ったらきっとあなたもなりますよポエマーに!!!
おしまい。