「淡いピンク色が足元から靄がけていく真っ青なブルーの春空」
そんな春らしいコントラストの風景になかなか出会うことのできなかった今年の春だけど、
曇り空、グレートーンのニュートラルな空色の方が実はこの曖昧なピンク色はよく見えたりする。
グレー(灰色)とサクラ色。どちらも「曖昧」な色。
似てないのに似てる色。でも、やっぱり似てない色。
「曖昧さ」は日本人独特の美意識。
しかし、「曖昧さ」の意味するところはがまさに曖昧で、なんとも捉えどころのない言葉である。
「曖昧:はっきりしないこと」と辞書には書かれているけど、要は「境界を(意図的に)ぼかす」ことだと思う。
人間の主観や恣意性が含まれたものがグレーで、そうではないものがサクラなのではないだろうか?
ぼかす行為がグレー。ぼけた状態がサクラみたいなイメージ。
ネガティブなグレーとポジティブなサクラ。
一言に「曖昧」と言っても全く反対のニュアンスを含む言葉。日本語にはそういう言葉が本当に多い。
殊にデザインの世界では、トレンドとして「曖昧」というコピーやキーワードが踊る昨今。
確かに「曖昧」なデザインは日本人デザイナーが発信してきた新しい価値観であるし、
カワイイパラダイムデザイン研究(真壁 智治氏著)では、そんな日本のデザインが分かりやすくまとめられている。
しかし、「曖昧」という言葉の便利さに甘えていてはいけない。
曖昧で、儚くて、だから桜は美しい。
命ある生き物や、絶え間なく移ろう水面と相まっていっそう美しく見える。
来年はどんな心境で、どんなことを考えながら桜を見るのだろう。