Amsterdam3日目続き。
3日目になると、トラムも乗りこなせるようになり、なんとなく道も分かるようになってきたり、
何よりもこの町の「時間感覚」が分かるようになってきます。
伝統的な建築の中でも、あの切妻屋根のカナルハウスとはまた違った表情の建物があったり、
様々な住宅のスタイルからも、作られた時代背景を伺うことができます。
共通するのは、開口部(窓)の割合が多いということでしょうか。
すごいマニアックな視点かもしれませんが、窓の「サッシ」のヴァリエーションがすごい豊か。
通りに直に面している所も大きく開口部が設けられていて、インテリア丸見え笑
見て、見られ、見せて?
オランダのデザイン感度の高さはこの住宅環境のいい緊張感に依るものかも…
なんて考えながら訪れた2つの写真を専門にするミュージアムについて今回はレポートしたいと思います。
1つ目はfoam museum。
雑誌のfoamはご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか?
私が訪れた時は、中国の作家の企画展など3つの企画展が行われていました。
最も印象的だったのは、この”Magnum Contact Sheets”
「コンタクト・シート」とは、フォトグラファーが新聞や雑誌に掲載する写真を選んでもらうために送る
写真一覧のことで、最近だとphotoshopでA4用紙に1クリック出力みたいな感じですが、
フィルムの時代はネガが並んでいるようなシート。
写真は「一瞬の一部」でしかないという事実。
そして、それを「選ぶ」という作業、「編集」によって同じものがまったく違うものに見えてしまうこと。
そんな当たり前のことを深く考えさせられる展示でした。
instagramでフレーミングして、フィルターと簡単なスワイプで編集したもので作られる今のニュース。
写真家と素人の違いは、技術やセンスという違い、大判にした時に耐え得るかということだけではなくて、
「選ばれなかったもの」の価値にこそあるのではないか。
選ばれなかったもの、つまりその周辺にどれだけストーリーがあるかということ。
From The Sound of Two Songs, Warsaw, February 2005 © Mark Power
例えばこの犬の写真。(ダルメシアンが好きだから選んだでしょとは言わないで笑)
長時間露光で撮影された一枚。長時間露光ということは、対象が動くとブレてしまうということ。
つまり、この犬は暫くじっとここに居たという「時間」をこの写真から読み解くことができるのです。
コンタクト・シートの他の写真にはどこにも犬の姿は無く、他のものが映っていても通り過ぎているだけ。
この一枚には「瞬間」や「動き」ではなくて、「時間」や「静止」を記録されているのです。
それにしても、いったい何故このダルメシアンはここに留まっていたのかとても気になる。
目線の先に何かあったのか、何かを待っていたのか…まあ何も考えてなかった可能性が高そうですけどね笑
アーティストPaul Bogaers (Tilburg, 1961)の 展示”My Life in the Bush of Ghosts” も行われていました。
写真のコラージュを彫刻に施していく作風が特徴で、2Dの写真と3Dの彫刻の融合が面白い。
彼の作品にはどこかプリミティブな印象があり、呪術的にも解釈できる独特な雰囲気は中毒性がありそう。
パステルグリーンにマーブルという爽やかな空間と、ダークで奇妙な彼の作品のコントラストがオランダらしい。
屋根裏部屋みたいな空間はLibrary&Shopになっていました。
吹き抜けの階段周りをぐるっと一周カウンターにして、本を置いてある感じもよかった。
2つ目はアムステルダムで最初にできた写真美術館というHUIS MARSEILLE。
現在は別館として機能している1つの小さな家からスタートしたこの美術館。
今はこの建物全体14室にも及ぶ展示空間があるものの、とにかく「ゆったり」見ることができるのがいい。
それは、ここがあまり知られていないのか、観光客でごった返していなかったからというのもあるけど、
いわゆるホワイトキューブ/大空間で、詰め込まれるように次々と作品が展開されていく感じとは対照的に、
自分のペースで1部屋ずつ巡りながら、心静かに写真との対話を楽しめるスケール感がよかった。
美術館では作品保護の為に窓が無いorあっても一部だけってことが多いのですが、
ここはアムステルダムのカナルハウスそのまま利用しているのもあって、窓がたくさんというのもとても気持ちいい。
“Emmy’s world” by Hanne van der Woude
若手写真家であるHanneが記録した写真や映像の展示は本当に美しかった。
人間の「生」と「生活」とそこから滲み出す美しさに見入ってしまった。
被写体となっているのは3人の老人。アーティストのEmmyという老婦人と、彼女の夫と弟。
彼らの3人の生活とフランスの山への小旅行の記録。
しかし、夫と弟は病に蝕まれ命の灯火が消えようとしている・・・
写真に映るモノからもそれは生々しく伝わってくるし、辛さ・疲れ・諦めといった表情に心が締め付けられる写真も多い。
でも、それよりも夫婦のさりげない愛情とか、一つ一つはとてもささやかなことなのだけど、生きることへの喜びとか。
おばあちゃんとかおじいちゃんって生活の知恵とか自然の遊び方とか教えてくれる存在。
少なくとも私にとってはそういう存在なのだけど、そんな派手さはないけど生きる「楽しさ」が写真から溢れていた。
そして、その優しい表情に「孫」ポジションの私は思わず顔が綻んでしまうのだった。
ほら見て!このおじいちゃんたちの笑顔!!
写真家は、写真という一つの媒体を通して何をどう「伝える」のか。
—“visual language”
そこには言葉は必要が無いかもしれない。
ビジュアルの持つパワーに圧倒され尽くしたアムステルダムの2つの美術館レポートでした。
See you next time…..