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アスリート、母として、一人の女性として。安藤美姫が語る、今の想い
安藤美姫が語る、今の想い
世界初の4回転を成功させたのは15歳のとき。当時と変わらないスケートへの情熱と愛で、母として臨んだ現役最後の演技でも、3回転 – 3回転の連続ジャンプを無心に飛び、氷上を舞った安藤美姫の姿は、見る者に勇気と感動を与えた。
「結果よりもただ自分らしくいたい。そういうタイプのスケーターなんですよね、私は」。安藤美姫はそう言って、私たちに美しい笑顔を見せてくれた。昨年12月、3年ぶりに出場を果たしたソチ五輪代表最終選考会となる全日本フィギュアスケート選手権で見せた『マイ・ウェイ』の演技は、彼女の生き方そのものを映し出した。情熱的に真摯に、柔らかに、艶っぽく、大胆に軽やかに、女性らしく…氷上を舞う安藤美姫は、燐光を発するごとく煌めく光に包まれていた。なにも語らなくても、その演技を見れば、彼女がどれだけスケートを愛しているかを知ることができる。そんな生き方ができる安藤美姫に心を揺さぶられ、涙を流した人も多いはず。翌日、思い入れのあった『火の鳥』の演技を最後に、現役引退を表明。アスリートとして表現者として、勝つこと以上に、「自分というものを持つこと」を常に追求し、17年間の競技生活に幕を下ろした。現在26歳。娘を出産し、母として、アスリートとして新しい一歩を踏み出した。「そもそも、決断のその瞬間には正解はないと思うんです。それを正解にしていけばいいだけ。残念な結果に終わったとしてもそこから学びもあるし、自分が挑戦したことは大きな力になると思うから」。こんなふうに話せる彼女は正真正銘、唯一無二のトップアスリート。光り輝くその魅力に、私たちは真っすぐに惹き込まれる。
Photos:Kisimari Styling:Makiko Miura Hair:Dai Michishita Makeup:Nao Suzuki Edit & Text:Hisako Yamazaki