時代やジャンルを超えた“窓”から見えてくるもの。「窓展」@東京国立近代美術館
“窓”を切り口に、マティスやデュシャンなど20世紀の巨匠からリヒターやティルマンスといった現代美術、ル・コルビュジエやカーンら建築家の作品まで紹介する「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」が東京国立近代美術館にて開催中。編集者・ライターの上條 桂子がその見どころをレポートする。(「ヌメロ・トウキョウ」2020年1・2月合併号掲載)
窓が隔てるものと繋ぐもの
少し視点をズラしてものを見ることで、新たな繋がりが次々と見えてくる。そんな面白さがあった。この展覧会は「窓は文明であり、文化である」という思想で活動を続ける窓研究所の10年におよぶ「窓学」の蓄積をもとに、東京国立近代美術館がキュレーションした展覧会だ。
共通するキーワードは「窓」。その一点なのだが、単に同じモチーフが登場するという簡単な話ではない。
展覧会は、バスター・キートンの背後から大きな壁が倒れてきて彼の体が窓を打ち破ってひょっこりと現れる、あの有名な映像から始まる。そして、横溝静が手紙で日時を指定して窓辺に見知らぬ人を立たせて撮影するなんともロマンティックな〈Stranger〉シリーズが続く。窓は家の内と外を隔てるものだけれど、ガラスが透過していることでこんな親密な邂逅が生まれる。何度見てもキュンとくる作品だ。
そして美術と建築、技術の視点で綴る圧巻の年表、絵画に描かれた窓、アジェが撮影したショーウィンドウ、奈良原一高が撮った男子修道院と女子刑務所の窓、デュシャンの真っ黒な窓、額縁という想像への窓、世界と繋がるPCのウィンドウ。窓の機能を排除した美術作品もあれば、窓を装置として用いたカメラ・オブスクラの作品もあり。あれも窓だし、これも窓。展示が進むに従って、だんだんと心の窓が開いていく。
内と外を隔てる「窓」が、時代やジャンルを超え新たな関係を繋げる装置となる。キルヒナーの絵画とティルマンスの写真の並びに大興奮したのだが、その二つの作品が同じ空間に居られるのも窓のおかげだ。「窓」という切り口だけで、こんなにも豊かな世界が広がるのかとクラクラしながら美術館を後にした。
窓展:窓をめぐるアートと建築の旅
会場/東京国立近代美術館
会期/開催中〜2020年2月2日(日)
住所/東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間/10:00〜17:00(金・土〜20:00)
※入館は閉館30分前まで。
休館日/月 ※1月13日(月・祝)は開館し、14日(火)は休館
TEL/03-5777-8600(ハローダイヤル)
www.momat.go.jp/