ソムリエ店長がそっと教える「赤ワイン」のちょっとマニアックな基本 | Numero TOKYO
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ソムリエ店長がそっと教える「赤ワイン」のちょっとマニアックな基本

こんにちは! ワインブロガーのヒマワインです。ワインには大きく分けて赤ワインと白ワインがありますが、寒い季節にお肉の煮込み料理と合わせたり、ジビエに合わせたい料理といえば、なんといっても赤ワインです。

赤ワインは渋味や酸味があってちょっと苦手……という方も多いかもしれませんが、選び方を覚えれば料理の味を何倍にも引き立ててくれる心強い味方になってくるのもまた赤ワイン!

とはいえ赤ワインと一言でいえど、スーパーにいけば棚一面にたくさんの種類があって、なかなか「これ!」っていうのを選べないですよね。そこで、東京・恵比寿のワインショップ、ワインマーケット・パーティの沼田英之店長に、赤ワインを選ぶ際のコツを聞いてきましたよ〜。

私と沼田店長の対談形式でお伝えします!

▶︎「ちょっとマニアックな基本」白ワイン編はこちら
▶︎「ちょっとマニアックな基本」スパークリングワイン編はこちら

【目次】
赤ワインの基本とは?
基本の赤ワイン品種:カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー
基本の赤ワイン品種:ピノ・ノワール
基本の赤ワイン品種:シラー
基本の4品種を抑えたら! 赤ワインちょっとマニアックな3品種
ちょっとマニアックな赤ワイン品種:サンジョヴェーゼ
ちょっとマニアックな赤ワイン品種:ネッビオーロ
ちょっとマニアックな赤ワイン品種:ジンファンデル
赤ワインを楽しもう!

赤ワインの基本とは?

ヒマワイン(以下、ヒマ)「今回は『赤ワインのちょっとマニアックな基本』がテーマです」

沼田店長(以下、店長)「基本中の基本を押さえつつ、少し深堀りした話もしましょうということですね」

ヒマ「はい。赤ワインは独特な渋みや酸味があることから、苦手と感じる方も多くいますよね。なので、飲みやすい品種なども教えてほしいです!」

店長「承知しました。白ワインにも言えることですが、赤ワインも基本となる品種とその特徴を頭の片隅に置いておくだけでグッと選びやすくなったり、好みの味を見つけやすくなります。そのあたりをお話したいと思います」

ヒマ「基本がわかればスーパーでワインを買ったり、ビストロでグラスワインを注文するときに選びやすくなりますもんね。よろしくお願いします!」

基本の赤ワイン品種:カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー

店長「ではまず、基本の4品種を押さえるところからはじめましょうか。最初にご紹介したいのが、『カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)』と『メルロー(Merlot)』です」

ヒマ「世界の赤ワイン用ブドウの作付面積1位、2位コンビですね。どちらもフランスのボルドーでよく使われる印象の品種です」

店長「そうですね。どちらも濃い赤ワインの代名詞的存在。カベルネが男性的、メルローが女性的と言われたりもするのですが、基本的には似た品種です。カベルネ・ソーヴィニヨンのほうはアメリカのカリフォルニアを代表する品種でもあります」

ヒマ「カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンは1,000円から2,000円前後のワインでもしっかりとした果実味が感じられておいしいですよね」

店長「ボルドーのワインはラベルに『カベルネ・ソーヴィニヨン』とか『メルロー』とか書いていないケースが多いんですが、カリフォルニアの場合は大概品種名が書いてある。なので、ワインショップで探す際はカリフォルニアがオススメ」

ヒマ「用意していただいたこの『アナベラ ナパ・ヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン』はどんなワインですか?」

アナベラ ナパ・ヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 3,600円
アナベラ ナパ・ヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 3,600円

店長「ワインに興味のない方も、『ナパ・ヴァレー』という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。ワインの場合、たとえば『日本』より『東京』、『東京』より『恵比寿』といったように、産地の表示が狭まるほど希少価値が増し、一般に味わいも良くなっていくのですが、ナパはそのような狭い産地を指す言葉。それがラベルに表示されていることは品質の証なんです。ちょっと飲んでみてください」

ヒマ「うっわ、おいしい! 果実を一煮立ちさせたような甘みとフレッシュな酸味が同居していて、とても飲みやすいです」

店長「カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローの味の特徴は、プルーンやカシス、プラム、イチジクといった感じ。ぞの特徴がよく出ていますよね。ギリギリ4,000円を切る価格で決して安くはないけれど、“ナパ”と書いてあることで手土産やプレゼントにもすごく喜ばれます」

ヒマ「一方のメルローはボルドーのものですね」

エール・バイ・クリネ 2014 2,000円
エール・バイ・クリネ 2014 2,000円

店長「ボルドーでは晩熟タイプのカベルネ・ソーヴィニヨンと早熟なメルローをブレンドすることで品質を安定させるのが一般的ですが、これはメルローだけを100%使っています。そのぶんだけメルローの良いところがしっかりと出ているワインです」

ヒマ「カベルネ・ソーヴィニヨンは少し草とか野菜っぽいニュアンスがあるけれど、メルローにはそれがなくて、とても親しみやすいと感じています。合わせる料理はやっぱりお肉ですかね」

店長「そうですね、後で紹介する『シラー』に合わせたいのがギザギザのついたナイフで食べる豪快な肉料理としたら、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローは滑らかなナイフで食べるクラシックなフレンチといったイメージ。とはいえそう難しく考えず、肉料理のときは気軽に合わせてみてください」

ヒマ「カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローとボトルに書かれているワインは大抵果実味が強く飲みやすい。とくにカリフォルニアなら間違いなし。それで赤ワインの味わいに慣れてきたら、ボルドーに挑戦してみる……そんな感じですかね」

店長「それで間違いありません!」

基本の赤ワイン品種:ピノ・ノワール

ヒマ「続いては『ピノ・ノワール』ですね。かの有名な“ロマネ・コンティ”もこのブドウから造られています。世界中で大人気の品種で、もちろん私も大好物です」

店長「カベルネやメルローが黒や紫色の果実だとしたら、ピノ・ノワールはサクランボ、キイチゴ、ラズベリーといった赤っぽい果実のイメージですね。原産はフランスのブルゴーニュです」

ヒマ「この“ブルピノ”がとにかく世界中で大人気なんですよね。チャーミングな果実味に豊かな酸、それでいてズシッとした渋みや奥行きも兼ね備えていて、唯一無二の魅力がある」

店長「なのですが、困ったことにここ2、3年ブルゴーニュのピノ・ノワールは価格高騰が著しいんですよ」

ヒマ「そうなんですよねえ。すっかり高嶺の花になりつつあります」

店長「そのため『ブルゴーニュのピノ・ノワールがおいしいらしい!』という話を耳にして、ワインショップで5,000円も払って買ったのに飲んでみたらイマイチ微妙……なんてことが起こり得ちゃう」

ヒマ「あってはならないことですよ、それは……!」

店長「なので、今オススメしたいのは南アフリカやニュージーランドのピノ・ノワール。今回は南アのピノノワールをご用意しました」

ジュリアン・スカール マウンテン・ヴィンヤード ピノ・ノワール 2,620円
ジュリアン・スカール マウンテン・ヴィンヤード ピノ・ノワール 2,620円

ヒマ「南アフリカと聞くと意外に感じる方も多いかもしれませんが、ワイン界隈ではコスパ産地としてすっかりおなじみ。南アなら2,000円台で十分においしいものが選べますよね」

店長「このジュリアン・スカールはフランスの生産者なのですが、北半球のフランスで収穫を終えたあと、次の季節は南半球の南アフリカで収穫を行うという旅する生産者」

ヒマ「北半球と南半球を股にかけた二毛作をしているわけですね」

店長「やはりフランスの方なので、フランスを思わせるグリーンなニュアンスに酸味も乗った、素晴らしいピノ・ノワールを造ります。鶏肉をグリルして軽く塩胡椒し、仕上げに梅肉を乗せてあげると相性がバッチリになりますよ」

ヒマ「ブルゴーニュというと、牛肉の煮込みとか鶏肉の煮込みなんかと合わせるイメージがありますが、梅肉も合いそうですね〜」

店長「あと意外に合うのがお寿司です。お寿司にワインを合わせるなら白ワインと思われがちですが、ピノ・ノワールは実は合う。コハダやサンマなどの青魚、マグロにも合います。料理とワインのマリアージュとまではいかないかもしれないけれど、一度試していただきたい相性の良さがあります」

ヒマ「結婚まではいかないけど、付き合うまではいく、というわけですね…(笑)」

基本の赤ワイン品種:シラー

店長「基本中の基本品種、最後は『シラー』です。原産はフランスのローヌ地方」

ヒマ「シラーも大好きな品種です」

店長「濃いめの紫色が特徴で、色も味わいもカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローに近い。よく黒胡椒の香りが特徴だと言われるのですが、個人的にはラーメン屋さんに置いてあるギャバンのラーメン用胡椒の香りがすると思っています」

ヒマ「黒胡椒ではなくギャバンのラーメン用胡椒か……急に細かすぎる話になってきましたね」

店長「黒胡椒と白胡椒がミックスした香りなんです(笑)。少しスパイシーな香りがして、カシスやプルーン、そしてブルーベリーのような味わいがするのがシラー。ほんのちょっと生肉っぽい香りもします」

ヒマ「胡椒と生肉の香りのワインが果たしておいしいのだろうか? と思われるかもしれませんが、ちゃんとおいしいのでご安心いただきたいですね(笑)」

店長「肉と胡椒っぽいニュアンスがあるので、やっぱりそういった料理に合うんです」

ヒマ「普通のおかずのハンバーグとかでも、黒胡椒をガリガリかけてシラーと合わせたりするとおいしいんですよね」

店長「いいですね! 私がとくにオススメしたいのはジビエとのペアリングです」

ヒマ「ジビエ! 猪とか鹿とかですね。絶対合うでしょうそれは」

店長「タイムやセージ、ローズマリーなどの南フランスで採れるハーブの混ざり合った香りを「ガリーグ」と言いますが、ジビエにこのガリーグの感じが絡むと最高に合ってくると思います。ハーブを効かせた肉料理ならシラーで決まりです」

ヴィラール・ファイン・ワインズ シラー エクスプレッション・リザーヴ 2019 3,000円
ヴィラール・ファイン・ワインズ シラー エクスプレッション・リザーヴ 2019 3,000円

ヒマ「紹介してもらったワインはチリワインですね。これはどんなワインですか?」

店長「チリのカサブランカ・バレーという冷涼な地域で造られるワインですね。シラーは濃い品種なのですが、最近では涼しい産地で造られるケースが多く、よりエレガントな雰囲気があるんです」

ヒマ「クール・クライメット・シラーってやつですね。味の方向性がちょっとピノ・ノワールに近づいてくる。これまた大好物です」

基本の4品種を抑えたら! 赤ワインちょっとマニアックな3品種

ヒマ「カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、そしてシラー。これが基本の基本4品種ですね。一番黒っぽい果実のニュアンスがあるのがカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローで、一番赤っぽい果実のニュアンスがあるのがピノ・ノワール。黒果実のニュアンスにスパイスが加わったのがシラーという感じ」

店長「はい。この4品種と、その特徴をざっくり把握しておくだけでもレストランやスーパーで赤ワインを選べるようになると思います。そもそも覚えておきたい赤ワイン品種って全部で10くらいしかないんです。読者のみなさんにはすでにそのうち4つを覚えていただきましたので、ここからは次に重要と考えるちょっとマニアックな3種類を簡単にご紹介しましょう」

ヒマ「残り3つなんだろう、気になります」

店長「サンジョヴェーゼ、ネッビオーロ、そしてジンファンデルです」

ヒマ「なるほど…! 前のふたつは店長の専門であるイタリア品種ですね」

店長「趣味で選んだわけじゃないですからね(笑)」

ちょっとマニアックな赤ワイン品種:サンジョヴェーゼ

店長「まずサンジョヴェーゼですが、これはカベルネ・ソーヴィニヨンとピノ・ノワールのちょうど中間に位置する品種。黒系果実と赤系果実の中間のニュアンスがあるので、万能選手なんです」

レブーケ キャンティ・スーペリオーレ 2016 3,200円
レブーケ キャンティ・スーペリオーレ 2016 3,200円

ヒマ「カベルネほどの渋みがなくて、ピノほどの酸味もない、と」

店長「イタリア・トスカーナを代表する品種で『キアンティ』っていう言葉を耳にした方も多いと思いますが、そのキアンティに使われているのがこの品種。トマトをあまり効かせていないミートソース、それに少し土っぽいニュアンスもあるのでポルチーニ茸を使った料理とも相性抜群です」

ヒマ「ポルチーニのリゾットとキアンティとか、想像するだけでたまらない……!」

ちょっとマニアックな赤ワイン品種:ネッビオーロ

ヒマ「続いては同じくイタリアを代表する品種、ネッビオーロですね」

コーペラティヴァ・フラ・プロデュットーリ バローロ・リゼルヴァ・コルダーナ 3,620円
コーペラティヴァ・フラ・プロデュットーリ バローロ・リゼルヴァ・コルダーナ 3,620円

店長「はい、『バローロ』っていうワインの名前を聞いたことのある読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、ワインの王と呼ばれるバローロ、ワインの女王と呼ばれるバルバレスコというイタリアを代表するワインに使われるのがこのネッビオーロという品種」

ヒマ「ピノ・ノワールにちょっと似ているところのある品種ですよね」

店長「そうですね。ネッビオーロは少し赤茶けていて、ドライハーブのような香りが特徴。味わいはフルーツ感がありつつ、口をキュッとすぼませる強めの渋みがあります。これはイタリア北部のピエモンテ州がメインの産地。寒い土地で育てられる品種なので、牛肉の煮込みなんかと好相性。あとは八角(スターアニス)とも相性がいい」

ワインの王とも呼ばれるバローロはプレゼントにも
ワインの王とも呼ばれるバローロはプレゼントにも

ヒマ「八角っていうと中華のイメージがありますね。デパ地下で売ってる豚の角煮とか」

店長「それはナイスです。そして『バローロ』は有名なので、贈り物にもいいですね」

ちょっとマニアックな赤ワイン品種:ジンファンデル

ヒマ「ちょいマニアック品種、3品種目はジンファンデルですね。今度はアメリカ・カリフォルニアを代表する品種です」

アデュレーション ジンファンデル 2,000円
アデュレーション ジンファンデル 2,000円

店長「ドライイチジクのような味わい、ココナッツのような香り。フレッシュなフルーツというよりも、それを煮詰めたジャムのような味わいが特徴的なワインです」

ヒマ「“ジャミー”とか言われるやつですね。甘みが感じられて飲みやすいんだ、これが」

店長「その甘さがなんといっても肉に合う。牛肉とパプリカを串に刺して塩胡椒して焼いた、みたいな料理にはジンファンデルの出番です。あとはメキシコ料理とも好相性、ちょっと前はテリヤキバーガーとのペアリングが流行りました」

ヒマ「ジンファンデルの甘さとテリヤキソースはこりゃもう絶対合うやつですよ。あと、ジンファンデルって安くてもおいしいからBBQにも最適な気がします」

店長「間違いない。1,000円台でもハズレが少ないのがジンファンデルの大きな魅力と言えると思います」

赤ワインを楽しもう!

ヒマ「というわけで赤ワインの基本品種4種類とちょいマニアック品種3種類を教えてもらいました」

店長「はい。ほかにもスペインを代表する品種・テンプラニーリョ、ボジョレー・ヌーヴォーに使われるガメイ、日本独自の品種であるマスカット・ベーリーAなどありますが、まずは基本の4品種を覚え、続いてちょいマニアック3品種を覚えれば、赤ワイン選びはグッと楽しくなると思います」

ヒマ「カリフォルニア、チリ、南アフリカ、今回は登場しませんでしたがオーストラリアなどのワインは、ボトルにこれらの品種名が書いてあるので、そのあたりから選ぶのが良さそうですね」

店長「そうですね、そうして自分の好きな品種を見つけていただきたいですね」

ヒマ「『好きな品種ができる』はアイドルでいえば『推しメンができる』みたいなもの。いわば沼の入り口ですからね……! みなさんもぜひ『推し品種』見つけてみてください!」

ワインマーケット・パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜19:30
Tel/03-5424-2580
winemart.jp



Photos & Text: Hima_Wine

Profile

沼田英之Hideyuki Numata ソムリエ、1978年生まれ。ホテルやレストラン勤務後、イタリア・トスカーナに留学。帰国後、レストランにソムリエとして勤務し、その後フランスワイン専門店ラ・ヴィネに入社。現在は姉妹店である都内屈指の大型店、ワインマーケット・パーティの店長を務める。
ヒマワインHima_wine ワイン大好きワインブロガー。ブログ「ヒマだしワインのむ。」運営
https://himawine.hatenablog.com/
YouTube「Nagiさんと、ワインについてかんがえる。Channel」共同運営
https://www.youtube.com/@nagi-himawine
Twitter:@hima_wine

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