クリエイターを刺激するアートなリボン | Numero TOKYO
Culture / Feature

クリエイターを刺激するアートなリボン

インスピレーションの源であり、美しさや物語を描くためのモチーフであり。現代アートから建築、プロダクトに至るまで、さまざまに形を変えるリボン。表現も、込められる思いも多種多様。めくるめくリボン×クリエイティブの世界へようこそ!(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年11月号掲載)

Contemporary Art

Jeff Koons, Smooth Egg with Bow(Blue/Magenta), 1994-2009
mirror-polished stainless steel with transparent color coating 
83 1/2x76 5/8x62 inches 212.1x194.6x157.5cm 
© Jeff Koons Photo:Charles Tait Grave
Jeff Koons, Smooth Egg with Bow(Blue/Magenta), 1994-2009 mirror-polished stainless steel with transparent color coating 83 1/2x76 5/8x62 inches 212.1x194.6x157.5cm © Jeff Koons Photo:Charles Tait Grave

Jeff Koons
『Smooth Egg with Bow』

アメリカの名だたる現代美術アーティストの中から、ジェフ・クーンズの名を世界に最も知らしめたのは、90年代より制作を始めた『セレブレーション』シリーズだろう。バルーン・ドッグにバレンタイン・ハート、ダイヤモンドなど20以上もの異なる造形の彫刻と絵画からなるシリーズだ。本作『SmoothEggwithBow』も、その一つ。キャンディカラーで彩られた卵は、イースターエッグを想起させる。リボンを添えた卵に見えるのは、まさに華やぐお祝いの瞬間だ。


Jeff Koons ジェフ・クーンズ
1955年アメリカ生まれ。ポップカルチャーを主題とし、巨大な「バルーン・ドッグ」などキッチュなイメージを使った作品で知られる。美術の文脈とアメリカの大衆文化を結びつけ制作されるクーンズの作品は、アートオークションでの高額落札も度々話題に。

Exhibition ‘Ribbonesia FOREST’ KANAZ FOREST OF CREATION, The Art Core Museum-1, 2015 Photo:Kei Furuse/GAZE fotographica
Exhibition ‘Ribbonesia FOREST’ KANAZ FOREST OF CREATION, The Art Core Museum-1, 2015 Photo:Kei Furuse/GAZE fotographica

Ribbonesia
『Birth of Forest』(森の誕生)

リボンは多くの人にとって特別なものだ。とはいえささやかに華やぎを与える装飾品、というイメージもある。そんなリボンを主役に捉え、アート作品へと昇華するのがアートユニットのRIBBONESIAだ。はるか彼方の国の名のような「リボネシア」は、リボンを使ってものづくりをする人がいる架空の国というユニークな世界観から。その国に一歩踏み込むと、プレゼントのリボンをほどくときのような高揚感に包まれながら、リボンそのものがつくり出す美しさに見惚れてしまうだろう。


RIBBONESIA リボネシア
2010年、アーティストの前田麦とクリエイティブ・デイレクターの吉川徹で結成。展覧会での発表のほか、資生堂の広告やディスプレイに起用されるなど活動は多岐にわたる。独自でリボンを開発するなど、リボンの美へのあくなき探求が詰まっている。

Architecture

Photo: Nacasa & Partners Inc.
Photo: Nacasa & Partners Inc.

Hiroshi Nakamura
『Ribbon Chapel』
(ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道)

2本の階段がスパイラル状にチャペルを覆い、まるで寄り添い合うリボンのように設計されたベラビスタスパ&マリーナ尾道の『リボンチャペル』。この結婚式用の礼拝堂は、人生の軌跡を振り返るような経路そのものが空間だ。新郎新婦は別々に階段を上り、頂上で出会う。リボンが二人を強く結んでいくような建物になっている。


中村拓志 Hiroshi Nakamura
1974年東京生まれ。建築家、NAP建築設計事務所代表。自然現象や人々のふるまい、心の動きに寄り添う「微視的設計」で、街づくりから家具まで幅広く手掛ける。ZOZO本社屋(千葉、2020)や上勝町ゼロ・ウェイストセンター(徳島、2020)など多数。「2021年日本建築学会賞(作品)受賞」。

Photo:Takeru Kuroda
Photo:Takeru Kuroda

Jun Aoki, Tezzo Nishizawa
『Glass Ribbon』(京都市京セラ美術館)

公立美術館としては現存する日本最古の建築を誇り、改修工事を終えて生まれ変わった姿が話題となった京都市京セラ美術館。和洋折衷が織りなす帝冠様式の本館を活かすとともに、新たにモダンな空間が融合された。ファサードの『ガラス・リボン』は、建築の過去と未来と、美術館の内と外をつなぐような存在だ。


青木淳、西澤徹夫 Jun Aoki, Tezzo Nishizawa
ともに建築家。京都市京セラ美術館の共同リニューアル基本設計者として建築に携わる。青木淳は2019年より同館館長に就任。手掛けた建築に、BCS賞を受賞したルイ・ヴィトン表参道、青森県立美術館(青木)、八戸市新美術館(西澤)などがある。

Design Furniture

 

価格要見積もり/Pierre Paulin(メトロクス)
価格要見積もり/Pierre Paulin(メトロクス)

Pierre Paulin
『Ribbon Chair』

インテリアデザイン界において今なお大きな影響を与える、ピエール・ポラン。家具ブランドのアーティフォートで手掛けた数あるデザインの中でも、MoMA(ニューヨーク現代美術館)に収蔵されている『リボンチェア』は外せない名作だ。1本のリボンがねじれるような有機的なデザインは、時をいくら経ても色あせない。


Pierre Paulin ピエール・ポラン
1927年フランス生まれ。ミッドナイトセンチュリー家具のデザイナーを代表する一人。オランダの家具ブランド、アーティフォートの顔として数々のデザインを生み出し、仏・ポンピドゥー大統領官邸のインテリアデザインを手掛けたことでも知られる。2009年没。

¥89,000/Nika Zupanc(フランフラン)
¥89,000/Nika Zupanc(フランフラン)

Nika Zupanc
『Ribbon Chair Copper』

「ロリータ ランプ」をはじめ、フェミニンなカラーリングとラインで女性たちに支持されてきた気鋭のデザイナー、ニカ・ズパンク。2013年の展覧会「エスプリ ディオール:ミス ディオール」で発表され、代表作となったのがこの「リボンチェア」。フランフランでは作品の魅力はそのままに、日常使いのインテリアとして展開している。

NIKA ZUPANC ニカ・ズパンク
スロベニア出身のプロダクト、インテリアデザイナー。モーイ、モローゾ、クリスチャンディオールなど数々のブランドとのコラボレーションが話題に。日本ではフランフランとともに「女性らしくいたずら心のあるデザイン」というコンセプトで商品を2017年より発表。

¥137,500/Cappellin1(カッペリーニポイントトウキョウ)
¥137,500/Cappellin1(カッペリーニポイントトウキョウ)

Nendo(Cappellini)
『Ribbon』

バレエシューズから着想を得た、ネンドのデザインによるカッペリーニのスツール『リボン』。くるくると巻きつくようなリボンはレーザーで切り抜かれた一枚の薄いスチールからなり、均等に交錯することで強度がありながら、リボンのやわらかさも感じる曲線美に。

Nendoネンド
デザイナーの佐藤オオキが代表を務め、2002年設立の東京とミラノを拠点とするデザイン会社。世界各地でデザインプロジェクトを行う。

Cappellini カッペリーニ
北イタリアのMEDAにて1946年に木工家具メーカーとして創業、1979年に創業者二代目ジュリオ・カッペリーニがディレクターとして参画し、80年代からはモダン家具メーカーとして数々のデザイナーズ家具を発表している。



Text:Akane Naniwa Edit:Hiroko Koizumi, Shiori Kajiyama

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