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A・ホドロフスキー新作映画「エンドレス・ポエトリー」@UPLINK

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アレハンドロ・ホドロフスキーの新作映画「エンドレス・ポエトリー」が11月18日より、新宿シネマカリテ、
ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷ほか全国順次公開します。

私が初めてホドの映画を観たのは20年前、衝撃を受け、それ以来、日本で閲覧可能なものは全て観てます。高校生くらいの時は好きな映画監督は?と聞かれ、「ホドロフスキー」と答えておけばエッジな自分を演出出来るという厨二的な目的で語っていた監督でした(サンタサングレはわかりやすい作品だったけど、エルトポやホーリーマウンテンは世界観には度肝をぬいたけど、内容の意味は当時の私にはわからなかった。)

この映画のジャンルは?とか聞かれますが、ホドはホドというジャンルです。物凄く乱暴にいうと、お金をかけた寺山修司なイメージ(決して寺山をディスってるわけではありません。私も寺山好きです)一般的にいうとカルトムービーです(元祖カルトムービーです)彼が新作を発表しても、ジャンルとかで決めて観ようとするわけではありません。ホドだから問答無用で観る、それだけです。

コヤニスカティ、世界残酷物語に代表されるフェイクドキュメンタリー(モキュメンタリ―)、70年代ニューシネマ、60年代ドラッグカルチャーなどが彼を取り巻く背景となります。60年代においてホドのような立ち位置の人は数人いますが、2017年においてはもう彼くらいしかいないんじゃないのでしょうか。。

「エンドレス・ポエトリー」は3年前公開された「リアリティのダンス」の続編で彼の自伝的映画です。全5部作を予定しているそう。ホドは現在88歳、「魂の戦士」「行動する詩人」など、数々のパワーワードを語り、そして実践してきました。この映画は彼を知っていれば知っている程面白い映画。この映画に数々の著名人がコメントを寄せていましたが、ヴィヴィアン佐藤さんのコメントが素敵だな、と思ったので引用↓とは言っても私は「エンドレス・ポエトリー」は爆笑してしまったので、最初はどこに涙してるのかわかりませんでしたが(まだまだ至ってないなぁ、と)

 

ホドロフスキー新作『エンドレス・ポエトリー』。『リアリティのダンス』の続編。現在という時間と過去と未来が並走していて、過去を何度でも生き返らせ救済させられること。ひとりの人間の内に先祖の苦しみや痛みが存在し、それを癒してあげること。人生、映画、芸術の再考。サイコマジック実践。涙。

驚くことに、前作からの自伝シリーズを計五本計画。ホドロフスキーの人生そのものが、この壮大な自伝映画の予言であり、映画製作movieのアリバイmovieに過ぎなかった。その物語は幻のSF大作『DUNE』を超越し、『スターウォーズ』と真の意味で対峙。

答え合わせ的な構造で、彼の実人生が紐解かれていくにつれ明らかになるのは、決して不可解で不可思議な壮絶人生ではなく、誰でも経験するような極普通の人生であったということ。しかし、並外れていたのは、ただひたすら真っ直ぐで自分に正直だったということだけ。 byヴィヴィアン佐藤

 

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とはいっても、彼の作品を観たことない方には何が何だかわからないと思いますのでホドの事を軽く説明。

チリ出身のユダヤ系、祖母はロシアにいて虐殺から逃れはしたもののコサックにレイプされ、生まれてきたホドの母は色白で青い目、家族の中ではミュータント扱いされた。このことをホドは「自分には犯罪者の血と被害者の血が流れている、つまりごちゃまぜ」と語っている。その出自の影響からなのか、彼の作品は常に喜劇と悲劇がセット。

「異常なものが好き、正常なものは嫌いだ」と、自分が絶対的に正常で正しいと疑わない立ち位置を嫌う。

哲学、心理学を学んだ後、演劇(パントマイムなど)を始めるが、その後2本映画を撮り映画監督デビュー。3本目の映画「エル・トポ」にて伝説を作り、ウォーホル、ミックジャガー、ジョンレノンなどの著名人から絶賛を受ける。ジョンレノンの紹介でエルトポの10倍の予算出してくれる出資者と出会い「ホーリーマウンテン」を制作。さらに伝説を作るが、お客を動員しやすい普通のエンタメ的なものを作る気は更々ないので出資者と揉めたりしながらの制作。その為、映画作品本数は割と少ない。

「私は映画からお金を得たいと思わない。私は大金を失うために映画を作っている。決してこうはならない、興行収益5億ドル、天才的オスカー獲得!とはね。」

メビウスと組んで数々のBDコミックの原作も手掛ける。詩人、小説家、コミック原作、サイコマジック、タロット研究家、と様々な顔をもつ、一見胡散臭いけどそこが素敵なお方(コミック原作者であり魔術師を名乗る「WATCHMEN」のアラン・ムーアを少し連想したけど彼と交流はあるか知りたいところ)

 

ホドは「ホーリーマウンテン」の後、SF大作「DUNE」を撮ろうと奔走するが企画が頓挫。数年前公開されたドキュメンタリー「ホドロフスキーのDUNE」はこの時の様子が語られるのですが、これがまた凄く面白い。

前に書いたブログは以下ですが転載しますね。

ホドロフスキーのDUNE(ネタバレあり)@UPLINK

以下、ネタバレになりますが、そもそもネタバレも何もないというか、彼がどういう人かわかってもらう方が「エンドレスポエトリー」を理解できると思うので読んでいただきたいです。

ホドロフスキーの『DUNE』は、1975年にホドロフスキーによって企画されたSF大作で、スタッフにバンド・デシネのカリスマ作家メビウス、SF画家のクリス・フォス、『エイリアン』『トータル・リコール』の脚本で知られるダン・オバノン、画家、デザイナーのH・R・ギーガー、キャストにサルバドール・ダリ、ミック・ジャガー、音楽にピンク・フロイド等、驚異的な豪華メンバーを配するも、撮影を前にして頓挫した。(UPLINK記事より抜粋)

この豪華メンバーを、一緒に戦ってくれる魂の戦士と信じ、ホドが口説き落としに行くのですが、、みんな自分の値を釣り上げる交渉しかしてないのが笑えます。

普通で考えたらゲスいんですが、そんな感じじゃないんですね、怪物的な次元の会話が繰り広げられるので驚愕します。

魂の戦士を口説くわけだから自分の志を語ったりして説得するのかと思いきや、ダン・オバノンには上質のマリファナをプレゼントして篭絡するというマリファナ作戦をとったり、ある人には人気コックを専属につける約束をしたり、、

ダリなんか凄いですよ、出会い頭に「若い頃ピカソと一緒に海辺へと出掛けた。車のドアを開けるといつも砂の中に時計を見つけた。君は砂の中で時計を見つけたことはあるか」

気の利いた返事をしないと相手にされないと思ったホドは「時計を見つけたことはない、でも沢山なくした」

ダリ「わかった、バルセロナで待ってる」

シュルレアリスム合戦が凄い!ほかにも、生きた象をダリの後ろで燃やす映像を撮れ、って言ったり(ホドは映画の中で散々動物の死体を使ってきてる人ですからそーゆー事を言われちゃうわけですが。死体は祝祭に使われる生贄のイメージですが。。)

しかもそれをイエス!って言ってるし!

ギーガーも出てきますが、見た目も喋り方もギーガーっぽい。ギギギガガガーって感じで喋ってます。

 

ちなみに一人目の魂の戦士はホド自身ですが二人目の戦士は彼の息子です(彼の作品にもよく出てきてますね、人権費削減の為に息子使ってるだけだと思ってましたが、魂の戦士だったからなんですねww)

新作もそうですが、ホドは家族が一座のように映画制作に関わっていて「エル・トポ」の息子は世界で2番目くらいに有名なフルチン小僧。

息子は、魂の戦士としてDUNEの主役をやるために、武道家の下でこの企画がポシャるまでの3年間、戦闘訓練の修行したりするんですよ、

「戦士だ、戦士になるのだ!」と言われながら、3年間。。

そして一番面白いシーンが、デヴィット・リンチのDUNEの駄作っぷりを大喜びするシーンです。

ホドの企画がポシャった後、その企画をリンチが映画化するわけですが、自分が撮りたくてたまらなかった作品を他の人が、しかも天才リンチが撮った素晴らしいに違いないものなんて観たくないわけですよ、

ずっとイジイジして観ないでいたら、息子に「それでもお前は魂の戦士か!!」と喝破され、やっと観にいくわけです。

すると、、観ていったらどんどん元気が出てくるわけです

「やった!駄作だ!!イエス!!!」

ホド「人生で何か近づいてきたら”イエス”と受け入れる。離れていっても”イエス”だ。DUNEの中止も”イエス”だ。失敗が何だ?だからどうした?DUNEはこの世界では夢だ。でも夢は世界を変える!!」

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↑DUNEが頓挫した後、BDコミックにてメビウス画「アンカル」を出版。DUNEを下敷きにしている。

(リンチのDUNEは失敗という人が多いけど、観るべきところは沢山あります。原作のイメージに近いとも言われ、宮崎駿「風の谷のナウシカ」は確実にこれから影響を受けています)

リンチのDUNEを観て以来、失敗を肯定的にとらえるようになったホドなわけですが、それでも時々切ない顔をするわけですよ、、

絵コンテも完璧に出来上がっていて、魂の戦士達のリクルートも出来ていながら(しかも無理難題を全部クリアする重労働を経て)撮影直前で駄目になったわけですから。

ホド「失敗してもかまわない、それも一つの選択なのだ」

この台詞を言えるのが凄いです。でもこう言える様になるまでは随分時間がかかったと思います。この台詞が私的には物凄い胸に刺さりました。

DUNE自体は完成しなかったわけですが、この過程がすでに作品みたいだ、と思わせられるようなドキュメンタリーでした。クリエイターを志す人は特に見たほうがいいです。勇気をもらえます。。

(DUNEのコンテなどが載ってる分厚い企画集、欲しいのですが出版されないかなぁ。2万円までなら買う気あります。)

と、まぁ、DUNEの話を長々したのは理由があって、このドキュメンタリーは今作の自伝的映画のヒントがあるからだと思ったからです。

ホドはカルト映画の教祖的存在で、邪教の教祖様みたいなヤバいイメージを勝手に想像してたので愛想良くてギャップにびっくりします。(やってることはとんでもないんですがね)物凄い面白い人というか、アイドルっぽいんですよね。調子のいいジジィな感じというか。で、ホド自身のアイドル的な価値をホドが気が付いたのではないかと。俺が主役でいいんじゃね?みたいな。(本作では現ホドが昔の自分の元に守護霊のように現れます)

作品だけじゃなくて彼自身すでに面白いので自分の人生を映画化した。というより、今までの作品をこの映画の予告編のような存在にした。(ヴィヴィさんのいう、ホドロフスキーの人生そのものが、この壮大な自伝映画の予言であり、映画製作movieのアリバイmotiveに過ぎなかった。には完全に同意)

というのも、DUNEの製作費が頓挫したのは豪華すぎるメンツからありえない要求を聞き、しかも大長編にしようとし、天文学的な数字になったからだと思うので、、本当に映画を撮りたかったら現実的な手段をとることもできたから。

魂の戦士であるが故に金の為の映画を撮らなかったホド、DUNEの企画途中からどんどんハードルの高すぎるものになったのは、もしかしたら無理だとわかった瞬間に、だったらこの過程を面白くして楽しもう、と未来に備えてのネタ・アリバイ作りへの奔走だったのかとも思えるところがあるからです。辻褄合わせかもしれませんが、ただの自伝映画にしないところが流石ホド。

この自伝的映画シリーズはホドの20年以上ぶりの新作映画。魂の戦士・ホド、88才にして最大のマジックを我々に見せようとしてるのかもしれません。

「私はもう88歳で、死にかけている。間もなく肉体は滅びる。私は映画で、多くの観客を惑わせるのではなく、自覚させたい。芸術は人に向かって扉を開き、その中に人は自己を見出す。映画館のスクリーンの前で意識を覚醒してほしい。芸術の言葉を受け取ってほしい」アレハンドロ・ホドロフスキー

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ホドは映画を撮り始めてからDUNEの挫折まで、かなり短期間に成功への階段を登っているので無理難題な企画をたてたのは単純に万能感に満ち溢れてただけなんじゃないかとも思いますがね。「今、俺、なんでもできる!」みたいな。ホドは伝説を作った人なので、どの人のコメントを観ても神聖視されすぎてるものが多かったのであえてそうじゃない目線で長々と書かせて頂きました。というか、神聖視した目線で描くと抽象的になっちゃうので観たことない人に伝え辛いんですよね。興味を持ってもらうために面白おかしく書いちゃいましたが、先入感なしに観てもらいたいとは思っています。

「エル・トポ」(1969年)「ホーリーマウンテン」(1973年):ホド信者が押す作品

「サンタサングレ~聖なる血~」(1989年):ホド信者は物足りないという、初めて商業映画を意識した作品。私は凄く好きな作品です

「ホドロフスキーの虹泥棒」(1990年):ホドが独裁者になれなかった作品、でもホド色はある

「ホドロフスキーの惑星」(1994年):面白くないけど面白い。ホドのことがわかる資料的なドキュメンタリー

「ホドロフスキーのDUNE」(2013年):ホドを撮ったドキュメンタリー、監督は別だが素晴らしいセンス

「リアリティのダンス」(2013年):ホドの自伝的映画、全5部作の予定の第一部

 

他作品は日本でレンタル閲覧できない(はず)ので、以上を全部観てから「エンドレスポエトリー」を観ると数倍理解が進みます。元々説明的な作りの映画ではないですが、もし意味がわからなくても、充分衝撃的な作品なので楽しめると思います。

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10/26『エンドレス・ポエトリー』の特別上映会にはホドの息子アダン・ホドロフスキー↑が来日!サンタサングレや本作主演。

 

11/4デパートメントHでもホド紹介コーナーを設けてもらってますのでお楽しみに!

UPLINK制作のホドロフスキー新聞<全3号>

【webDICE】見るドラッグ、それは映画以上のものである

10月14日(土)- 11月5日(日) アレハンドロ・ホドロフスキー監督 映画『エンドレス・ポエトリー』公開記念 特別企画 展示@アツコバルー¥500 atsukobarouh.com

映画『エンドレス・ポエトリー』11月18日(土)公開 

 

 

 

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サエボーグ(saeborg)はラテックス製の着ぐるみ(スーツ)を自作し、自ら装着するパフォーマンスを展開するアーティストです。主な展覧会に岡本太郎現代芸術賞作家特別展示「HISSS」(岡本太郎記念館、東京、2015)、「Slaughterhouse-13」(Joshibi galleria nike、東京、2015)、「のけものアニマルーきみといきる。」(はじまりの美術館、福島、2015)、日本財団アールブリュット合同企画展「TURN/陸から海へ」(鞆の津ミュージアム、広島、2015)、「第17回岡本太郎現代芸術賞展」(川崎市岡本太郎美術館、神奈川、2014)にて岡本敏子賞受賞。