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映画マジカル・ガール(ネタバレ注意)

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監督: カルロス・ベルムト

出演: ホセ・サクリスタン、バルバラ・レニー

2014年/スペイン/127分

配給:ビターズ・エンド

ストーリー:白血病で余命わずかな少女アリシアは、日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。彼女の願いはコスチュームを着て踊ること。娘の願いをかなえるため、失業中の父ルイスは、高額なコスチュームを手に入れることを決意する。この彼の行動が、心に闇を抱える女性バルバラと、訳ありの元教師ダミアンを巻き込んでいく。出会うはずのなかった彼らの運命は予想もしない悲劇的な結末へ・・・。

 

 

 

フライヤーのイメージ画像を観て、短髪の子が魔法少女のコスプレをしているので、男の子が魔法少女のコスプレをしているように思い、てっきり魔法少女に憧れる男の娘の物語なのかと思ったのが最初のイメージ。

そして短髪なのは少女が白血病だからだということがわかり、 日本の魔法少女アニメが30年くらいかかってやっと世界的にファンを産み、それらの文化に比重が置かれた映画なのかと思い、気になって試写を観てきたのですが、、予想していたものと全く違い、話の展開がまるで読めない、突拍子もないものになっていく映画でした。

そしてラストで白血病の少女アリシアが魔法少女になって暗闇のアパートに現れるシーンで感極まって泣いてしまったほど、この映画は好きな映画なのですが説明がとっても難しい映画です。

あらすじを説明してもあの映画を説明したことにはならないような映画だし、多くを語ってない映画なのでどうとでも読み取れる映画だし、それ以上に全く文化圏が違うと思わせられるようなラスト。

ギレルモ・デル・トロ監督の「パンズ・ラビリンス」も同じくスペイン映画なのですが(彼はパシフィッく・リムなどをハリウッドで作っていますがスペインで撮った映画はまるで違うテイスト)バッドエンドだが少女が生け贄のように、それでも美しく死んでいく、みたいなのが定番なのか?イノセンスとダークがセット。

イギリス映画もハッピーエンドがあまりなく、一つのイベントをこなしてはみるがそれが終わったらまたいつもどおりの生活、みたいなものが多いイメージです。それはイギリスの万年不況からくるものな気がしますが、この映画も経済が崩壊したスペインが舞台。

マジカル・ガールは脅迫がテーマの話なのですが、アリシアの父ルイスは来年には白血病で死んでしまう娘の夢を叶えたいがために脅迫します。それは娘への愛が引き金になってるのではなく、貧乏が引き金になっているのです。

 

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映画のキャッチコピーは「魔法少女ユキコは悲劇のはじまり」魔法少女になりたいという願いがすべての運命を変えていく。

「2+2はいつも4なのだ。どんなことがあろうとも」

何かを願ったら代償が返ってくる、という猿の手のような話なのですが猿の手とは違い、不幸の連鎖は止まらない。

そしてもう一人のマジカル・ガールは超絶メンヘラのバルバラ。おそらくボーダーラインの子で、美人で、魅惑的で、人をふりまわし(バルバラの守護天使ダミアンは彼女のせいで10年務所暮らしをくらったほど)、物凄い破壊衝動を持ってる(彼女の体は深い切り傷だらけ)。過去の自分と決別し、精神科医の夫に支配してもらうような生活を送っていたのだが、自分の額に傷をつけたことによって過去への扉を開いてしまう。この額の傷跡がまるで聖痕のようでいい。監督は黒蜥蜴のイメージをもってるとか。

 

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物語は<世界><悪魔><肉欲>の章で構成されています。

バルバラは脅迫され、緊急にお金を作る為にお金持ちのサディストに半殺しにされます(黒蜥蜴部屋という恐怖の拷問プレイルームで)。

アリシアの夢を叶えた彼女こそがマジカル・ガール。

暗闇のアパートの中で魔法少女になって現れるアリシアの登場シーンミュージックはかつてアイドルだった長山洋子のデビュー曲「春はSAーRA SAーRA」

どうぞ、お聞き下さい!

 

 

 

 

 

カルロス・ベルムト監督作品『マジカル・ガール』

2016年3月、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開

■公式サイト
http://bitters.co.jp/magicalgirl/
■公式Facebook
https://www.facebook.com/マジカルガール-1658274074411652/
■公式Twitter
https://twitter.com/MagicalGirl2016

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saeborg

サエボーグ(saeborg)はラテックス製の着ぐるみ(スーツ)を自作し、自ら装着するパフォーマンスを展開するアーティストです。これまでの全作品は、東京のフェティッシュパーティー「Department-H」で初演された後、国内外の国際展や美術館で発表されている。2014年に岡本太郎現代芸術賞にて岡本敏子賞を受賞。主な展覧会に『六本⽊アートナイト2016』(A/Dgallery、東京、2016)、『TAG: Proposals on Queer Play and the Ways Forward』(ICA/ペンシルバニア大学、アメリカ、2018) 、『第6回アテネ・ビエンナーレ』(Banakeios Library、ギリシャ、2018)、『DARK MOFO』(Avalon Theatre/MONA 、オーストラリア、2019)、 『あいちトリエンナーレ』(愛知芸術劇場、名古屋、2019)、 『Slaughterhouse17』(Match Gallery/MGML、 スロベニア、2019 )など。

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