
写真家、アーティストの鷹野隆大の個展「総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―」が東京都写真美術館で開催されている。今年、総合開館30周年を迎える東京都写真美術館、その記念すべき年の第一弾目の展覧会となる。2025年6月8日(日)まで。
鷹野隆大は、セクシュアリティをテーマに1994年より作家活動を開始。1998年からは毎日欠かさず写真を撮ることを自らに課したプロジェクト「毎日写真」(※)を続け、今も膨大な写真を生み出している。
2006年には写真集『IN MY ROOM』で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞。2011年には「毎日写真」から日本特有の無秩序な都市空間の写真を集めた「カスババ」を発表。さらに東日本大震災以降は「影」をテーマにした作品にも取り組む。
(※ 参考記事)Numero.jp 「写真家・鷹野隆大の大規模個展@国立国際美術館(大阪)」

本展では、「IN MY ROOM」に代表されるセクシュアリティをテーマとした作品、「毎日写真」や「カスババ」など日常のスナップショット、さらに続編であり東日本大震災後の10年の記録でもある「カスババ2」、裸身の鷹野と被写体が並ぶ「おれと」、影を焼き付ける「Red Room Project」やコロナ禍にスキャナーで制作されたシリーズ「CVD19」など、これまでの活動を概観する多彩な作品が紹介される。

なお、タイトルにある「カスババ」は「カスのような場所(バ)の複数形」という意の、鷹野による造語。
「写真を撮る気をなくさせるような、どうしようもなく退屈な場所が至るところにあって、なるべく見ないようにしてきたんですが、あるとき、最も身近なものを自分は無きものにしようとしているのではないかと思いました。それは存在するものを存在しないかのように扱う暴力的な行為ではないかと。だったら、それに向き合ってみなければ、と思い直して撮り始めたのがきっかけです」
(東京都写真美術館 鷹野隆大 スペシャルインタビューより)
30年近く、毎日写真を撮り続け、生みだされた作品群。決して美しいものだけではない日常、むき出しのイメージが提示される。そこには、見ないふりや、目を背けたり、見過ごしている世界があるかもしれない。

なお、本展ではグラフィックデザインを北川一成が手がけ、展示構成は建築家・西澤徹夫が担当。どちらもコラボレーションするように取り組んだといい、北川とは対談イベントも予定されている。

そして展示空間は、鷹野が提示したテーマ「都市」をもとに西澤が提案、それに呼応しながら作品構成も変化させたという。
街中で突然出くわす景色のように、物語も知らずに作品に出会う。順路や時系列にもとらわれない空間で、ぜひ各々自由に歩いて、その世界観に触れてほしい。

総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―
期間/2025年2月27日(木)~6月8日(日)
場所/東京都写真美術館 2F展示室
休館日/毎週月曜日(ただし5月5日は開館、5月7日は休館)
料金/一般 700円、学生 560円、中高生・65歳以上 350円
※詳細は公式HPをご確認ください
URL/https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4826.html
Text : Hiromi Mikuni