永井博『T・R・O・P・I・C・A・L – L・A・N・D・S・C・A・P・E』展
永遠のバケーションを描くイラストレーター永井博。そのトロピカルなランドスケープの展覧会が、今年も表参道CAYで開催中。いざ、吹き渡る南風の向こう側へ……!
どこまでも深く澄み渡る青空、まばゆいばかりの南国の日差し、天国を思わせるような常夏の風景……。その作品を目にした瞬間、まるで魔法にかかったかのように、遙かなるサマー・バケーションへの郷愁が抑えがたくあふれ出てしまう。その情感を、いったい何と表現すればいいだろう。いつしか私たちの心の奥底に刷り込まれてしまった景色への憧れ、南洋幻想──。
そのヒントは、ある1枚のエヴァーグリーンなアルバムジャケットにあった。
「BREEZEが心の中を通り抜ける」(大瀧詠一の1981年のアルバム『ア・ロング・バケーション』帯文より)。
描いたのは、杉山清貴やサザンオールスターズら、国内外のミュージシャンたちのレコード/CDジャケットを手がけるイラストレーターにして、ソウルミュージックのコレクターなど趣味人としても知られる永井“ペンギン”博(1947年生まれ)。
以来、光にきらめくプールの水面、椰子の木の影、純白のビーチチェアなどが描かれた彼のイラストレーションを目にするたび、脳裏に南風が吹き渡るようになった。
しかもその“南風現象”の対象は、リアルタイムで80年代を過ごした世代だけに留まらない。近年のシティポップ再評価を受けて、大瀧詠一主宰のナイアガラ・レーベルのレコードを愛聴するシティボーイ&ガール風情はいざ知らず、日本全国、石を投げれば「この絵、どこかで見たことある!?」という老若男女にぶち当たる。そしてそのたびに、それぞれの心の中にあの南風が吹きわたるのだ。嗚呼、なんという常夏への扉──。
(参考:Editor’s Post「いつまでも眺めていたい! 永井博の個展『Penguin’s Vacation Restaurant 2017』」)
Text:Keita Fukasawa