時空を超えるアート書物!『HERE』日本版 | Numero TOKYO
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時空を超えるアート書物!『HERE』日本版

全世界にセンセーションを巻き起こした“アート×文学”な1冊が、ついに日本上陸。いざ、時空を超えた読書体験へ。

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2014年にアメリカで刊行されるや否や、究極のグラフィックノベル、人生観を変える1冊、時代に残る希有な書物etc. …と、世界各国で驚嘆と賞賛の声を巻き起こしてきた本がある。その名は、リチャード・マグワイア著『HERE』。そしていよいよ、日本版『HERE ヒア』がこの冬に刊行された。ちなみにグラフィックノベルとはとくに文芸性の高いコミック作品を指す言葉だが、その“究極”の境地とは果たして、どれほどのものなのだろうか。

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手にしてみて驚くのは、ハードカバーで300ページを超えるその分厚さ。その時点で、これはいわゆる“マンガ”というよりも、アートブックとして見るべき類いの本であることを確信する。
表紙をめくったタイトルページの見開きには、窓と作り付けの暖炉のある部屋の眺め。左上には「2014」。その数字が、ページをめくるたびに変化していく。1957、1942、2007……読み進めても、この固定したアングルは変わらず、それぞれの時代ごとの出来事が描かれる。つまりは“HERE”——この部屋、この場所の様子を定点で見つめていくわけだ。

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時代が変われば眺めも変わる。壁紙やカーテン、ソファなどの調度品、電話にテレビetc.。しかし、時間の振れ幅はそれだけに留まらない。1623年、この家が建つ前の原生林の眺め。紀元前8000年、人の気配のない広大な沼地……。さらに、1989、1763、2017と、その景色の上に四角い枠が現れ、それぞれのシーンが重ねられる。PCのデスクトップ上に小さなウィンドウが現れるかのように、固定された視点のもと、異なる時間の断片が重なっていく。
このフレーミングは、通常のマンガのコマ割りとは似て非なるもの。まさに“発明”といえる表現手法だ。

既存の物語では描写できなかった生命の息吹

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太Keita Fukasawa コントリビューティング・エディターほか、フリー編集者、ライターとしても活躍。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numero TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集やインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)などがある。『Numéro TOKYO』では、アート/デザイン/カルチャー分野の記事を担当。

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