マジか!?
『現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展』
ということは当然ながら、広告業界や音楽業界で頻発する炎上事件のように「どこかの誰かの作品にそっくり」だとか、「このアイデアはもう100年前にデュシャンがやってる」とかいうことは許されない。
だから、まず技術的に傑出していることは当たり前。その上で、これまでのアートの文脈をきっちり知り尽くしておいて、まったく新しいオリジナリティを表現するという、知的で戦略的なコンセプトが必要になる。さらに理屈抜きで、極めて厳しい目を持つ人々の理性や時代性すらブッ飛ばすような、“スゴ味”を感じさせる強度が備わっていなければならない。
……現代美術の世界で“勝ち残る”とは、そういうことだ。
だからこそ、その核心をつかんだトップアーティストたちは、名実ともに“筋金入り”と呼ぶにふさわしい。言い換えればずばり、熾烈な闘いを制した“ハードコア”な面々。
だからこそ彼らの作品には、数百万〜数百億単位の評価額が付けられる。
世界にただ一つ、その作品にしか表し得ない究極の価値──それを“世界の宝”と呼ばずして、何と呼ぼう。
一方で、そうした“ハードコアな世界の宝”に魅せられるあまり、天文学的な出費をつぎ込みながらアート作品を買い集め、同じく“筋金入り”と称えられる男がいた。
その名は、台湾で電子部品メーカー「ヤゲオ・コーポレーション」を創業し、いまや世界有数のシェアを誇るまでにのぼり詰めた、同社CEOのピエール・チェン。
学生時代にはすでにプログラミングで得た報酬でアート作品を購入していた彼の熱意は、いつしか壮大なアートコレクションとなって実を結び、たった1代にして世界的なアート専門誌の世界ランクでトップ10入りを果たす規模になったのだった。
Text:Keita Fukasawa