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Balthus: A Retrospective バルテュス。本名バルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ。 1908年、パリ生まれ。父はポーランド貴族の血を引く美術史家、母は画家。 ボナールやマティス、ストラヴィンスキーら芸術家たちが訪れる環境で育ち、幼くして才能を開花。最初の作品は、11歳にして描きあげた素描40点による絵本『ミツ』。東洋への憧れを託して日本名を付けた愛猫の物語に、母の恋人だった詩人リルケが賛辞を寄せた。 その後、ルーヴル美術館に通い、古典絵画の巨匠作品を模写しながら、独学で西洋絵画の技法を身に付けていく。中でも魅せられたのは、ルネサンスの画家 ピエロ・デラ・フランチェスカ。 こうして、20世紀美術のどの流派とも異なる、独自の世界観が築かれていく。 Balthus: A Retrospective 最初のセンセーションが巻き起こったのは、1930年代に入ってからのこと。 構築的な画面構成の中で、無防備な肢体をさらけ出し、扇情的なポーズで描き出される少女たち……その姿を目にした人々の間で、大論争が巻き起こったのだ。 「私にとって少女たちは、この上なく完璧な美の象徴なのだ」 批判や誤解さえ渦巻く中で、彼自身は多くを語らず、謎めいた雰囲気の中で佇む思春期の少女像を描き続けた。 子どもと大人、そのどちらでもないバランスのもとに、聖なる輝きを放つ唯一の存在──。 その魅力を「20世紀最後の巨匠」と讃えたピカソをはじめ、多くの人々が抗い難い魔力を放つ彼独自の美意識に魅せられ、いつしかその虜になっていった。
Text:keita Fukasawa
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