Art / Editor's Post

注目のアーティスト松山智一×「とらや」のアートな和菓子

明治神宮で作品を展示するなど、注目を集めるニューヨーク在住のアーティスト・松山智一(まつやま・ともかず)。その松山さんから、思いがけずうれしいプレゼントが。包みを開いて出てきたのは「とらや」の菓子箱。気になるその中身とは……?

松山さんと先頃お会いしたのは、明治神宮初の野外彫刻展「天空海闊(てんくうかいかつ)」(現在開催中)が開幕してすぐのこと。明治神宮の創建100年を祝う大舞台に臨んだ意気込みを、小誌ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)6月号(4/28発売)で語ってくれた(※1/Web転載記事)。
昨年秋には、『情熱大陸』に登場したタイミングで、キース・ヘリングやバンクシーらが名を連ねるニューヨーク随一の壁画を描いたいきさつなどをNumero.jpでインタビュー(※2)。

(※1 Numero.jp 「アート×ライフ:それぞれのかたち vol.4 松山智一」
(※2 Numero.jp 「ニューヨークが認めた異才、松山智一が語るアーティストの使命」

日本を含む各国で展示やパブリックアートなど数多くのプロジェクトを抱え、文字どおり世界中を飛び回る身の上。不測すぎる事態に誰もが己の無力さを噛み締める中、アーティストとしてこのコロナ禍をどう受け止めているのか……。玄関の呼び鈴が鳴ったのは、そう思いを巡らせていたときのことだった。

宅配便は、松山さんと、その作品を取り扱う東京・天王洲のギャラリー「KOTARO NUKAGA」からのもの。包みの中から出てきたのは、黒地に金の虎が3体描かれた「とらや」の菓子箱。はて、と思いつつ蓋を開けてみると、ああ一目瞭然、松山さんによる抽象画を象徴するカラフルな色面構成に、「彩願(いどろりねがひ)」、「彩想(いろどりおもひ)」の銘が記してある。なんでも、松山さんがパッケージと配色をデザインし、虎屋が「願い」と「想い」を菓銘に込めたオリジナルの羊羹とのこと……!

2種類の羊羹を切り出してみれば、鮮やかさと淡さの層をなす彩りが歌舞伎の定式幕のように繰り返し、果てなく続く光と色をイメージさせる。和のようでもあり、洋のようでもある不思議な取り合わせ。果たしてそのこころは?
「鮮やかな色彩で分割された画面は、日本的な『願掛け』である折り重ねられた千羽鶴のイメージを、西洋で権威化されたアートへのアンチテーゼとして抽象絵画的に捉えなおしたもの」(説明文より抜粋)

「彩願」(右)と「彩想」(左)、黒田泰三さんの平皿に載せて。
「彩願」(右)と「彩想」(左)、黒田泰三さんの平皿に載せて。

アーティストという存在は、未来の前兆をいち早く感知し、言葉や理屈を超えた形で描き出す才覚から、しばしば“炭坑のカナリア”にもなぞらえられる。全世界が未曾有の災厄に直面するなか、日本を代表する和菓子処と手を取り合い、届けられた松山さんのメッセージーー。
日々に追われるばかりの手を休め、ゆっくりと羊羹を味わうひとときを通して、松山智一というアーティストの「願い」と「想い」が静かに染み込んでいく安らぎに、しばし感じ入った次第です。

 

 

Profile

深沢慶太Keita Fukasawa コントリビューティング・エディターほか、フリー編集者、ライターとしても活躍。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numero TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集やインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)などがある。『Numéro TOKYO』では、アート/デザイン/カルチャー分野の記事を担当。

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