Art / Feature

アート×ライフ:それぞれのかたち vol.4 松山智一

「表現することは生きること」だと人は言う。それって本当? 領域や手法の異なる4組に、新たな表現に懸ける思いを質問。それぞれの形で浮かび上がる、“アートな生き方”の楽しみとは。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年6月号掲載)

「天空海闊」の展示作品『Wheels of Fortune』 Photo: 木奥惠三 © Matsuyama Studio
「天空海闊」の展示作品『Wheels of Fortune』 Photo: 木奥惠三 © Matsuyama Studio

松山智一

ニューヨークが認めた独学の異才、明治神宮へ“凱旋”

アート界の頂点を目指して、熾烈な競争が繰り広げられるニューヨーク。独学ながら、この地でキース・ヘリング、バンクシーらが名を連ねる巨大壁画「バワリー・ミューラル」に指名された松山智一。その作品がこの春、明治神宮の創建100年を祝う野外彫刻展「天空海闊(かいかつ)」でお披露目となった。

「本当に光栄なことです。僕が表現する理由は、金額や名声のためではありません。まさに歴史的な機会だからこそ、奮い立つものがありました」。その展示の舞台──明治神宮の森は、明治天皇の神霊を祀る社(やしろ)のため、全国から献木された約10万本の木々を当時最新の科学的知見で植栽し、それが自然と呼べるまでに育ったものだ。「現代の日本人は神社で頭を垂れる一方で、西欧化された消費社会を生きています。そのコントラストを、神の使いである鹿の角をディフォルメした造形と、古代の銅鏡と車のホイールを思わせる車輪を組み合わせ、この森の希少な自然と対置することで表現したのです」

昨年10月に完成した「バワリー・ミューラル」の壁画作品 © Matsuyama Studio
昨年10月に完成した「バワリー・ミューラル」の壁画作品 © Matsuyama Studio

アートの最前線で戦い続け、ついに訪れた日本での栄誉ある機会。故郷に錦を飾った達成感はいかに?

「制作に臨む姿勢はどんな場所でも変わりません。僕も知人のKAWS(「アート×ライフ:それぞれのかたち vol.3 KAWS」参照)もそうかもしれませんが、発表の場を求めてストリートで活動した経験から、どんな場でもボーダレスに表現できるようになった。僕の作品はさまざまな感覚、美意識や時代様式を意識的にマッシュアップしたものですが、それは絵の技術を持ち得ないからこそ見つけることができた独自の方法論。その作品がギャラリーや美術館に置かれるようになった今、パブリックアートという形で再び公共の場を意識したのです。芸術と僕たちの日常の関係性について作家自身が考えることで、アートは社会につながったものになっていくと思います」

LACMA(Los Angeles County Museum of Art)収蔵の絵画作品『You Need To Come Closer』 © Matsuyama Studio
LACMA(Los Angeles County Museum of Art)収蔵の絵画作品『You Need To Come Closer』 © Matsuyama Studio

最後に、表現する喜びについて聞いてみた。「世界中の人々と作品を介して対話すること、コミュニケーションですね。その結果が美術史に残るものになったなら、これ以上の喜びはないと思います」

野外彫刻展「天空海闊」
会期/開催中〜12月13日(日)
会場/明治神宮 内苑各所
明治神宮創建100年、日本博主催・共催プログラム「神宮の杜芸術祝祭」のオープニング・フェスティバルの一つ。明治神宮初の野外彫刻展として、名和晃平、船井美佐、三沢厚彦らの作品を展示する。
https://jingu-artfest.jp/

 

Interview, Edit & Text : Keita Fukasawa

Profile

松山智一Tomokazu Matsuyama 1976年、岐阜県出身。2002年に単身ニューヨークへ渡り、独学でアート活動を始める。作品はMicrosoftやドバイ首長国連邦の王室コレクションのほか、アメリカのLACMA(Los Angeles County Museum of Art)やアジアン・ミュージアムなどに収蔵。19年秋、ニューヨークを象徴する「バワリー・ミューラル」の壁画を手がけた。(Photo: 前田直子)

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