注目の陶芸家、牟田陽日 作品にパワーをもらう! | Numero TOKYO
Art / Editor’s Post

注目の陶芸家、牟田陽日 作品にパワーをもらう!

そもそも今年は夏らしい楽しみを諦めているものの、8月とは思えない肌寒さが盛り下がりに拍車をかけるこの頃。せめて何かパワーを享受したい! とGINZA SIXの銀座 蔦屋書店で行われている現代陶芸家、牟田陽日(むたようか)さんの個展におじゃましました。

ロエベのクラフトプライズの注目度でもわかるとおり、いま世界から熱い視線を集める工芸。ただ陶磁器、竹工、漆工芸といった種類はもとより、美術工芸、生活工芸、民藝などのステージ分けも幅広く、現代アートとの区別も正直曖昧。ファッションで言えばオートクチュールとリアルクローズ、モードとクラシックのように、鑑賞して内面を喚起される作品と生活のなかで実際に楽しむ商品に線引きがあるということのようです。「あれは工芸であって現代アートではない」「これは人間国宝のものなので格が違う」といろいろな声は耳にしますが、要は受け止める側がどう感じるか、どう捉えるかなので、そんなふうに区分けることはあんまり意味がない気がしています。

今春、個人的に縁がある街、金沢の魅力を「金沢で美意識を磨くPart1 Part2」で紹介しましたが、牟田陽日さんは金沢近隣の石川県能美市で作陶されている注目のアーティストです。無用なジャンル分けなども軽々と飛び越える圧倒的なパワーを放つ作品は、今回も、ですが毎回抽選での販売という人気ぶり。手びねりによる磁器に九谷焼の技法で色絵付けした作品は草花の間に神獣や動植物が描かれ、ところどころに金彩が。絢爛豪華さのなかにどこかダークな部分をはらんでいるように見えます。

個展のテーマは「眼の器」。器とともに発表された生活にまつわるファブリックアートも、その関係性や見る人の目線にこだわって展示したそう。生と死が同居し爆発するような美意識の塊を前に、何か心が浄化されたような気分になりました。残念ながら我が家には作品にふさわしいディスプレイ場所が見当たりませんが、手元に置いて愛でたい!!そんな純粋な所有欲に駆られております。

ぜひ一度、あのエネルギッシュな作品を目にしてほしいです。本日16日(月)からはウェブサイト内に全作品を公開し、メールでも購入の抽選に参加できるとのこと。開催は8月25日(水)までの予定。詳しくは銀座 蔦屋書店 牟田陽日個展「眼の器」のサイトをご覧ください。

また牟田さんの作品は、北陸工芸の祭典「GO FOR KOGEI 2021」特別展I(9月10日〜10月24日・福井県大滝神社・岡太神社)でも桑田卓郎さんの作品とともに展示されます。

Profile

古泉洋子Hiroko Koizumi コントリビューティング・シニア・ファッション・エディター。『Harper's BAZAAR』『ELLE Japon』などのモード誌から女性誌、富裕層向け雑誌まで幅広い媒体での編集経験を持つ。『NumeroTOKYO』には2017年秋よりファッション・エディトリアル・ディレクターとして参加した後、2020年4月からフリーランスとしての個人発信を強め、本誌ではファッションを読み解く連載「読むモード」を寄稿。広告のファッションヴィジュアルのディレクションも行う。著書に『この服でもう一度輝く』(講談社)など。イタリアと育った街、金沢をこよなく愛する。
Instagram: @hiroko_giovanna_koizumi

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