旅のプロ、ダージリン コズエによる連載。世界中のあらゆるデスティネーションを行き尽くし、現在も国内外問わず旅に赴く玄人トラベラーが語る、“人生最高の旅”。
自分への誕生日プレゼントとして過ごしたSix Senses Ibizaでのリトリート旅。

いつものSix Sensesでのリトリートであれば、朝ヨガして、プールサイドで日焼けして、本読んで、うたた寝して、スパでトリートメント受けて、美味しいものを食べて、という感じなんですが、イビザという土地柄かスピリチュアル系のプログラムが複数あったので、興味本位で参加してみました。
今年の1月に日本に一時帰国していたのですが、その時に婦人科系の病気が見つかり、フランスに戻って治療しながら生活を続けています。フランスの医療水準は日本同様、とても高いのですが、日本や東アジアの国々とは治療に関する考え方やステップが全く異なり、戸惑うことも多いです。いい先生と巡り逢えて快方に向かっているものの、痛みで身体が辛い時、異国でひとり暮らしなので、正直心細くなることも。

こういうとき、人は見えない何かの力に縋りたくなるようですが、私の趣味は一神教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の比較文化の研究。そして医療は西洋・東洋ともに専門家に任せる、というポリシーで生きているので、健康のためにヨガをたまにやるくらいで、全くスピリチュアル世界とは接点がなく生きてきました(一神教の書物の中にも色んな奇跡のお話はありますが、興味対象はそこではない)。
そんな私ですが、フランスに引っ越してからというもの、トラブル続きで、明らかに運気が悪いというのが自分でもわかります。40代後半にもなると人生には波があるのはわかります。いい時もあれば、そうでない時もある。ただ常に「仕事は一生懸命、遊びは死に物狂い」をモットーに、ゴキゲンスポットなキャラとして生きてきたのに、人生初のこれでもかというほどの不運のオンパレードに身も心もかなり消耗されていました。
この流れはあかんやつや!と、誕生日を前に厄落としをするような感覚で、せっかくイビザにいるんだし、またSix Sensesのプログラムなら安心できそう、という気持ちでいくつかスピリチュアル系のセッションを試してみました。
まず参加したのが、無料で受けられる30分間のBody Balance Meditation(ボディ・バランス・メディテーション)というもの。ヨガセンターへ行くと、クリスタルボウルや大小様々のシンギングボウルが並べられていて、ゲストはヨガマットの上に毛布にくるまってゆっくりと仰向けに寝そべります。
目を閉じて、先生の声に合わせて深い呼吸を繰り返しリラックス。

最初は目を閉じても、黒い世界に壊れたテレビやパソコンのように白い線がジーッ、ジーッとあちこちを飛び回り、頭の中もワシャワシャとして全く集中できません。
できるだけ集中するように音に耳を傾け、軽やかな音でリラックスしたり、たまに強い音で振動を感じたりしながら、半分寝ているような、半分起きているような状態に。
すると閉じている目の中に丸い緑の光がみえ、それが青い光へと変化し、最後は真っ白からやや青みを帯びた白い色に変わっていき、セッションが終了。

なんだったんだ、あの丸い色は。と悶々としたような、不思議な気持ちになり、部屋に戻ってごろ〜んとなり、ChatGPTに聞いたら、どうもチャクラの色とのこと。で、それが一体、自分に何が起きているのかはわからない。
この日の夕方に1時間のカカオセレモニーというのもあり(こちらは25ユーロ追加)受けてみました。カカオセレモニーとは、あのチョコレートの原料となるカカオが主役なんですが、かつて中南米ではカカオは儀式や神聖な場でも用いられていたことから、カカオにはスピリチュアルな力が備わっていると信じられていたよう。
そして今世界的にプチブームになっているこのカカオセレモニーとは、自分の感情に向き合ったりするらしいです。

ヨガをやる場所へ行くと、カカオセレモニーの祭壇のようなものが作られており、私を含め20名くらいは参加したんじゃないかなと。

先生はマルティナという女性。部屋にはコパールという樹脂が焚かれ、白い煙がさらにセレモニー感が出ています。どうもこのコパールを焚くことで、心身の浄化をし、リラックスできる状態へと導くようです。

このようなカカオセレモニーについての説明を受け、マルティナが事前につくってきてくれたカカオドリンクをカップに分けてくれるので、それを順番に取りにいきます。

両手でカカオドリンクを抱えて、目を閉じて香りを嗅ぐと、ココアと同じような香り。しばらく鼻から香りを吸って口から出してみたりしてその香りの感覚を楽しんだ後、口に含みます。味は甘味の入っていないココアのよう。オーツミルクで割ってあり、すこしとろみがあり、またカカオのざらつきを舌で感じます。私は全く苦味を感じなかったけれど、人によっては苦味も感じるとのこと。

さて、そのカカオドリンクで温まり、ヨガマットの上に毛布にくるまれながらしばしヨガのシャバーサナのような感じで脱力。
目を閉じてセッションが始まります。
マルティナの声やヒーリングサウンドを聞いていると、意外にもすぐに自分の色んな感情が出てきます。友達や家族、同僚の顔が出てきたり、時には苦手な人たちがモグラ叩きのようにあちこちから出てきて、頭をブルブルさせながらおい払っても、おい払っても出てきて、全く集中できません。
Numero TOKYOというおしゃれメディアでの連載で、どこまで書くか悩みましたが……。
みなさん、生きていれば誰だって苦手な人っているでしょ?(笑)ご近所さんだったり、義理家族、ママ友だったり、会社だったり、先輩だったり、元パートナーなどなど……人間だから当たり前だと思うのです。
でも、ヴァカンス中、しかもせっかくのリラックスするセッション中に出てこなくてもいい人たちがあちこちからチラチラと出てくるから、「はぁー今じゃないよー」と思いながらも、夢の中と現実とを行き来するような感覚に。
マルティナの声が遠くで聞こえ、それに合わせて体は動いているんだけれど、頭が酔っているのかな?っていう感じでふわふわとした状態が続くのです。
そして次の瞬間、なんとさっきまで出てこないでくれと思っていた、苦手な人たちが、ドカンと脳内に現れ、その直後、出産するごとく、なんと自分の子宮を通って、その人たちが体の外へ出ていったのです。

え!!と一瞬我に戻り、目を開け夢だね?と。
そして、再びマルティナの声に集中していると、またうとうと。
眠っているのか起きているのかわからない、あちらの世界とこちらの世界を行き来するような感じでいると今度は、自分がトラウマとなった建物が再び子宮を通って自分の体からポーン!と出てきたのです。
え!?と再び目をパッチリ開けてしまいました。
普段見る夢って、たまに自分が飛んだりしたりするじゃないですか。でも、苦手な人やましてや建物が自分の子宮から出てくるなんて夢でもみたことなかったのでびっくり。
なんだったんだ、あれは?と思いながらも、目を覚ますと意外とスッキリし、再度温かいカカオが入ったカップを両手で抱え、香りを楽しみながらほっと一息。

するとマルティナがカードをみんなに回し、好きなものを1枚ピックアップするようにと。奥にある薄いピンクのカードを引こうかなと思ったら、手前にピカッと光るショッキングピンクのカードに惹かれ、それを手にしました。

そこに書かれていた言葉は“I am confident and Love my life”直訳すると「自分に自信を持って、自分の人生を愛している」ですが、日本語的には「自信を持って、自分の人生を生きている」というのがしっくりくるかもしれません。
確かに振り返ってみると、今までの人生「こういうポジションになりたい」とか「いくら稼ぎたい」「こういうタイトルが欲しい」とかいうよりも「これ面白そうだからやってみたい」で人生を選択し、それぞれのところで素晴らしい人たちと出会い、共に結果を生み出したり、人と人とがつながったりして、今に至ります。
そういう意味では、カードの通り、自分の人生に悔いなしで生きてきたのかもしれません。
マルティナがそれぞれ引いたカードをみんなでシェアしてみない?と提案し、自分のものも読んでシェアしていきます。日頃はこういう人前でのインタラクティブなやり取りってあまり好きではないのですが、不思議と自信を持って自分のカードを読み上げ、自分が発したワードになぜか心が沁みてきます。
そして、今度は立ち上がって、ダンス?的なものをしたり、周り近所の人たちとハグをしたり(基本的にこういうのは好きではない)、みんなで手を繋ぎ、輪になり目を閉じて今の気持ちをシェア(最も苦手)していきます。
会議では別ですが、研修やワークショップとかで、自分の意見や気持ちを伝えるのが日本語でもいつも最後の方になりがちなんですが、自分にしてはすごく珍しく早い段階で “Happiness”という言葉が自然と口から出てきました。
なんだったんだろう、この感覚。
翌日、サンセットタイムにマルティナに会い、プログラムに含まれているサンセットリチュアルをしてもらったのですが、その前にちょっとシェアさせてもらないか?と相談し、昨日、自分自身に起きたことについて話をしてみました。

カカオセレモニーで頭や喉のあたりがスッキリしたっていう人はよくいるらしいのですが、子宮から苦手な人や建物を生み出す人は珍しいとのこと。
でも、それがきっとあなたの心の声なんじゃないかしら?と。
ということで、スピリチュアルとは無縁で生きてきた私にとって、ある種の不思議トリップ。これが今後の人生にどう影響するのか、実験的な楽しみでもあります。

ホテル:シックスセンシズ イビザ
URL/wwww.sixsenses.com/en/hotels-resorts/europe/spain/ibiza/
Photos & Text:Darjeeling Kozue
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