大友良英が導く!
「札幌国際芸術祭2017」現地レポート(前編)
日本全国、地域発のアートイベントが花盛り。「音楽フェスもいいけどアートもね!」的な楽しみはもう常識。10月1日まで開催中の、いま話題の『札幌国際芸術祭2017』について、現地レポートをお届けします。
札幌市立大学 芸術の森キャンパスの空中歩廊「スカイウェイ」(設計:清家清)
毛利悠子、堀尾寛太、梅田哲也
──共鳴する展示体験
続いては、札幌芸術の森からほど近い札幌市立大学 芸術の森キャンパスへ。日本のモダニズムを代表する建築家の一人、清家清の名作建築にて、大友を刮目させた若手アーティストのインスタレーションが展開されている。会場は、山の中腹から突き出たガラス張りの空中歩廊「スカイウェイ」の内部。直線状の長大な空間にさまざまなオブジェクトが設置され、歩みを進めるほどに鈴の音やフィードバック音、光の明滅などが次第に薄らぎ、摩耗・風化していくように感じられる。
役目を終えた工業機器や街路灯、廃品のピアノなどで構成された毛利悠子の作品『そよぎ またはエコー』。
「『自分の手で、自分がやりたいと思う展示を』という大友さんの言葉を受けて、北海道各地の炭坑跡や廃工場などを訪ねたときに出合ったものたちを使い、展示を作り上げました。芸術祭のサブテーマが『ガラクタの星座たち』に決まったと聞いたのは、じつは制作を開始した後のこと。ディレクターがあえて展示企画などのプランに介入しないことで、参加アーティストそれぞれの想いやヴィジョンが同時多発的に立ち上がり、共鳴しながら自然につながり合っていく。ほかの芸術祭にはない、不思議な感覚ですね」と語る毛利の言葉が、心にかすかなさざ波を立てていく。
毛利悠子『そよぎ またはエコー』(撮影:小牧寿里)
大友良英が毛利悠子の作品と出合ったのは2005年。まだ無名の若手アーティストたちによるグループ展で、毛利のほかに梅田哲也、堀尾寛太ら3名の展示を訪れ、音にまつわるさまざまな現象を伴った作品を前に「人生が変わるくらいの衝撃」を受けたという。そしてその体験が、レコードプレーヤーを使った自身の作品や即興オーケストラなどの活動へと広がっていったのだった。
毛利に続く2名の作品は、札幌市街の中心部、東京の歌舞伎町、福岡の中州とともに日本三大繁華街に数えられる「すすきの」にあった。
解体目前の元・ユニフォーム専門店舗の3フロアを探索し、電動シャッターの動きを張り巡らせたロープに伝達して光や音、動作などを空間とともに体験させる堀尾寛太の展示。市内各地で集めた廃材によって、元はデパートだったという抜け殻状の広大なフロアにインスタレーション空間を出現させた梅田哲也の作品。彼らはそれぞれ、札幌市街を見下ろす岩藻山の山頂付近と、市内の旧りんご倉庫でも展示を行っている。
自身に影響を与えた若手作家として大友から指名され、自ら探し出したそれぞれの場所で作品を作り上げた3名の展示は、それぞれに異なるアプローチを取りながら、見捨てられ、忘れられた空間やガラクタたちと向き合い、そこに再び息吹を与えるという、偶然を超えた共鳴現象を体感させる。
梅田哲也『わからないものたち』(金市舘ビル内)
毛利悠子『そよぎ またはエコー』
会場/札幌市立大学 芸術の森キャンパス
堀尾寛太『補間』
会場/AGS 6・3ビル
梅田哲也『わからないものたち』
会場/金市舘ビル
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Text:Keita Fukasawa