大友良英が導く!「札幌国際芸術祭2017」現地レポート(前編) | Numero TOKYO - Part 2
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大友良英が導く!
「札幌国際芸術祭2017」現地レポート(前編)

日本全国、地域発のアートイベントが花盛り。「音楽フェスもいいけどアートもね!」的な楽しみはもう常識。10月1日まで開催中の、いま話題の『札幌国際芸術祭2017』について、現地レポートをお届けします。

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モエレ沼公園の入口、モエレ沼にかかる橋から「モエレ山」を望む モエレ沼公園から始まる “ガラクタ×アート”のストーリー ところで、大友良英といえばノイズ的な即興演奏にはじまり、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の音楽、3.11後は福島で『プロジェクトFUKUSHIMA!』を立ち上げ、その経験を元に前回の『札幌国際芸術祭2014』では市民たちとともに集団即興オーケストラを結成、ライブ演奏による巨大盆踊り大会で話題を呼んだ。プロとアマチュア、楽器とガラクタを問わず打ち鳴らし、「こんな音楽もあるのか!」「表現ってこういうことなんだ!」と人々の頭を揉みほぐしたあの“バンドマスター”が、今度は札幌市全域を巻き込み、芸術祭そのものを奏でている。 「札幌の人たちとの協働がどんどん広がって、参加作家はすでに100組以上、まだまだ増えると思います。まさにライブです。会場もモエレ沼公園や札幌芸術の森から町中まで、強烈な混沌ぶりだけど、面白いと思いますよ」とは、「ヌメロ・トウキョウ」2017年9月号(7月28日発売)「緊急座談会! 2017年アートフェスの挑戦 逢坂恵理子×大友良英×スプツニ子!」での言葉。 そんなインプロビゼーション極まる状況を、どうやって解きほぐしていけばいいのか。まずは大友がこの芸術祭の“はじまりの地”だと語る「モエレ沼公園」を訪れてみよう。
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モエレ沼公園内「ガラスのピラミッド」。巨大な黄色のバルーンは松井紫朗の作品『climbing time / falling time』(2017年) 札幌駅から北東に約10km。青空の下、巨大な円錐形の小山「プレイマウンテン」や水遊び場「モエレビーチ」など、広大な敷地に不可思議な地形が連なる「モエレ沼公園」。この敷地全体を自らの造形作品(プレイグラウンド)として構想した世界的彫刻家のイサム・ノグチは、「人間が傷つけた土地をアートで再生する。それは僕の仕事です」と語っている。 なんとなれば、ここはかつて札幌市のゴミ=言い換えればガラクタの埋め立て地。その場所に公園を造りたいという札幌市民の要望と、札幌国際芸術祭の発端となった市民の声が大友の中でリンクし、この地に自分の作品を対峙させる試みから、今回の芸術祭のストーリーが始まったという。
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大友良英+青山泰知+伊藤隆之の作品『(with)without records』(2017年/撮影:小牧寿里) 公園にそびえる「ガラスのピラミッド」に入ると、無数の古びたレコードプレーヤーが一斉にノイズ・アンサンブルを奏でている。物語の起点にふさわしい作品、大友良英+青山泰知+伊藤隆之『(with)without records』。続いて、ナムジュン・パイクがガラクタから作り出したロボット『K-567』が佇み、掃除ロボットに乗った中古品のタヌキの剥製(伊藤隆介『メカニカル・モンスターズ』)が走り回る空間や、ピラミッドに挿入された巨大な黄色のバルーン作品(松井紫朗『climbing time / falling time』)内を探索し、3階から1階へと至る内蔵空間を見下ろすなど、屋内外あわせて6組の作品を訪ね歩く。
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松井紫朗『climbing time / falling time』(2017年)内部。高低差16メートル、3階から2階、さらにその下の1階に設置された大友良英+青山泰知+伊藤隆之『(with)without records』(2017年/一部)を見下ろす(撮影:小牧寿里) 『RE/PLAY/SCAPE』 出展作家/大友良英+青山泰知+伊藤隆之、ナムジュン・パイク、村井紫朗、伊藤隆介、ARTSAT×SIAFラボ、大黒淳一×SIAFラボ 会場/モエレ沼公園

「札幌芸術の森」の自然の中、 音を巡る冒険へ

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太Keita Fukasawa コントリビューティング・エディターほか、フリー編集者、ライターとしても活躍。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numero TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集やインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)などがある。『Numéro TOKYO』では、アート/デザイン/カルチャー分野の記事を担当。

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