許光漢(シュー・グァンハン)インタビュー「アニメの実写版を少し羨ましく観ています」 | Numero TOKYO
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許光漢(シュー・グァンハン)インタビュー「アニメの実写版を少し羨ましく観ています」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.113は許光漢(シュー・グァンハン)が登場。

台北に住む36歳のジミー(許光漢/シュー・グァンハン)が、18歳の初恋の記憶を辿る日本への旅に出る。自身も台湾にルーツのある藤井道人が監督を務めた『青春18×2 君へと続く道』が公開される。清原果耶とともに主演を務めた許光漢は、日本と台湾を横断する本作に、どんな想いで臨んだのだろうか。旅と日本のカルチャーも大好きだという彼にインタビュー。

「異文化を体験できる国際的なプロジェクトに挑戦したい」

──この作品に出演を決めた理由は?

「この作品は、日本と台湾の合作であり、2つの地域を横断するプロジェクトです。以前からそういう作品に出演したいと思っていたので、オファーをいただいたときはとても興奮しました。この作品は、青春のほろ苦さや甘酸っぱさだけでなく、旅をすることによって成長し、心が癒されていくというテーマです。それも出演したいと思ったポイントだったのですが、今回は日本語のセリフで演技をしなくてはいけないので、それが少し心配でした。でも、いつも新しいことにはチャレンジしていきたいと思っているので、思い切って挑戦することにしました」

──日本語のセリフもたくさんありましたが、どのように習得されたのでしょうか。

「クランクインする前に、何週間も通訳の先生に指導してもらって、繰り返し練習しました。藤井監督から、日本人と同じように発音してほしいと言われたんです。もちろん、訛りはあってもいいけれど、『ずっと』の小さい『っ』のような促音をしっかり発音してほしいと。僕もなるべく完璧に話したいと思っていました。というのも、今回、共演する日本の俳優のみなさんは素晴らしい方ばかりです。僕の日本語の発音が下手だったら、演技に良くない影響を及ぼしてしまうんじゃないかと思いました」

──とてもなめらかな日本語でした。『路〜台湾エクスプレス〜』の出演や、韓国ドラマへの出演も予定されていますが、国際的なプロジェクトに参加する面白さとは?

「やはり国によって文化が異なり、それを実際に体験できるのがとても面白いところです。撮影現場の流れも変わりますし、特に面白いのは、現場での食事です。国によって全く違うんです。仕事をしながら文化の違いを肌で感じることができるのは、国際的なプロジェクトならではですよね」

──今作は日本でも人気の張震(チャン・チェン)さんが、エクゼクティブ・プロデューサーを務めていましたが、どんな交流を?

「張震さんには、あらゆる面でとてもお世話になりました。ひとつエピソードを挙げるとすると、セリフの言い回しのことです。脚本は日本語から台湾華語に翻訳されているのですが、僕らからすると、どうしても言葉遣いが不自然に感じるところがありました。 張震さんに台本をチェックしていただき、この言葉はこう変えた方がスムーズになると監督に掛け合ったり、自分らしさを出すために思ったまま話した方がいいとアドバイスをくださったり。そういったことのひとつひとつがとても有り難かったです」

──本作では、台南に住む高校3年生のジミーと、18年後の36歳のジミーという2つの役を演じ分けました。この人物についてはどう感じましたか。

「まず、内面と外見を含めて、18歳と36歳のジミーに共通する点と異なる点について、色々と想像を巡らせて考えました。僕もあと数年したら36歳になるので、36歳のジミーとは心境的に近いものがあります。36歳のジミーは、ある出来事をきっかけに旅に出ます。ただの観光旅行ではなく、今まで直面することを避けていたことに向かっていく旅。これは勇気が必要なことですよね。それを通して、過去の自分の青春とはどんなものだったのか、散らばっていたパズルのピースを1つずつ集めるように、確かめながら前に進んでいきます。旅を通して自分を再発見しようとするあたりは、僕自身とも共通するところがありました。一方で、18歳のジミーはとても優柔不断で不安定です。18歳の頃の僕は、彼よりはずっとストレートな人間だったので、彼よりも、もうちょっとマシだったかな(笑)」

──作品を通して、印象に残ったシーンは?

「日本で撮影したシーンは全て印象に残っています。この作品のおかげで、日本のいろんな場所に行くことができました。松本や福島の只見町、新潟、鎌倉も、この仕事で訪れることができて良かったと思っています。列車の中から見る風景も印象的でした。映画の中で『旅は何が起こるかわからないから面白い』というセリフがあるんです。何気ないシーンなのですが、僕はこの作品のポイントだと思います。旅の醍醐味はまさにそういうところですよね」

──藤井監督とは現場でどんなやり取りを?

「どんな作品でも、撮影が進むにつれ僕と監督の考えている方向性が違うという場面が出てきます。藤井監督は、そういうとき『これはこういう雰囲気だから、こんな感じで演じてください』と、形容詞やひとつの言葉で説明してくれます。僕は監督のこの指示の仕方がとても好きでした。端的に方向性を示してくれるけれど、演じ方には余白を与えてくれて自由に演じられる。現場では監督と時間をかけてたくさん話しました。台南での撮影は、明るくてハッピーなシーンが多かったので、時々監督にイタズラしたり、冗談を言い合ったりもしていました」

「漫画もアニメも大好きです」

──18歳のジミーは、日本のアニメやゲームが好きな少年でした。許光漢さんが10代や20代の頃に親しんだ日本の文化はありましたか。また今、気になっているものは?

「僕も『ONE PIECE』『NARUTNARUTO -ナルト-』など、たくさんの日本の漫画を読みました。最近は、漫画がアニメになっていますよね。今も『鬼滅の刃』『葬送のフリーレン』『ジョジョの奇妙な冒険』などを観ているし、アニメ化だけではなく、『銀魂』や『進撃の巨人』などの作品が実写化されていて、羨ましいなぁと思っています」

──出演したいということですね!

「まずは、日本語をしっかり話せないといけませんね」

──作中に「休息是為了 走更長遠的路(一休みはより長い旅のため)」という言葉がありました。まとまった休みがあったら何をしたいですか?

「休みがあったら旅に出ると思います。今までに行ったことがない場所に行くととてもリラックスできます。リラックスするのに一番早い方法だと思います。未知のものにもたくさん出会えるし、自分一人でも友達と一緒に行ってもいいし、友達と一緒でも一人の時間は必ずあるから、町をぶらぶらしたりして、違う文化を見物することができる。旅で目にしたものが自分が悩んでいることや考えていることにヒントを与えてくれることもあります」

──今、一番行きたいところは?

「デンマークとスイスに行きたいですね」

──旅のスタイルは?

「財布、携帯、パスポート…、必要最低限を持っていきます。服は2、3日分を持っていけば、あとは現地で買えばいい。それも楽しいですよね」

──本作は夢を叶えることもキーワードのひとつですが、俳優のほかにも歌手の夢も叶えていますが、2つの夢を叶えるために必要だったことは?

「正直なところ、自分のことを歌手と名乗るのは心苦しいです(笑)。歌うことは大好きだけど、歌手というほどプロフェッショナルじゃなくて、俳優の仕事のひとつとして歌うこともあるという感じなので。でも、夢を叶えるには、好きなことを信じ続けることだと思います」

──今の夢は?

「まずは、この作品を多くの人に観てもらうことです。もっと先の夢は…、人間が成長するたびに目標は変わってくるものだから、今、5年後、10年後の話をしてしまうのはちょっと贅沢なことかもしれません」

『青春18×2 君へと続く道』

18年前の台湾。カラオケ店でバイトをする高校生・ジミー(シュー・グァンハン)は、日本からきたバックパッカー・アミ(清原果耶)と出会う。天真爛漫な彼女と過ごすうちに、淡い恋心を抱くが、突然アミが帰国することに。時が経ち、人生につまずき故郷に戻ったジミーは、アミから届いた絵ハガキを手にし、彼女が生まれ育った日本へ。東京から鎌倉、長野、新潟、アミの故郷・福島へと向かう。

監督/藤井道人
原作/ジミー・ライ「青春18×2 日本慢車流浪記」
脚本/藤井道人、林田浩川
音楽/大間々昴 撮影/今村圭佑
出演/シュー・グァンハン、清原果耶、ジョセフ・チャン、道枝駿佑、黒木華/松重豊/黒木瞳
エグゼクティブ・プロデューサー/チャン・チェン
主題歌/Mr.Children「記憶の旅人」(TOY’S FACTORY)
配給/ハピネットファントム・スタジオ
©︎2024「青春18×2」Film Partners
https://happinet-phantom.com/seishun18x2/
5月3日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

Photos:Ayako Masunaga Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Chiho Inoue

Profile

許光漢(シュー・グァンハン)Hsu Kuanghan 1990年生まれ、台湾出身。俳優として活躍中。13年、ドラマ「潛入藍中籃」で初主演し俳優デビューを果たす。19年、ドラマ「時をかける愛」で大ブレイクし、台湾のエミー賞とも称される第55 回金鐘獎の連続ドラマ主演男優賞にノミネートされ、中華圏以外に、韓国などアジアからの注目も集める。おもな映画出演作に、『ひとつの太陽』(19)、『僕と幽霊が家族になった件』(23)などがある。

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