緊急座談会! 2017年アートフェスの挑戦
逢坂恵理子×大友良英×スプツニ子!
日本全国、地域発のアートイベントが花盛り。「音楽フェスもいいけどアートもね!」的な楽しみはもう常識。でも「アートを“客寄せパンダ”にするな!」という議論も加熱中。この夏、日本のアートフェスはどうなる? 百花繚乱のアート祭り。いざ予習と参りましょう。
芸術祭は“未来をつくる原動力”
──芸術祭はシリアスな社会問題も扱う一方、“祭り”の祝祭性もあり、そのバランスが難しいのでは?
大友「祭りがシリアスではないなんてとんでもない。僕も3.11後に各地で祭りに関わった(注2)けど、“まつりごと”という言葉があるくらい、祭りは本来は人々がアイデンティティを保つための根幹にあるもの。近代化でどうでもいいものになっちゃったけど、祭りのあり方をシリアスに考えないと社会そのものが疲弊していくと思いますよ。その意味で、芸術祭の“祭り”の部分をちゃんと考えることこそが、社会にコミットすることだと思っています。別府の『混浴温泉世界』(注3)は、芸術祭で街と人に変化が起きたいい例。祭りって本当に大切なものだと思う」
スプ子「その意味では、去年参加した『瀬戸内国際芸術祭』(注4)では、豊島の方々にとって私は“異物”だったと思います。でも自分では、異世界の声を届け、つなぐことを楽しんだ感じもあります」
逢坂「ヨコトリに向けてスプツニ子!さんにいただいた言葉『アートなら世界中に点在する“ガラパゴス”を、これまでにない方法でつなげることができる』も印象的です」
──SIAFのサブタイトルは「ガラクタの星座たち」。ヨコトリと“星座”の視点を共有していますね。
大友「これは『芸術祭って何だ?』の問いに僕も答えなきゃと、一晩悩んで生まれた言葉で、偶然なんだけど……恐縮です(苦笑)」
逢坂「気にせず、広い“宇宙目線”で行きましょう(苦笑)。アートは世界の諸問題の特効薬ではないけれど、アーティストの柔軟な思考からは現代を生きる上で必要な多様な視座を得ることができます。芸術祭はその入り口。子どもたちから社会を動かす人々まで、自分の五感や身体感覚を研ぎ澄まして体験してほしい」
大友「芸術祭って作品だけの話ではなく、そこへの関わりや祭りを通してどう社会化していくかこそが、“未来”をつくる何らかの原動力になるのかも。そう感じているんです」
スプツニ子!(Sputniko!)
現代アーティスト。1985年、東京都生まれ。英国王立芸術学院(RCA)在学中より、テクノロジーで変化していく人間のあり方や社会を反映した作品を制作。2013年より米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教に就任し、現在ボストンと東京に在住。メディア出演、受賞など多数。著書に『はみだす力』(宝島社)。
逢坂恵理子(Eriko Osaka)
『ヨコハマトリエンナーレ2017』コ・ディレクター。東京都生まれ。水戸芸術館現代美術センター芸術監督、森美術館アーティスティック・ディレクターを経て、2009年より横浜美術館館長。2001年ヴェネチア・ビエンナーレ日本館コミッショナー、2011年にヨコトリ総合ディレクターを務めるなど、国際展を手がけている。
大友良英(Yoshihide Otomo)
『札幌国際芸術祭2017』ゲストディレクター。作曲家、プロデューサー。1959年、横浜市生まれ。ノイズ的な即興演奏からNHK連続テレビ小説『あまちゃん』の音楽、多様な人々との協働による展示作品『アンサンブル』や、3.11後に『プロジェクトFUKUSHIMA!』を立ち上げるなど、分野を超えた活動を続ける。
Photos : Shuichi Yamakawa
Text : Shinichi Uchida
Edit : Keita Fukasawa