緊急座談会! 2017年アートフェスの挑戦
逢坂恵理子×大友良英×スプツニ子!
日本全国、地域発のアートイベントが花盛り。「音楽フェスもいいけどアートもね!」的な楽しみはもう常識。でも「アートを“客寄せパンダ”にするな!」という議論も加熱中。この夏、日本のアートフェスはどうなる? 百花繚乱のアート祭り。いざ予習と参りましょう。
新進アートフェスの実験的地平 ──札幌国際芸術祭(SIAF)は2014年に初開催。前回のゲストディレクターは坂本龍一さんで、今回は大友さんが挑みます。 大友良英(以下、大友)「2回連続で音楽家がディレクターに指名された意味を考えつつ進めています。最初はただの点でも、二つ目の点が入ることで芸術祭の方向性ができますから。『芸術祭ってな大友んだ?』というテーマは、なるべく多くの人を巻き込んで、そのことを考えるための呼びかけなんです。横浜と同様、札幌も町おこしでやっているわけではないですし、元々は市民から芸術祭をやりたいという声が上がったのがきっかけでした。だったら、ここでやりたいことは何なのか、バンドみたいに札幌のみんなで話し合うところから始めようと」 スプ子「いわば、ディレクターではなく“バンドマスター”?」 大友「そうなんです。これまでの芸術祭のようにするんじゃなく、札幌で新しい芸術祭をやる意味をとことん考える必要を感じたから、みんなの本音を引き出したかった。歴史的には美術はアーカイブを見せ、音楽はその場で生まれるものを聴かせることが中心だったのが、近頃は美術も“生成されるもの”に接近している。だったら今回はアーカイブ展ではなく、美術であれ音楽であれ、そのどちらでもないものであっても、とにかく音楽のようにその場で生まれるものを中心に見せていこうと思いました。せっかく音楽家がやる芸術祭なんですから」 逢坂「それは面白そうですね。具体的には、どういう試みに?」 大友「例えば音楽ユニットのテニスコーツには、会期中ずっと札幌にいて、見た作品すべてに反応してほしいと頼みました。いつどこで何をやるか、今は誰にもわかりません。毛利悠子さんや梅田哲也さんには、会場も自分たちで探してもらっています。そうやって札幌の人たちとの協働がどんどん広がって、参加作家はすでに100組以上、まだまだ増えると思います。まさにライブです。会場もモエレ沼公園や札幌芸術の森から町中まで、強烈な混沌ぶりだけど、面白いと思いますよ」 スプ子「ライブ感があって楽しそうです! それに、芸術祭にもいろんな形があっていいと思います。14年の『道後オンセナート』は温泉街でゆっくりアートを楽しめたし、7月30日まで開催の『北アルプス国際芸術祭』では、アートに刺激を、自然には癒やしをもらえそうですよね」
Photos : Shuichi Yamakawa
Text : Shinichi Uchida
Edit : Keita Fukasawa