幸せを学ぼう! 科学編
ハッピーになるためのキーワードを解説
幸せの形が多様化するなか、どうやったら最大限ハッピーを享受できるのか? 科学、経済、言語、女性学…各分野の豪華講師陣がハッピーになるためのキーワードを伝授。(「ヌメロ・トウキョウ」2017年3月号掲載)
Section 4
誰が自分の存在を認めてくれるか?という問い
タモリさんがある番組でこう言っていました。「今の子は大変だよね。自分と向き合わないといけないでしょ。つらいねぇ」と。確かに昔は住んでいる村が自分の生きる意味を与えてくれました。「どこどこ村の娘」ということで良かったわけです。しかし、都市に移り住むようになって、今度は会社が自分を定義づける役目になりました。「ソニーの部長だった」ことを一生の誇りとして生きていけたのは、1つの会社を勤めあげるという古い時代の発想です。
これまでは自分の存在を認めてくれる何かが必ずあった。これから私たちはどうやって自分を認めていくべきなのだろう。
しかし今は誰も会社にコミットしていません。むしろコミットしているのは業界です。例えば、エンジニアは会社にはコミットしていないけど、業界にはすごくコミットしていますよね。ただ業界の移り変わりはすごく激しく、これからの時代は一つの業界に軸足を置くのはリスクになるでしょう。二つ、三つの業界に軸足を置きながら、仕事する。そうなったときに、いったい誰が私の生きる意味、私という存在を定義づけるのか? その迷いからか今の若い世代はネット上に自分という存在を求めているのかもしれません。SNSで複数のアカウントでいくつものキャラを演じ分け、そして明らかにキャラ疲れを起こしています。
その場その場で仮面を次々と着け変えてきたけれど、「仮面をとった私ってなんだっけ?」と途方に暮れている状態に思えます。今までは誰かが決めてくれていましたが、自分で自分に意味を与えるという人類史上初の経験をする時代が到来しています。
Illustration:Walnut
Interview & Edit:Sayumi Gunji
Text & Edit:Etsuko Soeda