菊地凛子さんと巡る!『ヨコハマトリエンナーレ2014』の楽しみ方 | Numero TOKYO - Part 3
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菊地凛子さんと巡る!『ヨコハマトリエンナーレ2014』の楽しみ方

──ということは、見終わったいまも、まだ心の中がざわざわしている感じですか? 菊地「ものすごく……ざわざわしてます(笑)。でもそれって、“作品からのメッセージ” が心の中で響いているということじゃなくて、逆に “自分の中で鳴っているもの” だと思うんです。ぱっと見てカラフルな作品じゃなくてもじつは “色” があったり、音符がなくても “音” があったり……アートって、見る人の中で作品と共鳴して鳴っているものを、改めて確かめられるものなんじゃないかな、と思います。 その意味で今回の『ヨコハマトリエンナーレ2014』は、そういったもの──幼少期の感覚や、その頃の父親・母親に対する想いとか、誰もが心の中に持っていながら忘れてきたものをどんどんかき立てながら積み重ねていって、最後の大竹伸朗さんの作品で ぱあっ!と 解放してくれる。『ああ、よかったなあ』って。そういう展示構成も、素晴らしかったですね」
やなぎみわ『演劇公演「日輪の翼」のための移動舞台車』(台湾での展開風景 Photo: SHEN Chao-Liang) 新港ピア会場のエントランスの大空間に設置され、会期後は日本各地の聖地へと漂流の旅に出る。
やなぎみわ『演劇公演「日輪の翼」のための移動舞台車』(台湾での展開風景 Photo: SHEN Chao-Liang) 新港ピア会場のエントランスの大空間に設置され、会期後は日本各地の聖地へと漂流の旅に出る。
──森村泰昌さんは今回の展示を “忘却めぐりの旅” というコンセプトで構成していますが、最後の第11話のテーマは「忘却の海に漂う」で、展示を見終わると同時に横浜の海の眺めが開けます。まさに、さらなる旅に誘(いざな)われたわけですね。 菊地「そうですね、最後にすっきり “船出” をさせてもらいました! アートを作る側も見る側も、昔の想いを自分の中に溜めている人や、節目節目に置いてきている人など、いろいろな人がいると思うんです。だから、さまざまな作品を見ていくうちに、作家の想いと自分との間で通じる部分がざわざわしてきて、最終的にそれを海へ向かって解放する……! というような、大きな流れを感じました」
新港ピア会場にて。奥に見える立体作品は、ヤン・ヴォーによる作品『我ら人民は』(部分)。 ©Yuichiro TANAKA
新港ピア会場にて。奥に見える立体作品は、ヤン・ヴォーによる作品『我ら人民は』(部分)。 ©Yuichiro TANAKA

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太(Keita Fukasawa) フリー編集者/ライター/『Numéro TOKYO』コントリビューティング・エディター。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numéro TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集・執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集や、編集者9人のインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)など。

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