菊地凛子さんと巡る!『ヨコハマトリエンナーレ2014』の楽しみ方
ちなみに今年のヨコトリは、現代美術作家の森村泰昌(もりむら・やすまさ)がアーティスティック・ディレクターとして全体の企画を構成。
森村泰昌といえば、ゴッホの自画像をはじめとする名画や、チェ・ゲバラ、オードリー・ヘップバーン、マイケル・ジャクソンなど、歴史上の人物に紛したセルフポートレート作品で知られる、日本を代表するアーティストのひとり。
今回は美術家としての視点から、「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」というタイトルのもと、全65組400点以上の作品をひとつの物語の中に位置付けています。
──今年のヨコトリは、序章から第1話〜第11話へと至る物語として全体が構成されています。一見、静かでミニマルな作品から展示が始まりますが、最初の印象はどうでしたか?
菊地「第1話の部屋は『沈黙とささやきに耳をかたむける』というテーマですよね。じつは、展示室に入ったとたん、『これってぜんぜん沈黙じゃない!』って思いました。いろんな作品がそれぞれにいろんなものを放っていて、心がざわざわして……『どれだけ騒いでるんだ!』って(笑)。私ってたぶん、心がざわざわするようなアート作品が好きなんだと思うんです。だからその意味でも、最初から一気に引き込まれました」
──ところどころで足を止めて、「面白い!」とか「これは……ヤバいですね!」と作品に見入っていましたが、必ずしも派手ではない、コンセプチュアルな作品に反応していたのが印象的でした。振り返ってみて、どんな作品が気になりましたか?
菊地「そうですね……第1話なら、コンクリートの塊からアンテナが突き出ているイザ・ゲンツケンの『世界受信機』とか、第6話『おそるべき子供たちの独り芝居』のジョゼフ・コーネルの作品とか。
あとは、坂上チユキのぎっしり描き込まれたすごく細かい細胞みたいなドローイングとか、松澤宥(ゆたか)のスケッチブックやドローイングで埋め尽くされた空間の中とか……ほかにもたくさん。映画にしても、観終わったあとに『あれはどういう意味だったんだろう』って、人と語り合ったりするじゃないですか。アート作品もそれと一緒で、見た後で自分の中にしこりのように残っている部分が大事なんだと思うんです。
今回はそれがすごかったですね」
Text:Keita Fukasawa