Art / Editor's Post

小室哲哉によるオンライントーク番組「Ground TK」第一回ゲスト:河瀨直美【前編】

Ground TK x Leslie Kee -  Volume 1 GUEST:河瀨直美 WARDROBE:YOHJI YAMAMOTO
Ground TK x Leslie Kee - Volume 1 GUEST:河瀨直美 WARDROBE:YOHJI YAMAMOTO

アートギャラリーとしてもオープンした渋谷スクランブルスクエア15階のSCRAMBLE HALLにて、小室哲哉さんと第一線で活躍するクリエイターの対談番組「Ground TK」が2ヶ月に一度ぐらいの頻度で開催されることが決まりました。

そこではArt / Fashion / Music / Cultureなど様々な分野において、世界で活躍する著名人との対話を実施し、オンライン配信をするそうです。各分野の最新のトレンドを知りながら、対話を通して今後の新しい生き方や価値観に触れられる機会です。

第一回目のゲストは10月23日に映画『朝が来る』の公開が予定されている河瀨直美監督です。

小室哲哉×河瀨直美「タイムラインに乗っかっていく芸術」

小室「『朝が来る』は僕にとってエンターテインメント性のある映画でした。次どうなるのだろう、次どうなるのだろう? ってなって。映画や音楽もそうですがタイムラインに乗っかっていく芸術なので、時間が過ぎないと作品といえませんよね」

河瀨「映画はストーリーでタイムラインを見てもらう、そこをつなげていかないと感動につながらない」

小室「イントロがあってサビがあって。サビにもっていくための伏線であったり・・・。そういう意味で、僕が見た中で、この映画は力のいれようを感じました。そこまで引っ張っていく、持っていくぞという決断や決意を感じました」

河瀨「まさに執念ですね」

『朝が来る』は、河瀨監督自身も経験している養子縁組をテーマにしたストーリー。また永作博美が演じる佐都子と、蒔田彩珠が演じるひかりの、ふたつの物語をひとつに合体させ、それをひとつのタイムラインで見るという内容になっている。

河瀨「ひとつの地続きの現実をどう見るのか。その話を小室さんと前にもしたことがあるのですが。小室さんも音楽というものに乗せたストーリをー届ける人なんだなと思いました。優しさに触れたら優しくなる、意地悪されると意地悪になる。人ってそう。だから、愛をもっと届けていきたいです」

音楽から引退宣言をした小室哲哉が、またステージに戻ってきた、その経緯について。

小室「心のそこからやめたかったわけではないのですが、いろんな事情があり・・・。人生が終わった感じでした。定年って言葉もあるしな〜とか自分に言い聞かせていました。あの日は一度、家のベッドで号泣してから記者会見に行ったんですけどそこから楽器にも触れず、耳も調子を悪くしたことりもあって、何もせずに2年8ヶ月が経ったんです。結局、コロナ禍で、ずっと家にいるという状況が普通になったんですけど」

河瀨「自分から映画を奪われるって考えるとどれだけつらいか、表現者のひとりとして理解できます。2年経ってやっぱり音楽なんだと思われた経緯は何だったんですか?」

小室「僕は、音楽学校に行ってたわけでもないし自己流で音楽を作ってきたんだけど。何十年と僕のつたない音楽知識で紡いできたメロディをとことん愛してくれる友がいたこと。ずっと、常に定期的に背中を押されていて。緊急事態宣言が発令された時期に、やってみようかなと」

河瀨「そのタイミングはなぜ?」

小室「みんな仕事に行ったり外に出かけたりしたいはずなのに、一生懸命無理に家にいるのに、僕はひとりで勝手に、誰かに無理強いされたわけでもないのに一人家にいて何もしていないって情けないな〜、これでいいのかと思ったのがきっかけです」

河瀨「小室哲哉という炎が灯火みたいになっていたところに、風を吹きかけて燃え滾らせようとしてくれる人がいたのですね。その火が小室さんの中に広がっていったという感じなんですね」

小室「はい。90年代は作詞作曲編曲をひとりで3日で仕上げていたんですけど、いまは一曲作るのに一ヶ月かかりました。ちょっとずつちょっとずつやってみた感じです。そしてその友人に送ったら、ひとこと『おっ、きたね〜っ』て返事をくれました。世に出す前にある仲間から『やったね!きたね!』って言葉をもらいました。お客さん代表としてそういうことを言ってくれる人がいて」

河瀨「小室さんは音楽がないと生きていけないですね。私が映画がないと生きていけないのと同じように」

小室「作ることの喜び、出来たという喜びを感じています。音楽に携わってかれこれ40年。40年の中でこれはいけそうだな、という気持ちです。まだ結果はでていないけど、それを感じたときに幸せを感じる」

河瀨「あの栄華に返り咲きたいという気持ちはありますか?」

小室「原点に立ち帰りたいです。僕はもともとミュージシャンであって、テレビとか雑誌とかメディアに露出するのは曲を知ってもらいたいからで・・・。本当はスポットライトを浴びたいのではなく、とにかく音楽が作りたい、それが自分の姿です。もっと言えば、欲してくれる人が向こう側に見えるのか見えないのかですね。そういうことを感じられる瞬間があるのかどうか。少しずつですがしばらくはそういう気持ちでやっていきたい」

河瀨「ひとつひとつのつながりをつくっていくことが自分を支えてくれますよね。実感もできるし。スポットライトだけ浴びて舞台上のステージにいるだけだと見えてこないことが多く、気づくとベルトコンベアに乗せられていってるような感覚になります」

小室「ほとんどそうでした。しゃべりがうまいわけでも得意なわけでもなければ、人前が苦手なので、どこでどうしてこうなっちゃったんだろうなという感じでした。言葉で言うのは簡単ですが、いろんな意味で、リセットとかリスタートですね。この時期に、仕事をさせてもらえる機会を与えてもらえたなら、非常に救われています」

対談のあとは、小室さんのライブが披露されました。まるで河瀨直美監督にむけて弾いているようでした。

Photos:Leslie Kee Styling:Dan Hair:Koki Noguchi Make-up:Mariko Suzuki

Profile

田中杏子Ako Tanaka 編集長。ミラノに渡りファッションを学んだ後、雑誌や広告に携わる。帰国後はフリーのスタイリストとして『ELLE japon』『流行通信』などで編集、スタイリングに従事し『VOGUE JAPAN』の創刊メンバーとしてプロジェクトの立ち上げに参加。紙面でのスタイリングのほか広告キャンペーンのファッション・ディレクター、TV番組への出演など活動の幅を広げる。2005年『Numéro TOKYO』編集長に就任。著書に『AKO’S FASHION BOOK』(KKベストセラーズ社)がある。

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