Building is….. | Aisa Arikawa
Aisa Arikawa

Building is…..

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「なぜ今、この展覧会を行うのか?」
 
その議題から始まった、NUMERO TOKYO URBAN NIGHTのメインイベントは、
社会学者の古市憲寿氏とアーティストの鈴木康広氏によるトークショー。
 
会場となったEspace Louis Vuittonでは、昨年Parisにオープンした、Louis Vuittonの文化・芸術複合施設であるFoundation Louis Vuittonとその設計者であるフランク・ゲーリーをテーマとした展覧会が開催されています。
 
建築を建築以外のアカデミックな見解から考える。
そういう機会はあまりないので、大変刺激的な夜になりました。


「ぐちゃっ」
 
まず、本展覧会を見た古市氏の最初の感想「ぐちゃっ」としている。
日本ではまず見ない、というよりも考えられない形態なので、率直な意見ではあります。
(だから、ザハのものとかも非難されるんだよな…)やっぱりそうなるよねと思いながら聞いていたら意外な展開に。
 
絶え間なく移ろいゆく世界の中で、何かを定着させなければならない「建築」において、
実はこの一見「ぐちゃっ」とした形状が逆に自然な形態なのではないか?というのです。
 
この「ぐちゃっ」、つまり奇抜な形状が目立ってしまいがちなゲーリー建築ですが、
実は内部空間から何度も何度も模型を作ってスタディした結果としての外皮なので、
彼にとっては確かに自然、というか必然的に導かれ出したかたちなのです。


「内と外」
 
「内/外」問題は、建築学生なら一度ならずとも悩むテーマなのですが、今回はアートの観点から考えてみます。

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鈴木氏の「空気の人」の一連の作品を例に。
(実はこの作品は、超軽量オーガンザ用のマネキンとして元々製作されたという背景も面白かった)
金沢21世紀美術館での展示の際、この大きな空気の人と一緒に庭でみんなでお昼寝してみたそう。
ただ展示するだけではなくて、これを企画したキュレーターがすごい。
 
そこで気づいたのが、みんなが寝っころがっていると、立っていたり、ベンチに座ってたりする人が逆に目立つということ。
「同じ行動をする人/しない」人の構図は、「内/外」問題に似ている。
 
建築の場合は、文字通り物理的に内と外の境界を曖昧にすることを目指すのだけど、
それも結局のところ目指すのは心理的な内/外の壁を取り払うこと。
 
この話を聞いて思い出したのが、TEDのこちらのスピーチ。
ーデレク・シヴァーズ 「社会運動はどうやって起こすか」
 
ある人の突飛に見えるかもしれない新しい行動も、それに1人フォロワーがつけば発起人である人はリーダーになる。
勇気をもって、固定概念を破り新しいムーブメントに加わってみること。
きっと、それによって自分の世界の見方は変わるし、さらに自分にフォロワーがつけばもう怖くない。
もちろん自分がリーダーになってもいい。
最初は疎外された気分だけど、気づいたらフォロワーがたくさんできて、仲間になるかもしれない。
 
内と外は表裏一体。


「アフォーダンス」
 
上記の「空気の人」昼寝体験を通じて分かったことがもう一つ。
アート作品を通じて身体体験をすることで、建築のスケールや土地条件を考えるきっかけになったということ。
「寝ころがる」という体験によって、その場所に寛容になり、行動が自由になる。
 
つまり、これもある意味「内/外」の境界の曖昧化というか、自分(内)の外にある建築という関係ではなく、
自分なりに建築を解釈して楽しむ、建築を自分の内部に取り込むことができるようになるということ。
 
建築との距離を近づけるメディアが必ずしもアートである必要はないし、
そもそもアート自体が「外」要素の強いものだと思うのだけど、
その作品や空間のアフォーダンスを高める為に必要なのは、やはり「インタラクティブ」性なのだろう。
「インタラクティブ」=デジタルみたいな思考が根付いている気がするけど、
実体験、可能な限りアナログな手法でインタラクティブを実現できるのが理想的だと思う。
(それは、先月オランダの美術館を見て来て実感したことでもある。)
 


 
Processed with VSCO with a8 preset
Volume模型。個人的にこのマットなアクリルのかたまりが大好き。
 
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従来の2D図面ではもはや施工不可能な段階に入っている。
3D図面をもとにナンバリングで施工していく様子が想像できる模型。
 
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人の添景の量とその置き方に優しさとこの建築の楽しさを感じられるほぼ完成形の模型。
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多様な先端技術やドローンを用いて撮影された外観映像
 
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色もかたちも美しいFinger Food(実は全部あまくない)

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「不確定なものを、どう確定させていくか。」
 
最後に出たこのキーワードが、最初の問いかけの一つの答えなのかもしれない。
より不確定で不安定なものが多くなっている現代の都市において、
手法、メディアの違いはあれど、確定できる能力、確定した「もの」や「こと」として
表現できる力が求められていくのではないだろうか?
単なる最適解としてでなく、オリジナリティとパッションを持った表現として。
 
21_21 Design Sightで開催中のゲーリー展も合わせてどうぞ。
 


 [info]
/FRANK GEHRY/FOUNDATION LOUIS VUITTON
日時:2015年10月17日- 2016年1月31日
場所:Espace Louis Vuitton Tokyo
URL:http://www.espacelouisvuittontokyo.com/

 

/建築家 フランク・ゲーリー展 I Have an Idea
日時:2015年10月16日(金)- 2016年2月7日(日)
場所:21_21Design Sight
URL:http://www.2121designsight.jp/program/frank_gehry/

 

Profile

aisa arikawa
TOKYO
student of architecture
 

1990年生まれ。インテリア、ファッションから「場」について考える端っこ建築学生。キラキラしたダイヤモンドよりもマットで温かい質感の陶器が好き。そんな私のちょっと外れた視点から眺めたデザインの世界。

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