
日本が世界に誇る名湯、群馬県・草津温泉。毎分3万リットル、家庭のバスタブであればわずか4秒で溜まるという圧倒的な湧出量を誇り、江戸時代から病が治癒する薬湯として広く親しまれてきた。現在でも「にっぽんの温泉100選」で23年連続1位に輝くなど、不動の地位を築いている。
そんな草津に古き良き温泉街の賑わいと、緑あふれる高原リゾートステイを同時に叶えるデスティネーションが誕生した。星野リゾートが展開する温泉旅館ブランド「界」の新たな施設「界 草津」だ。
標高約1,234mに位置する“木立の湯宿”

草津温泉バスターミナルから、タクシーで5~10分ほどの場所に位置する「界 草津」。温泉街よりも高台に位置し、その標高は約1,234メートル(レセプションフロア)にも及び軽井沢よりも高い。柿渋色の暖簾がかかったメインエントランスから、黒塀に囲まれたブリッジを渡る際には青空を見上げることができ、自然との美しい一体感を得られる。

その先で出迎えるのは、「石の間」だ。眼下には、高原リゾートを思わす静かな木立の世界が広がり、澄み切った涼やかな空気に包まれる。建築デザインを手掛けたのは、「星のや軽井沢」なども担当した佐々木達郎氏が代表を務める佐々木達郎建築設計事務所。草津の温泉は酸性が強く、鉄などの金属をすぐに錆びさせてしまうという特性がある。

「界 草津」ではその過酷な自然環境を逆手にとり、経年変化による錆そのものを自然の美しさとして捉え、「然美(さび)」という建築コンセプトに込めた。あえて少し錆っぽい印象を与えるデザインや素材が取り入れられており、草津温泉ならではの自然の力や美しさが感じられるようになっている。

さらにフロントへと足を進めると現れるのが、草津温泉の「湯畑」「湯けむり」を表現したテキスタイルだ。館内随所に散りばめられたこれらのテキスタイルは、世界的に活躍するテキスタイルデザイナーの須藤玲子氏がデザインを手掛けている。
ブランド最大の約3万坪、全室48㎡以上。自然と絹産業の歴史を織り込んだ客室

「界 草津」はブランド最大規模となる約3万坪もの広大な敷地面積を誇る。客室数も94室とブランド最多で、スタンダードタイプでも48㎡もの広さで、かなりゆったりとした造りだ。お部屋は、製糸業にゆかりのある群馬県にちなみ「シルクアートの間」と名付けられている。

室内に入ると、湯けむりをイメージしたという壁面や、木立の家を想起させるジグザグとした意匠の天井が目を引く。草津の紅葉からインスピレーションを得たソファや、高原植物であるナナカマド、マユミなどをモチーフにしたオリジナルテキスタイルのクッション、繭の廃材を活用したランプシェード(スタンダードの客室に設置)が、和の空間にクラフトな彩りを添えている。

寝室には、界オリジナルのマットレス「ふわくもスリープ」を完備。広さ48㎡で最大3名まで宿泊可能なスタンダードタイプをはじめ、72㎡の露天風呂付の和室が18室、愛犬ルームが3室用意され、老若男女多様な需要に応える。

アメニティも界ならでは。結び方次第でカバンにもなる「界 草津」オリジナルの風呂敷や、館内外で着用可能な上下に分かれて動きやすい作務衣や足袋のほか、浴衣の貸し出しもある。

さらにオリジナルのバスアメニティは、和漢生薬成分を使用。愛らしい卯三郎こけしや、平織り絹織物として希少性が高い伊勢崎銘仙(露天風呂付き客室のみ)が飾られ、細部からも上州文化が感じられる。
ブランド初の2つのダイニング。敷地内に「蕎麦割烹 SAI」が誕生

「界 草津」は、ブランドで初めて2つのダイニングを有している。ひとつは、プライベート感あふれる半個室空間で味わう「上州豊伝会席」だ。
夕食のスタートを飾るのは、群馬・吾妻地方名物の「花豆」を使った味噌とイノシシ肉のリエットにネギのペーストを乗せた「花豆味噌とイノシシのリエット 湯もみ見立て」。草津らしさあふれる、遊び心のあるプレゼンテーションに心が躍る。
群馬県民にお馴染みの「上毛かるた」が描かれた特注の木箱で提供される「宝楽盛り」も、目にも楽しい盛り合わせだ。お造りに加え、群馬名産のこんにゃく、きのこのおろし和えなどの八寸が美しく並ぶ。

「海老蓮根俵揚げ」と、海苔と油揚げを使った「磯辺真丈信田揚げ」に続くメインは、上州常夜鍋。骨付き鶏もも肉を丸ごと煮込んだ出汁に、群馬名産のほうれん草や豚肉を一緒に入れた鍋で、これまた群馬名物の梅を使った梅ごまや七味をお好みで加えて味わいの変化を楽しむ。
締めは日本三大うどんの一つである群馬の「水沢うどん」を鍋の残った出汁に入れていただく。デザートは養蚕が盛んだった群馬県にちなみ、「繭(まゆ)」をイメージしたムース。中には名産の花豆をペースト状にした餡が入っており、すっきりとした甘さが食後にぴったりだ。

翌朝の朝食は、和食と洋食から好みに合わせて選べる。和食は郷土料理の「こしね汁」や下仁田納豆、鯖の焼き漬けなどが並ぶ身体に優しい献立だ。

一方の洋朝食は、おでんの具材をコンソメでじっくり煮込んだユニークな「おでんポトフ」を中心に、甘酒と人参のドレッシングで味わうサラダ、ベイクドエッグ、カポナータ、ソーセージや生ハム、スモークサーモンなど、和の要素も取り入れた彩り豊かな品々がテーブルを飾る。

ダイニングのもうひとつの選択肢が、アラカルトでも気軽に利用できる「蕎麦割烹 SAI」だ。界の施設として初めてビジター利用ができるダイニングでもあり、連泊時のランチやディナーにも重宝する。

主役となるのは、地粉・生粉打ちにこだわった「十割蕎麦」だ。蕎麦には、鰹、昆布、干し椎茸から引いた風味豊かな三段つゆを合わせている。ランチではこの十割蕎麦を使ったざるそばや、鴨の香ばしさが溶け出た鴨南蛮蕎麦、出汁つけ蕎麦が人気だ。

ディナーの地粉生粉打ち蕎麦会席は、鴨ロースやからすみ蕎麦、クリームチーズの味噌漬けなどの蕎麦前から始まる。

刻んだピーナッツを合わせたお造りや、夏らしいトウモロコシの餡をかけただし巻き卵など、日本酒やワインに合う酒肴も嬉しい。
メインは「和牛サーロインのしゃぶしゃぶ 蕎麦湯仕立て」と「鴨と葱の焼きしゃぶ」からお好みをチョイス。鴨は鉄板で焼き、そばつゆのかえしや山葵、柚子胡椒をつけていただく。

特性のざる蕎麦は、海老や野菜の天ぷら付き。塩やそばつゆだけでなく、特製の胡桃だれが絶品なのでぜひ追加注文を。デザートも「温泉卵プリン」や「黒胡麻和三盆のわらび餅」、「ミルクアイスクリーム 花豆添え」の3種類から選べる充実ぶりだ。
2泊目半額だからこそ叶う、ゆとりある草津温泉での体験の数々

施設内にいながらにして、特徴の異なる2つの源泉を堪能できるのも「界 草津」の魅力。大浴場と露天風呂には「万代鉱源泉」という源泉が引かれ、源泉温度が90度近くもあるあつ湯が40度から42度に調整されている。ピリッとした刺激的な肌当たりが特徴だ。もうひとつの内湯には、引湯が難しいとされる「西の河原」源泉を使用している。こちらは37度から39度と比較的温度が低く、柔らかな肌当たりでゆっくりと長湯がしやすい。

露天風呂は硬質な巨岩を組み合わせたモダンでダイナミックな造り。周囲の豊かな自然や木立に囲まれた開放的な環境で、心地よい風を感じながら湯浴みを堪能できる。

湯上がりには、薪が爆ぜるラウンジでアイスキャンディーや飲み物でクールダウンを。トラベルライブラリーで絵本「温泉話」をめくったり、外の緑を眺めたりと、至福の時間を過ごせる。

「界 草津」が提示する「木立の湯宿」と「温泉街」という2つの世界観を余すことなく堪能するなら、ぜひ連泊をおすすめしたい。界ブランドでは「界 草津」で2泊目が半額になるなど、連泊優待プランが豊富に用意されているのだ。

時間にゆとりのある連泊ステイだからこそ、界が提案する本格的な湯治体験「うるはし現代湯治」にじっくりと身を委ねてみたい。到着後はまず、草津の泉質や効果的な入浴法を学ぶプログラム「温泉文化いろは」に参加し、湯治の基本を習得しよう。

そして、ご当地楽「シルクを紡ぐ上州座繰り」も必見だ。座繰り機を使って繭から生糸をひく伝統的な手仕事に触れ、上州の歴史に思いを馳せる穏やかな時間を過ごせる。
翌朝は、爽やかな山の空気を感じながら「草津白根山体操」に参加して、身体の隅々まで心地よく目覚めさせよう。

朝食後は、宿が用意するまちめぐりセットを持って、温泉街でのそぞろ歩き・外湯めぐりへ。宿から温泉街までは歩いて約10分で、散歩にちょうど良い距離だ。敷地内の庭園を歩き、エレベーターを降りて、トンネルを抜けると、活気あふれる草津温泉街が現れる。道すがらさえもちょっとした探検のようで、ワクワクしてしまう。

温泉街は日帰り温泉や足湯、源泉のスチームを直接顔に当てる顔湯など、温泉アクティビティが満載。

温泉まんじゅうや温泉卵、たまこんにゃくや、ぬれせんべいなど、ご当地グルメ、お土産屋さんも充実しているので、たっぷり半日ほどかけて楽しみたい。
温泉街の喧騒から静寂の森へ。2つの非日常に癒される新しい草津旅

喧騒を忘れさせる静かな高原リゾートと、名湯が湧き出る活気ある温泉街でのローカル体験。トンネルを行き来することで、この2つの世界観を自由に横断できる「界 草津」は、新しい草津旅を提案している。猛暑が予想される今年の夏は、避暑地としてもおすすめしたいディスティネーションだ。
住所/群馬県吾妻郡草津町大字草津字白根464番地690
TEL/050-3134-8092(界予約センター)
URL/https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaikusatsu/
取材協力:界 草津
Photos & Text: Riho Nakamori
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