【2026-27年秋冬】エディターズアイで読み解くコレクションレポート。ワードローブを更新する 7つのキーワード | Numero TOKYO
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【2026-27年秋冬】エディターズアイで読み解くコレクションレポート。ワードローブを更新する 7つのキーワード

2026-27AWのコレクションで印象的だったのは、ワードローブとの向き合い方を更新する提案だった。ベルト一本でシルエットを変え、レイヤードで新たなバランスを生み、自分らしい一着をユニフォームとして着こなす。その新しい視点が、スタイリングに新たな表情を与えてくれる。現地で取材したエディターの視点から、今シーズンを象徴する7つのキーワードを読み解く。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年9月号掲載)
 

Reporters
水戸美千恵:編集長。怒涛の取材期間を支えるのは、バゲット&バターとフライドポテト。
岸本佳子:ファッション・ディレクター。ミラノ担当。コレクション中は、毎日大好きなジェラートで、エネルギーチャージ。食べる点滴。
梶山史織:エディター。コレクション中にローカルフードを発掘するのも抜かりなく達成。

1. Uniform Reimagined

学生服や船乗りの制服など、機能的で規律のある装いをブランド独自の美学で再構築。テーラリングは、仕立ての技術だけでなく、その背景にある物語まで纏うものへと進化した。

水戸美千恵(以下M)「今季はジャケットが印象的でしたが、テーラリングというより“ユニフォーム”がキーワードだった気がします」

岸本佳子(以下Y)「仕立ての美しさを見せるというより、ユニフォームを起点にテーラリングを再解釈しているブランドが多かった印象です」

梶山史織(以下S)「クラシックなジャケットも、その背景にある物語が違いますよね」

M「例えばドリス ヴァン ノッテンは学生服をベースにしていました。ブレザーやネクタイ、プリーツスカートといった規律的なアイテムを軸にしながらも、刺繍やブロケードで装飾性を加えることで、単なるプレッピーではない新しいエレガンスへ昇華していました」

Sフェラガモも船乗りのユニフォームが着想源でしたね」

Y「ピーコートのような実用服を上質なカシミヤで再構築していて、制服が持つ機能性よりも、ラグジュアリーや官能性を感じさせる仕上がりでした」

S「ユニフォームには本来、役割や規律がありますが、それをそのまま引用するのではなく、それぞれのブランドらしい美学へと翻訳しているのが面白かったですね」

M「だから今季は『テーラリング』というより、『ユニフォーム』と言った方が近いかもしれません」

 

2. Totally Tonal

服からシューズまで同系色でまとめることで生まれる静かな存在感。色数を削ぎ落としながら、素材や質感の違いで奥行きを描く新しいラグジュアリー。

S「今季はトーン on トーンも印象的でした」

Yマックスマーラも象徴的でした。ただ、これまでのトーン on トーンとは少し違います。ベージュやグレーだけではなく、ブルーやボルドー、グリーンなど鮮やかな色でも成立させていたのが今シーズンらしかったですね」

M「ワントーンって一歩間違えると無難に見えてしまいますが、今回はむしろ攻めていますよね」

Y「色数を減らすことで、逆に素材感が浮かび上がってくる。同じ色でも、レザーやニット、ウールなど質感の違いが際立って見えるんです」

S「シューズまでも同系色で揃えているので、雑音がないですよね」

Y「そこがポイントでした。シューズまでトーンを揃えることで視線が途切れず、スタイリング全体に奥行きが生まれる。ブーツも黒ではなくニュートラルカラーを合わせるブランドが多く、一色を深く見せる提案になっていました」

M「色を増やすのではなく、一色を掘り下げるような感覚ですね」

 

3. Tension and Ease

締める、緩める。そのコントラストがシルエットにリズムを与える。身体を補正するのではなく、立体的に見せるための新しいバランス感覚。

S「今季はセリーヌが掲げていた『テンション&リリース』という言葉がしっくりきました」

M「マイケル・ライダーも自身のブランドでその言葉を使っていましたが、フィット&フレアをそのまま見せるというより、一度シルエットに緊張感をつくり、そこから自然に解放していくようなバランスが印象的でした」

S「締めることが目的ではなく、シルエットにリズムをつくっている」

Y「スタイリングでそのバランスを見せているブランドもありました。ボリュームのあるシルエットをウエストで締めて、足元はパンプスですっきり見せる。その緩急によってフォルムが完成しているんです」

Mバレンシアガも人間工学に基づいた構築的なフォルムでしたが、窮屈さはなく軽やかさもありました。ブランドごとに表現は違っても、“緊張”と“解放”のバランスを探っていたのは共通していたと思います」

S「クラシックなシルエットをそのままなぞるのではなく、一度崩して今の感覚へ引き寄せている。その空気を象徴するキーワードでしたね」

4. Worn Memories

ヴィンテージ風フォークロアや、手仕事の温もりを現代的に再解釈。誰かが大切にしてきたような記憶を纏う服が、新しい価値を生み出す。

S「今季はどこか時間の経過を感じる服が多かったですね」

M「フォークロア、パッチワーク、ダメージ加工など、手仕事や年月を感じさせるディテールが目立ちました」

S「でもヴィンテージそのものではない」

Yプラダは粗野なニットやクラフト感のある素材を使いながらも、素材の合わせ方やバランスがとても洗練されていました。温もりはあるけれど、野暮ったくは見えない」

Sステラ マッカートニーは、自身の幼少期のスコットランドの記憶をデザインに落とし込んでいました。フィッシャーマンリブのニットやクロシェ編みなど、クラフト感あふれるディテールが印象的でしたね」

Mコーチのダメージ加工も目を引きました。新品なのに、誰かが長く大切に着てきたような風合いがあります」

Y「おばあちゃんから譲り受けたニットや、クローゼットの奥から引っ張り出した服のような、背景まで含めて価値を感じる時代なのかもしれません」

M「新しいものを買うというより、服に宿る物語や時間をデザインしているように感じました」

 

5. Freedom in Layers

ジャケットの上にジャケットを重ねる。完璧なバランスを崩すことで生まれる、新しい美しさ。レイヤードは着込むことから、組み替えるへ。

S「レイヤードもさらに進化していましたね」

Yセリーヌはトップスを何枚も重ねたり、プラダはレイヤードした服を脱ぎながら歩く演出をしたり、『重ねる』という行為そのものを見せていました」

M「重ね着というより、新しいバランスの提案ですね」

Y「アウターの上にアウターを重ねたり、本来なら合わせないアイテム同士を組み合わせたり。レイヤードするアイテムそのものが変わった印象です」

Sシャネルがツイードジャケットを二枚重ねていたり、ジャケットからハンパ丈のニットの裾を覗かせていたのも新鮮でした」

Y「同じアイテムを重ねることで奥行きや新しいシルエットが生まれていました。これまで正解だった着方を少しずらすだけで、服の見え方が変わるという提案だったと思います」

M「完璧に整えるより、少し意外性のあるバランスに美しさを見出している。手持ちの服同士でも挑戦できそうですね」

 

6. Frame the Neck

首元がスタイリングの主役へ。スカーフや付け襟、誇張されたネックラインが、顔まわりを印象づける新たなアクセントとなった。

S「首元のデザインも印象的でした」

M「前シーズンのセリーヌのスカーフ使いから続く流れを感じます。今季はネックラインそのものがデザインの主役になっていました」

S「視線が自然と顔まわりに集まりますね」

Yフェンディはほぼ全ルックに付け襟を合わせていましたし、アクセサリーというより服の一部として首元をデザインしていました」

M「ひとつプラスするだけで印象が変わるので、私たちも気軽に取り入れやすそうです」

 

7. Belt and Elevate

一本加えるだけでシルエットも印象も変わる。ウエストだけでなく、コートやジャケット、ローウエストにも。ベルトがスタイリングの決め手となるシーズン。

S「今季ほどベルトの存在感があったシーズンは珍しいですね」

M「しかも従来のウエスト位置ではなく、腰骨あたりのローウエストで巻く提案も目立ちました」

Y「重めのコートやジャケットの上から締めたり、本来ベルトをしない場所に一本加えるだけでシルエットが変わる。服そのものではなく、着方を更新するアイテムなんです」

Sトムフォードのように素肌の上に巻く提案もありました」

Y「実用性というよりスタイリングのためのベルトですが、バッグやコートに比べれば取り入れやすい価格帯です。今季のキーワードの中でも、いちばん挑戦しやすいアイテムかもしれません」

M「一本加えるだけでワードローブ全体の見え方まで変えてくれる。今シーズンを象徴する存在でした」

Edit & Text:Shiori Kajiyama

 

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