
世界にわずか9軒しか存在しない「ザ・リッツ・カールトン」の最上級ブランド「リッツ・カールトン・リザーブ」。その一つが、バリ島ウブドで2015年に誕生した「Mandapa, a Ritz-Carlton Reserve(マンダパ・リッツ・カールトン・リザーブ、以下マンダパ)」だ。米誌『Travel + Leisure』の「2025年インドネシア最高のリゾート」で第1位に輝き、2025年度の「世界のベストホテル50(The World’s 50 Best Hotels)」にも堂々のランクイン。さらにミシュランガイドのホテル格付けにおいて最上級の3ミシュラン・キーも獲得している。
1泊の値段は1室25万円~(2026年6月時点)だが、聞けば昨今の世界情勢の影響をものともせず、過去最高の稼働率を記録し続けているという。なぜこれほどまでに、「マンダパ」は世界中のトップトラベラーを魅了するのか、現地でその魅力を探った。
ウブドの森に囲まれた、寺院の伝統を継ぐサンクチュアリ

デンパサール空港(ングラ・ライ国際空港)から車で80分ほど、バリ島中部の山間部にあるウブドに「マンダパ」は佇む。大型車は通れないほどの小道を抜けた先に専用ゲートがあり、荘厳な寺社のようなエントランスが現れる。ここでウェルカムブレッシングリチュアルとして、バリヒンドゥ-教のお守り「トリダトゥ」と呼ばれる糸を手首に結びつけてもらう。

オープンエアのロビーへと誘われると、ウブドらしい熱帯雨林が五感を心地よく包み込む。眼下に広がるのは、幾何学的にも思える棚田と木々の緑、そしてバリ伝統建築の建物たち。リゾートというより、そこは古き良きバリの時間がそのまま凝縮された伝統的な村のようにも感じる。サンスクリット語で「寺院」を意味する「マンダパ」はその名の通り、敷地内に500年以上前からこの地を見守り続ける本物の寺院が今も厳かに鎮座し、神聖な空気が漂う。

建物を手掛けたのは世界的建築家マイルズ・ハンフリーズ氏で、インテリアは「DESIGNWILKES」のジェフリー・A・ウィルクス氏によるもの。高低差のある地形の起伏をありのままに活かして骨組みが築かれており、バリの自然と文化への敬意が感じられる。

ウェルカムドリンクとして振舞われたテンプの葉とココナッツ、ライムや蜂蜜を合わせた伝統的なハーブドリンクもあいまり、移動の疲れがほどけていくようだ。

客室へとバギーで案内してくれるのは、サンスクリット語でバリ王室における「王または王妃の助手・側近」を意味する「Patih(パティ)」だ。24時間体制でバギーでの送迎から、施設やアクティビティの予約、旅程の作成などマニュアルを超えたパーソナルホストとしてゲストに寄り添ってくれる。彼らは親愛を込めて女性ゲストを「イブ(Ibu)」、男性ゲストを「バパッ(Bapak)」と呼ぶなど、随所にまでバリ島ならではのホスピタリティが息づく。
24時間のバトラーサービス付き。全60室、すべて100㎡以上の客室

リゾートの広さは東京ドーム約1.2個分の約5万5000㎡に及ぶが、客室はわずか60室のみ。スイート35室、プライベートプールヴィラ25室で構成されており、一番小さな「リザーブ・スイート」でも100㎡に及ぶ。もっとも広い客室「マンダパ・リバー・エステート」にいたっては3ベッドルームで最大9名まで宿泊可能で、キッチンやダイニング、172㎡の温度調節可能なプール、専用のスパトリートメントルームも備えた2,000㎡という桁違いの広さだ。

特に人気は、専用プールを備えた広さ430㎡の「プール・ヴィラ」とのことで、今回「1ベッドルーム・プール・ヴィラ」に宿泊した。まず驚かされたのが、屋外エリアの広さ。エントランスから鍵がかかった玄関までも石畳のアプローチがあり、歩いて10秒ほどはある。玄関を開けると目の前に30㎡のプライベートプール、左手に独立したリビングルーム、右手に庭があり、その奥がベッドルームとバスルームが一体になった建物でまるで別荘のような規模感だ。

寝室の壁には、古き良きウブドの田園風景や、バリの神話・伝説を描いた手描きの壁画が施されている。また各所には地元バリの職人による手作りの工芸品や絵画、織物が配されているのだが、その散りばめ方や、色や素材のまとめ方のセンスが良い。

浴室には大きなバスタブのほかシャワールーム、そして洗面台が2つとドレッサーがあり、外には大自然との一体感が味わえる「アウトドア・レインシャワー」まである。

さらに、寝室と浴室の間には使い勝手の良いウォークインクローゼットがあり、虫よけや日焼け止め、日焼け後のクールダウンジェルなどのアメニティまでそろう。
リビングルームのテーブルには、新鮮なフルーツが常備されている。米菓やバナナチップス、ピーナッツクラッカーなどのバリ伝統菓子も用意されているのだが、バリ島らしい編み込みのかごや入れ物に入っているのもさすが。地元産のチョコレートやポテトチップス、ソフトドリンクを含むミニバーのおもてなしもありがたい。
さらにリゾート内の寺院での儀式や、宗教的なお祭りに参加する際に着用できるサロンも用意されている他、散策時に便利なオリジナルの麦わら帽子とカゴバッグはお土産として持ち帰ることもできる。

アメニティはプラスチックや使い捨て製品を使わず、バリならではの素材を活用。また、電源タップやリモコンなど生活感のあるものは見えないように工夫しつつ、不便さを感じさせない動線に配置するなど、細部まで緻密な心配りが感じられる。
何より驚いたのが、これだけ大自然に囲まれているのに、二泊三日の滞在中、客室で虫にほとんど出くわさなかったことだ。昼のルームクリーニング、夜のターンダウンサービスにそれぞれ清掃しているというのはあるだろうが、どれほどの細かな配慮があるのかと敬服してしまう。
自然の調和を味わう、バリ島ならではのサステナブル・ガストロノミー体験

「マンダパ」はダイニングにもサステナブルな意識が貫かれている。アユン川の畔、竹製パビリオンが印象的なシグネチャーレストラン「Kubu(クブ)」では、半径100km以内の地元食材のみを使用し、コースを作り上げている。

まずはその夜使われる食材を実際に手に取り、スタッフの解説とともに間近で確かめることからコースが始まる。
春のシグニチャーコース「EARTH’S HARVEST」は、バリ島南部のスランガン村で獲れたカニを主役に、ハネデューメロンや発酵海塩、酸味のある南国フルーツ「ビリンビ」にマリーゴールドオイルを重ねた鮮烈なスターターで幕を開けた。続くカンパチのセビーチェはジンバラン産で、パッションフルーツの鋭い酸味にハイビスカスの一種である「ローゼル」とラディッシュを添え、ワサビのスパイスを利かせた一品だ。
さらにゆっくりとローストしたジンバラン産のロブスターには、トウモロコシのヴルーテ(バターと小麦やフォンのソース)が合わせられ、クリーミーな甘みが引き出されている。中盤に登場するパヤンガン産の緑豆や大豆、黒豆などを使った料理は、木の実のクリームと平飼い卵の黄身を絡めて食べるもので、森のキノコやテンペのクランブルによるジャキジャキとした食感が心地よい。
肉料理もまた秀逸だ。じっくり火を入れたバトゥリティ産の豚バラ肉は、揚げ焼きにした皮のガリガリとした食感に、生胡椒とペッパーリーフの渋みが絶妙に調和する。メインディッシュのジャワ島産ビーフは48時間ほど低温調理され、タマネギのタルトやブラックガーリックピューレ、ベリーのソースが深みを与えつつ、モリンガパウダー入りのタカキビのリゾットが軽やかさを添える。
マンゴスチンのプレデザートを経て、デザートにはキンタマーニ産の3種のハチミツを使用したハニーケーキと、レモングラスのソルベが登場。ミニャルディーズは、オニオン型の竹製パビリオンを模したカゴに入れられてサーブされるなど、最後までスペシャル感あふれる演出が続く。

食後のドリンクにハーブティーを選択すれば、スタッフに身体の悩みを相談しながら、好みの素材を選びオリジナルのハーブティーを作ってもらえる。ここにも、エグゼクティブ・スースシェフのエカ・スナリヤ氏の「食べ物は薬である」という思想が色濃く感じられた。

オールデイダイニング「Sawah Terrace(サワ・テラス)」は、より高台からアユン川や熱帯雨林の絶景を眺められる。朝食は、オーガニックガーデンから採れた新鮮な食材を使った「ファーム・トゥ・テーブル」がコンセプトだ。
ハーフブッフェスタイルでメインメニューには、キヌアサラダなどのヘルシーメニューから、マングローブクラブのエッグベネディクトを含む卵料理、さらにナシチャンプル、トゥルール・バラドなどのインドネシア料理、デザートが並ぶ。キンタマーニ産の柑橘類やプラガ産チェリートマト、ジンバラン産マングローブクラブが使われるなど、日本人にあまりなじみのないバリ島食材が味わえるのもうれしい。

ブッフェ台には南国フルーツや、サラダ、ペストリーやハム、チーズ、オーダー式の麺料理やお粥が並ぶのだが、驚いたのがベーカリーのクオリティの高さ。湿度の高い東南アジアリゾートだと、屋外のレストランの場合パン類がすぐに湿気てしまうにもかかわらず「マンダパ」のベーカリーやペストリーはサクサクでとてもおいしい。おそらくかなり細かに焼きたてパンを補充していると思われるが、そういった細かな配慮も長きにわたりゲストの声を真摯に聞き続けてきたからなのだろう。

そしてコーヒー好きとして感動したのが、キンタマーニ産のアラビカ種とププアン産のロブスタ種をブレンドした「Mandapa Blend Peaberry Cold Brew Coffee」の存在だ。ラグジュアリーホテルは数あれど、現地産のフレッシュで高品質なコーヒー豆を使い、挽きたて、淹れたてのコーヒーを提供するホテルはそう多くない。

ランチやディナーでは、古代バリ王国から受け継がれたレシピや、インドネシアの伝統料理をシェアするスタイルで提供。ココナッツとタコを使った「ラワール・クルンガ」や、和牛ショートリブの煮込み、ジャワ流にじっくり煮込んでから揚げたジューシーな鴨肉にタマリンドソースを添えた逸品などがテーブルを彩る。

さらに夜には曜日によってバリの伝統舞踊や、ガムランのパフォーマンスが行われる。
黄金色のサンセットとジャズの調べに酔いしれる「Ambar」

サンセットタイムにはぜひ「Ambar(アンバー)」でアペロを。サンスクリット語で「空」を意味する開放的なバーラウンジで、美しい夕日やジャズの生演奏をバックに、約12種類のシグニチャー・クラフトカクテルや自家製ベルモット、創作ジャパニーズ料理を愉しめる。

カクテルコレクション「Taru Pramana(タル・プラマナ)」の「バトゥールズ・ラバ」はピンク・ポメロ・ジンにキンタマーニ・タンジェリンを合わせ、エディブルペーパーに写真がプリントされた視覚的にも楽しい一杯だ。
また、おばあちゃんの健康ドリンクから着想を得た「マイ・グランマ」や、ウブドの最初の王子へのオマージュである「ウブド・プリンス」など、バリの歴史や大自然の香りがグラスの中に美しく表現されている。さらにバリ島伝統の蒸留酒アラックをベースにした「Mandapa Spritz」、自家栽培のポメロが爽やかに香る「Pomelo Soda」など、バリの歴史や大自然の香りがグラスの中に美しく表現されている。
ノイズを遮断し、大自然や自分と向き合う独自のウェルネスプログラム

「マンダパ」を語る上で欠かせないのが、宿泊者なら誰でも追加料金なしで体験できるウェルネス・フィットネスプログラムの「Disconnect to Reconnect(ディスコネクト・トゥ・リコネクト)」だ。デジタル機器に囲まれた現代社会から離れ、大自然に癒されながら自分自身と向き合い、自己再生を促す体験が20以上用意されている。このプログラムが多くのリピーターから支持を得ているのだ。

例えば、ヨガパビリオンで行われる「Quantum Healing(量子ヒーリング)」は、クリスタルボウルの響きによってリラクゼーションへと導かれ、催眠を通じて潜在意識にアクセスするユニークなプログラムだ。自身の過去やトラウマの根源と向き合うことで、日頃は後回しにしがちな人生の課題や感情的な問題を整理。自分自身をありのまま受け入れ、内側から癒やしていくプロセスを体感できる。

温水プール(Vitality Pool)で体験できる「Aquatic Therapy(アクアティック・セラピー)」は、ヨガやストレッチの動きをベースにした水中プログラムだ。水の浮力が身体をサポートするため、関節への負担を抑えながら効果的に筋力と柔軟性の向上を促すことができる。アユン川の水流音に包まれ、大パノラマの自然を眺めながら行うセッションは、身体だけでなく心まで深く解きほぐされるよう。リゾートではこのほかにも、呼吸法やサウンドヒーリング、マンダラアート、お香作りや料理教室など、多彩なアクティビティが用意されている。

また、「World Spa Awards 2025」において、アジア、インドネシア、バリのすべての「ベスト・ウェルネスリトリート」部門を独占した「マンダパ・スパ」の体験も外せない。なかでも、バリ島とジャワ島の伝統的なヒーリング技法を融合させたシグネチャーメニュー「Mepijet Massage(メピジェ・マッサージ)」が素晴らしい。

フットスパに続き、ロングローリングや揉みほぐし、ストレッチを巧みに組み合わせたオイルマッサージが施され、長旅で凝り固まった筋肉の緊張が心地よく解放されていく。

宿泊者であれば、スパ施設も自由に利用できる。ジェットバスを備えたバイタリティプールや、サウナ、スチームルーム、アイスファウンテンを完備する男女別のリラクゼーションエリアや、最新機器を備えた24時間営業のフィットネスセンターまでそろう。

屋外メインプールで過ごすひとときもまた、「マンダパ」ならではのホスピタリティが光る。

カバナやプールベッドに案内されて席に着くと、ココナッツジュースやフルーツの盛り合わせとともに、虫よけや日焼け止め、日焼け後のクールダウンジェルが一式サーブされる。

さらに、バリ伝統のアタ細工のカゴに入った冷凍フルーツやアイスを、スタッフが定期的にサーブしてくれるのもうれしい。ファミリー層のゲストも多く、大人から子供までを心地よく飽きさせない演出が徹底されている。
内なるパワーを呼び起こす「魂の再生ジャーニー」

つかず離れずの心地よい距離感を保ちながらも、リゾートのどこにいてもスタッフの誰かがさりげなく目を配り、連携してゲストが必要とするサービスを先回りして提供する。それは、「マンダパ」が何よりもゲストの心身の解放と、深いリラクゼーションを願っているからこそ。

また、このリゾートを舞台に生まれる人間模様も、リピーターが絶えない大きな理由なのだろう。スタッフと顔見知りのゲストは多かったし、ここで出会ったゲスト同士が夕食を共にする姿も見られた。世界中のトップトラベラーが「マンダパ」を目指すのは、バリ島観光だけが目的ではなく、俗世から距離を置き、本来の自分自身と深く向き合い感性を磨き、新たなスタートを切る場所としてこれ以上ないからなのだろう。

取材協力:Mandapa, a Ritz-Carlton Reserve(マンダパ・リッツ・カールトン・リザーブ)
住所/Jalan Kedewatan, Banjar Kedewatan, Ubud, 80571 Gianyar, Bali, Indonesia
TEL/+62 361 479 2777
URL/www.mandapareserve.com
Photos & Text: Riho Nakamori
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