【K-POPゆりこ×NICE73対談】RIIZE、TWS……今チェックすべきボーイグループは?〈前編〉
2023年から今年にかけて、K-POPのボーイグループが続々とデビュー。コンセプトや個性が多彩なグループばかりだが、その中で次世代のK-POPシーンを率いるのは一体誰? 韓国カルチャー全般をカバーするK-POPゆりこさんと、K-POPイベントのMCやボーカルトレーナーを務めるNICE73さんに、今、注目すべきボーイグループについて伺いました。
ライター松田(以下、松田)「2023年から今年にかけてたくさんのグループがデビューしましたが、ズバリお2人の注目のグループは?」
K-POPゆりこ(以下、ゆりこ)「王道と言われるかもしれませんが……なんといってもRIIZEです。NCT以来のボーイグループが誕生するということで、とても期待していました。最初は、活動歴の長いSHOTAROさんとSUNGCHANさんの人気が突出してしまうのではと心配していたら、ほかのメンバーもとても魅力的です。あの2人に匹敵するメンバーを揃えたということは、RIIZEはもう上がっていくしかない! ということで、私のイチオシはRIIZEです」
松田「ヌメロ・トウキョウでは2024年1月号特装版の表紙にRIIZEが登場しました。彼らには華がありますね」
ゆりこ「ビジュアル面でもインパクトがありましたよね。特にWONBINさんには、つい目が追ってしまうような魅力があります。それに、なんといってもSOHEEさんのボーカルです。SMの今までの歌い上げるメインボーカルとはまたひと味違う、抑えたボーカルが“今”を感じます。プレデビュー『Siren』でパフォーマンス力を見せつけつつ、往年のR&Bを彷彿とさせる『Get A Guitar』でデビュー、そこから『LOVE119』と続き、ハウスを取り入れた『Impossible』への流れも完璧でした。そして夏のジャパンホールツアーとSUMMER SONIC 2024への出演も発表されましたね。日本で観られる機会が増えてうれしい!」
NICE73(以下、73)「SOHEEさんのボーカルについては、ビハインドを見ると、今っぽいスタイルでボーカルディレクションされていました。デビュー前のSOHEEくんの映像を見ると、韓国らしい歌い上げるバラード曲も上手だし、今らしさを抑えたスタイルも完璧。やっぱり彼は耳がいいんでしょうね。これからもスタイルの違う楽曲に対応できそうだし、そういう面でも彼らは新しいSMのグループなんだなと、見ていてワクワクします」
松田「RIIZEをはじめ、2023年から2024年デビューしたグループに楽曲的な特徴はありますか」
73「Y2Kの流れは引き続きあるものの、TR-808(※ローランド社のリズムマシン)の音をやたら響かせるようなグループは減った印象です。楽曲的なK-POPらしさというと、最新のトレンドを取り入れた複雑な構成が特徴だったりしますが、最近は1曲の中にいくつかの要素が詰め込まれている曲が登場しています。xikersの『We Don’t Stop』やKISS OF LIFEの『Shhh』は、1つの曲からショート動画をいくつも切り取ることができる多彩な展開が魅力です。TWSも構成がどんどん変化して聴いていて飽きません。そういったグループがある一方で、RIIZEは直球ストレートなのが新鮮でした。歌もダンスも上手でヴィジュアルもいい。とにかく、この素材を見てくれ!という制作陣の自信を感じました。しかもコンテンツを見ていると、一人ひとりの個性も魅力的です」
ゆりこ「確かに! それでRIIZEが際立った存在だと感じたのかもしれませんね。ガールズグループになりますが、BABYMONSTERがド直球のYGサウンドで出てきたのも面白いなと思いました。世界的な流行に思いっきり乗ったり、SNSでの展開を意識したりするケースもあれば、独自路線を貫くグループもあり。そして今、NICE73が注目しているグループについてもお伺いしたいです」
73「個人的には“風”ことThe Windが最推しです。KCON JAPAN 2024にも出演したし、これからもっと注目度が上がるはず! 大手事務所ではTWSも注目です。『plot twist』は構成的にも面白い楽曲でしたが、その上でちゃんと音源成績を残したのは画期的でした。カッコいい曲や構成が凝った楽曲は売上が伴わないこともあるのですが、彼らはそのジンクスを破りました。他の曲もとにかくオシャレ。RIIZEの対抗勢力になるのは、もしかしたらTWSなのかもしれませんね」
ゆりこ「ちなみに、K-POPに詳しいNICE73が、そこまでハマったThe Windの魅力とは?」
73「説明し始めると日が暮れちゃうんですが、楽曲面でいうと『H! TEEN』という曲もすごく面白くて。e.oneさんがPRODUCE 101 JAPAN THE GIRLSに提供した『想像以上』はすごく実験的な曲だったんですが、『Hi-TEEN』でもその手法を使っていて。『想像以上』が好きな方はぜひ風くん(The Wind)も聴いてください!」
ゆりこ「はい、改めて藤井でない方の”風くん”をさらに深堀りしてみたいと思います!そして私はBOYNEXTDOORにも期待しています。ZICOさんはセルフプロデュースが上手なアーティストですが、グループをゼロからプロデュースしたときに、どう成長させていくのか楽しみです。それにしても、今年はボーイグループの戦国時代ですよね。その中でトップ圏争いができる若手グループというと、ZEROBASEONE、RIIZE、TWSあたりだと思うんですが、そこにBOYNEXTDOORも入ってくるんじゃないかと。それからxikers! あとダークホースとして82MAJORも挙げておきます。単に私の好みなのですが(笑)」
73「xikersは楽曲的にもすごく面白いしダンスが上手い。マンネのイェチャンさんは『UNDER19』に出演していたので、最初はこんなに成長したのねという親心のような気持ちで見てましたが、彼らはダンスもラップも上手く、今回の『HOUSE OF TRICKY : Trial And Error』は曲のインパクトも強い。逆に、曲がカッコ良すぎて売れるのか心配なほどでした。でも彼らも、そんなジンクスを突破していく勢いがあります」
ゆりこ「彼らの先輩のATEEZが昨年『Billboard Hot 100』で1位になり、今年コーチェラに出演しました。デビューから着実に実力と知名度を高めていって、コロナ後あたりについに世界に見つかったなと思います。その勢いとファンダムの情熱は、BTSが世界的スターになる過程と似ているものを感じているんです。そして、先輩グループのATEEZとともに、xikersも一緒に上がっていくと面白いなと。今のK-POPはアメリカのトレンドを踏襲した曲が多いけれど、彼らはK-POP特有の魅力を継承してくれているような気がしています」
73「ファンダムの勢いで言えば、n.SSignも熱いですよ。最近のK-POPはダンス重視なのではと言われることがありますが、n.SSignはみんな歌が上手くてひとりひとりの声に個性があるので、聴かせるグループだなと思います。すごく団結力があって、このグループは“家族”なんだというのも伝わってくるんですよ」
ゆりこ「画面を通しても伝わってくるものがありますよね。それから私は、ONE PACTにも注目しています。ジェイ・チャンさんのボーカルが大好きなんです」
73「ONE PACTいいですよね! 大好きです!それからHORI7ONにも注目しています。メンバーは全員フィリピン出身で、メンバーのマーカスさんはUNISのエリシアさんのいとこなんです。HORI7ONの魅力はなんといっても歌が上手いこと。『LUCKY』はSEVENTEENのような雰囲気もあって、1st EPの『Daytour』は、“K-POPの青春”の全てが詰まっているようなアルバムです。やっぱりこういうグループは必要です。すごく頑張ってほしい!」
ゆりこ「東南アジアのグループも、今、勢いがあると聞きましたが…」
松田「『GENTO』で世界を席巻したSB19は4月に来日公演を行いました。フィリピンの音楽シーンは今、注目ですよね」
73「それから、EVNNEはデビュー曲の『TROUBLE』もカッコよかったし、ミニアルバムの『Un:SEEN』はもはや前衛音楽かのような攻め方をしています。KCON JAPAN 2024に出演した子でいえば、8TURNのパフォーマンスもすごく良かった。他にもLUN8もいい曲が多いし、FANTASY BOYS、NOWADAYSも頑張っています。NEXZもデビューしましたし、今年は男性グループが豊作の1年になりそうです」
ステージ経験のあるプロデューサーが続々登場
松田「私はNCT WISHに注目しています。Kenzieさんが手掛けた楽曲も素晴らしいし、彼らの個性も面白くて。SMのマンネチームとして、SMアーティストみんなに可愛がられている感じもいいです。コンテンツの更新頻度も高いし、やっぱりBoAさんのプロデュース力があるのかなと」
編集S「BOYNEXTDOORもプロデューサーのZICOさんとの関係が素敵なんですよ。パフォーマンスもいいし、彼ら自身も楽曲制作に関わっています」
73「BOYNEXTDOORはとても華がありますよね。ファッション誌から飛び出したようなスタイリッシュな子たちが、ステージいっぱいを使ってパフォーマンスする。決められた導線を守るのではなく、ライブ感を感じさせてくれるグループですよね」
松田「BoAさんやZICOさんのように最近、アイドルを経験した人がプロデュースを手がけるケースが増えてきている気がします」
ゆりこ「XGのプロデューサーサイモンさん、SUPER JUNIORのウニョクさんが手がけるCelest1aもそうですね」
73「WHITE NOIZE CLUBがプロデュースするPOWもありますよね。やっぱりK-POPが一周したんでしょうね。韓国では、アイドルにしても何にしても“歴史”が重んじられるんですね。だから、アイドルがPD側に回ることも評価されます」
ゆりこ「古くはYGのヤン・ヒョンソクさんや元SMのイ・スマンさんも、かつてはステージに立つ側でしたよね。K-POPの第3世代までを作ってきたプロデューサーが、事務所運営全体などのネクストステージに移ったことで、新しいプロデューサーが元アイドル側から登場してきた。これは時代の流れなのかもしれません。自分が演者としてやり切ったときに、次に理想的なアイドルを作りたいと思うのは自然なことかもしれません。興味深いのは、アイドル時代の知名度とプロデュースするアイドルの成功は正比例ではないこと。XGのサイモンさんがそうですが、制作側にまわって才能が大きく花開く人もいるというのも面白いですよね」
韓国のバーチャルアイドルとVTuberが面白い!
松田「注目の新人グループといえば、先日のKCONにも出演したDXMONはマンネのJOさんのスパイキーヘアが話題となって、いろんなグループのTikTokに登場しました」
73「ヘアスタイルも彼らを知るひとつのきっかけになりますよね。そこからパワフルな曲とパフォーマンスでハマる人もいるかもしれない。彼らはwoo!ah!と同じSSQエンターテインメントなんですが、この事務所は楽曲のクオリティに定評があります。それから、忘れてならないのはPLAVEです。5人組のバーチャルアイドルなんですが、今回の『ASTERUM:134-1』は、歌唱力があるからこそ実現できたんだろうなと思うくらいバラエティな楽曲が揃いました」
松田「PLAVEは『WAY 4 LUV』で韓国の音楽番組の1位を獲得し、ソウルオリンピック公園・オリンピックホールでのファンコンサートも成功させました」
73「人気ウェブバラエティの『MMTG(文明特急)』にも出演しました。彼らはトークも面白いんです。MCのジェジェさんとPLAVEのノアさんが昔からの友達だったという設定でした」
ゆりこ「バーチャルアイドルというと、SMからはNaevisのデビューも噂されています」
73「ついに! 今回、ぜひ韓国のVTuberシーンについてお話しようと思っていたんです。日本では長年培ってきた大きなシーンがありますが、韓国はここ2、3年で急速に盛り上がってきています。その中心にいるのが、藍璃かんなさんというVTuberです。彼女は2018年頃から活動しているんですが、現在は、彼女を中心に〈StelLive〉というグループを結成しています。彼女たちはゲーム実況もやってるんですが、日本語を話したり、日本の曲のカバーもしているんです。彼女たちはとても歌が上手で、特に、藍璃かんなさんはとにかく歌唱力がすごい。ソロの『ADDICT!ON』はめちゃくちゃカッコいいので、ぜひ聴いてみてください」
ゆりこ「うわ、面白い世界ですね! 教えていただき、73に感謝です。藍璃かんなさん、私は存じ上げなかったのですが、改めて曲だけ聴くと、K-POPの新しいヨジャグループだと思っちゃいますね」
73「そうなんですよ。ちなみに、藍璃かんなさんは、こう見えて1,700歳です(笑)。日本のVTuber文化にあまり親しみのない人も、K-POPという文脈から入ってくるということもあるかもしれません。今、注目されているガールズバンド、QWERのメンバーにも元々Twitchの配信者がいるんですよ。PLAVEもそうですが、韓国のバーチャルアイドルやVTuberのシーンはまだまだ盛り上がりそうです」
ゆりこ「これは新しい扉が開いたような気がします。それから、今回の対談でキーワードとして出てくる歌唱力について、ぜひ73にお伺いしたいのですが……」
Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto