漫画家・瀧波ユカリと紐解く!ややこしい「ピンク」な言葉 | Numero TOKYO
Culture / Feature

漫画家・瀧波ユカリと紐解く!ややこしい「ピンク」な言葉

さまざまなイメージを派生することから愛されたり煙たがられたり、「ピンク」という色と同じく「ピンク」という言葉も一筋縄ではいかない存在である。そんなややこしいともいうべき「ピンク」にまつわる言葉を漫画家の瀧波ユカリと紐解いてみる。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』9月号掲載

【目次】
1. ダサピンク現象
2. ピンクウォッシュ
3. ピンク映画、ピンクチラシなど
4. ピンクタックス
5. ピンクカラージョブ
6. ピンクリボン、ピンク スティンクスなど

 

1「ダサピンク現象」


女性向け商品が残念なデザインになる謎
女性は「ピンクが好き」「かわいいのが好き」「恋愛要素が入ってるのが好き」という固定概念から、女性をターゲットにしたプロダクトが、当の女性消費者にとっては手に取りたくない、微妙なデザインになる現象のこと。2013年に宇野ゆうかが提唱し、14〜15年にかけてネット上で議論を巻き起こした。女性向けコンテンツにピンクやハートが多用される現状に一石を投じるきっかけになった。「ピンク=ダサい」という意味ではない。

2「ピンクウォッシュ」


LGBTQ支援でイメージ回復!?
国や自治体などがLGBTQフレンドリーのイメージ戦略を、別の問題を覆い隠すために利用するやり方を批判する言葉。イスラエル政府がパレスチナのイスラム教徒の人権を侵害していることを隠し、LGBTQを支援する人権先進国であることをアピールしているのではと、10年にニューヨーク市立大学教授であり小説家のサラ・シュルマンが提言。企業がLGBTQを支援することでイメージ向上や販売促進につなげようとすることにも使用される。

3「ピンク映画」「ピンクチラシ」など


ピンクでポルノをイメージするのは日本だけ
日本でピンクは、成人映画などのポルノコンテンツ、性風俗、その広告などで用いられるが、ピンク=エロが定着したのは昭和以降のこと。1963年公開の映画『情欲の洞窟』でピンク映画という呼称が使われたが、戦時中から「桃色」を隠語で使用していたという説がある。ポルノ映画はアメリカでは「Blue(青)Film」、スペインでは「CineVerde(緑)」、イタリアでは「FilmaluciRosse(赤)」、中国では「黄色電影」と呼ばれている。

4「ピンクタックス」


女性向け商品は、なぜかちょっと割高
シャンプーなどのパーソナルケア商品や洋服、おもちゃなど、女性向け商品が男性向けよりも割高に設定されていることを批判する言葉。ニューヨーク市消費者局の調査では、ヘアケア製品で48%、ジーンズで10%、おもちゃで11%、女性または女の子向けの商品が平均して高くなっているという報告があったという。そのほかにもローンの金利を高く設定されたり、危険な公共交通機関を避けて割高なタクシーを使うなど、性別による支出の差を表すことも。

5「ピンクカラージョブ」


落とし穴あり! 女性が従事しやすい職業
社会評論家のルイーズ・カップ・ハウによって提唱された言葉で、女性が従事することが多く、女性の仕事だとみなされがちな職業全般を示す。代表的なものとしては託児や看護、美容、フード、電話オペレーターなどのサービス業が中心。女性にとっては就職しやすく、華やかな仕事のように見えても、実際は低賃金で雇用が不安定なケースも。世界的に女性管理職の割合を増やす動きもあるが、フードサービスや化粧品業界などのピンクカラー分野が多い傾向。

6「ピンクリボン」「ピンク スティンクス」など


ピンクを冠した団体や社会活動が多数展開中
「ピンク」をシンボルに掲げた社会活動やその団体が実はたくさんある。日本でも有名なのは、乳がんの正しい知識を広め、健診の早期受診を推進する「ピンクリボン」キャンペーン。女の子=ピンクという子どもの性別によるステレオタイプに異議を唱える保護者団体「ピンク スティンクス」、平和と社会正義を求めて女性中心に活動する「コードピンク」、2月最終水曜日にピンクを身につけ、いじめ反対の意思表示をする「ピンクシャツデー」などがある。

「ピンクを好きだと言うことも、ピンクを嫌いだと言うことも、一抹の躊躇を感じずにはいられない。私の愛するピンクと、何者かによって意味付けされたピンクは違うからだ。ピンクを巡る複雑な事情に難しさを感じながらも、ピンクを離さないでいたいと思う」(瀧波ユカリ)

特集「ピンクともっと自由に生きよう!」をもっと読む


Illustrations:Yukari Takinami Text:Miho Matsuda Edit:Sayaka Ito

Profile

瀧波ユカリYukari Takinami 漫画家。著書に『臨死!! 江古田ちゃん』『あさはかな夢みし』『モトカレマニア』、エッセイ『はるまき日記』『ありがとうって言えたなら』など。Web漫画サイト『&Sofa』にて『わたしたちは無痛恋愛がしたい 〜鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん〜』連載中。

Magazine

MAY 2024 N°176

2024.3.28 発売

Black&White

白と黒

オンライン書店で購入する