女性写真家のまなざしと、その先にあるもの 【2】殿村任香
社会が抱える問題や女性の身体、生きづらさなど、さまざまな主題で写真と向き合う日本人女性写真家たち。今年開催10年目を迎える国際的な写真フェスティバル「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2022」にて「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」supported by KERING’S WOMEN IN MOTIONとして、活躍が期待される日本人の女性写真家10人の作品を展示する。ここでは4人のアーティストをインタビューとともにご紹介。第2回は、殿村任香。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年5月号掲載)
殿村任香|Hideka Tonomura
生の中にある愛と美しさ
──KYOTOGRAPHIEで公開される作品について教えてください。
「今回は『現代日本女性写真家たちの祝祭』で『焦がれ死に』を、『SHINING WOMAN #cancerbeauty』シリーズは別会場で公開します。まず『焦がれ死に』を制作していた時期は、まるで写真に対して成就しない片思いをしているかのように、いくら撮っても距離が遠かったんですよ。だから私にとって写真は苦行でしかなくて。もしこのまま自分の中にある「愛」というものが写真に投影されないのであれば、もう写真はやめようと決めて撮った作品です。『焦がれ死に』は写真家としての第一章が終わった、走馬灯のようなものですね」
──がんと闘う女性の姿を収めた『SHINING WOMAN』は、2019年から始まったシリーズですよね。
「きっかけは私が子宮頸がんになったことですね。写真をやめる言い訳になると思う一方で、自分にとって子宮は思考を司る大事な臓器だったし、昔のがんのイメージもあったから、子宮全摘っていうワードが出たときには目の前が真っ暗になったんですよ。だけど病院で、がんを抱える女性たちの輝きを目の前にしたんです。乳房を全摘しても美しさに変わりはないし、そもそも女性性というのは無意識に流れるマグマのようなもの。むしろ新しい美しさを手に入れることだと思うんですね。麻酔から覚めたと同時に、同室の女性のポートレイトが頭に浮かんできて、これは使命だなと。つまり、どちらもターニングポイントの作品ではあるんですよね。今回この2シリーズを展示するって、何の因果かなといろいろ感じています」
──体が変わることへの恐れや生きづらさは、がん経験者のみならず多くの女性が感じる身近なことですよね。
「がんじゃなくても、みんな人生において見えない傷を持っているし、サバイバー。そこを共通点にするとみんな自分ごととして考えられますよね。男性や子どもにも見てほしいし、自ら見ることを選択してほしい。展示空間ではそんな自立につながるようなアクションも考えています」
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2022
京都で開催される国際的な写真祭 「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2022」。国内外作家の貴重な写真作品や写真コレクションを京都市内各所の歴史的建造物や近現代建築の空間に展示。記念すべき第10回目のテーマは「ONE」。
会期/2022年4月9日(土)〜5月8日(日)
場所/京都市内11ヵ所
「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」supported by KERING’S WOMEN IN MOTION
会場/HOSOO GALLERY
www.kyotographie.jp
Interview & Text : Akane Naniwa Edit : Michie Mito