女性写真家のまなざしと、その先にあるもの 【1】稲岡亜里子 | Numero TOKYO
Art / Feature

女性写真家のまなざしと、その先にあるもの 【1】稲岡亜里子

社会が抱える問題や女性の身体、生きづらさなど、さまざまな主題で写真と向き合う日本人女性写真家たち。今年開催10年目を迎える国際的な写真フェスティバル「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2022」にて「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」supported by KERING’S WOMEN IN MOTIONとして、活躍が期待される日本人の女性写真家10人の作品を展示する。ここでは4名のアーティストをインタビューとともにご紹介。第1回は、稲岡亜里子。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年5月号掲載)

稲岡亜里子|Ariko Inaoka

アイスランドで出会った双子の姉妹を8年にわたり撮り続けた『Eagle and Raven』。大地から湧き出す美しい水、やわらかな苔、はるか昔からそこにあり続けたであろう岩石…。この幻想的ともいえる自然に包まれ成長していく姉妹の撮影を通して、生まれ育った京都の水辺の風景や自らの幼少期の記憶が呼び起こされたという。 ©︎ Ariko Inaoka
アイスランドで出会った双子の姉妹を8年にわたり撮り続けた『Eagle and Raven』。大地から湧き出す美しい水、やわらかな苔、はるか昔からそこにあり続けたであろう岩石…。この幻想的ともいえる自然に包まれ成長していく姉妹の撮影を通して、生まれ育った京都の水辺の風景や自らの幼少期の記憶が呼び起こされたという。 ©︎ Ariko Inaoka

重なり合う“何か”を映し出す

──写真家であり、江戸時代から続く老舗蕎麦屋「本家尾張屋」16代当主も務める稲岡亜里子さん。まず、そのユニークな歩みを教えてください。

「17歳でアメリカに留学して、20代からニューヨークをベースに写真家活動をしていました。9.11を経験した翌年、アイスランドに初めて行ったんです。そこで見た水の風景に魅了されて、自然の写真を撮りに毎年通うようになりました。水や石の姿、温泉から出る湯気、冷たい空気に触れた瞬間や、見えるものが見えなくなっていくような感覚……。生まれ育った京都の記憶と重なったことから、故郷に戻り、家業を継ぎました」

──「Eagle and Raven」シリーズもまたアイスランドが舞台。8年間かけて双子の成長を追った作品ですね。

「帰国の3年後に父を亡くして、当主になったんです。写真と家業を半々でやっていましたが、どんどん意識が家業へと引き込まれていって。だけど、アイスランドで出会った双子だけは撮り続けようと決めていたんです。私自身も新しい人生の中で成長していく中、1年ごとに変わっていく彼女たちを追いかけたくて」

『Eagle and Raven』 ©︎ Ariko Inaoka
『Eagle and Raven』 ©︎ Ariko Inaoka

──なぜ双子だったのでしょうか。
「双子ってすごくシンボリックですよね。太陽と月、陰陽など二つで一つの存在。双子の中でもこの二人は特別で。彼女たちが11歳のときに『私たち同じ夢を見ることがあるんだよ』って教えてくれたんです。どんなに近い関係でも、なかなか同じ夢を見ることはないかもしれない。でも誰かと共有しているときって、どこか波動が共鳴し合っているんですよね。それは人だけでなく自然とも一緒だなと思って。日本のアニミズム的な考えにも通ずるように思います」

──京都での本展は、ご自身にとってどんなものになりそうですか。

「家業を継いで8年、京都に戻り10年です。10年たってようやく、写真家である私と家業を継いでいる私が本当に同じ気持ちで向き合えていると思います。この二つの世界にいる自分を楽しんでいる今、京都でできるのがすごくうれしいですね」

『SOL』 ©︎ Ariko Inaoka
『SOL』 ©︎ Ariko Inaoka

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2022
京都で開催される国際的な写真祭 「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2022」。国内外作家の貴重な写真作品や写真コレクションを京都市内各所の歴史的建造物や近現代建築の空間に展示。記念すべき第10回目のテーマは「ONE」。
会期/2022年4月9日(土)〜5月8日(日)
場所/京都市内11ヵ所 
「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」supported by KERING’S WOMEN IN MOTION
会場/HOSOO GALLERY
www.kyotographie.jp

特集「女性写真家のまなざしと、その先にあるもの」

Interview & Text : Akane Naniwa Edit : Michie Mito

Profile

稲岡亜里子Ariko Inaoka 京都府生まれ。写真家、本家尾張屋16代当主。17歳で渡米、高校時代に写真と出合い、パーソンズ美術大学の写真科卒業後、ニューヨークをベースに写真家として活動を始める。2001年のアメリカ同時多発テロ事件を体験。翌年に訪れたアイスランドの水の風景に魅せられ、作品制作のため通い始める。5年にわたり撮りためた初の写真集『SOL』(赤々舎)を発表(08年)。09年にアイスランドで出会った双子の姉妹を8年に渡り撮り続け、20年に2冊目となる写真集『Eagle and Raven』(赤々舎)を発表。14年に創業550年を超える家業を継ぎ、本家尾張屋16代目当主と写真家と二つの顔を持ちながら活動を続けている。

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July / August 2022 N°158

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